ルアナ王国へ②
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宿場町は割と大きな町で活気に満ちていた。馬車は町の中でも一番大きな宿の前で停まった。
「今日はここで泊まる予定です。3階のフロアがリビングと会議室を挟んで4部屋ベッドルームがあってそこを借りています」
「すごい……。立派な宿ですね、本当に私も一緒に泊めていただいていいんですか?」
モーガン様は軽々とフェニックスの像を抱えながらお部屋に案内してくれる。
「もちろん。フロアまるごと借りてますから、二人で使うも三人で使うも同じです。もともとここはバーンズ公爵家の分家が経営していますので定宿の一つなんです」
モーガン様と話しているうちに3階のフロアに着いた。
「こちらを使ってください」
「ありがとうございます」
「それと夕食の準備に女性のスタッフが参りますのでお召し変えをお願いします」
ん? 夕食に衣装チェンジ? なんで?
でも……。泊めていただくんだもの、公爵家のルールに従いましょう。
「はい。わかりました」
「では後程」
✿ ✿ ✿
イオ 視点
あの時、モーガンは馬車を走らせ逃げるのに必死、俺はフェニックスが壊れないように守るのに必死。
必要にしつこく追いかけてくるグリズリーに、フェニックスをあきらめようかと考えた瞬間。俺の目の前に天使が舞い降りた。
天使は、銀色にきらめき羽先がほのかにピンク色の羽を羽ばたかせ、光の加減で少し赤紫に変わるふわふわした髪が揺れて美しかった。
そして天使の背中には小さなドラゴンが張り付いていた。
大きなグリズリーをあっという間に竜巻で巻き上げ森の奥まで飛ばし、平然とした様子で振り返った天使は、薄紫の大きな瞳できょろきょろ周囲を見回しほほ笑んだ。
屈託のない笑顔に俺は目を奪われた。
= 天使が舞い降りし時、望外なる幸運がもたらされる =
俺は直ぐに初代バーンズ公爵家当主のフェニックス像に刻まれた言葉を思い出した。
リノアはその天使に違いない。
コンコン。
「イオ様、失礼します。リノア嬢は今お部屋で夕食の支度をしています」
「モーガン、リノアをどう思う?」
「伯爵令嬢としては自由奔放にお育ちの様ですが……。稀代の才能とあたたかな心をお持ちかと」
「初代がフェニックスに刻んだ言葉を知っているか?」
「もちろん知っています」
「俺は、リノアがその天使だと思う。是非バーンズ公爵家に迎えたい」
「ほう。いままであれほど婚約者を決める事を拒んでいたのに、これはバーンズ公爵様がお喜びになりますね」
「…………。」
「あと15分ほどで夕食の準備が整いますので、リノア様をエスコートしてくださいね」
モーガンは意味ありげな笑顔を残して部屋を出て行った。
言われなくても頑張る。
✿ ✿ ✿
コンコン。
リノアの部屋のドアをノックすると、従業員の女性がドアを開ける。
「ご指示のドレスにお着替えが済んでおります」
「ああ。ありがとう」
部屋の奥に目線を映すと少し肩が露出した紺色のマーメードドレスを着て、優美に整えられ恥ずかしそうに顔を赤らめるリノアの姿があった。
「リノア、凛としたドレスの君も素敵だね」
俺が手を差し出すと、リノアはさらに頬を染めてエスコートに応える。
「こんな大人びたドレス、初めてで……。」
上目使いが可愛すぎる。
「そうだリノア、年はいくつ?」
「17歳です」
「ん!まだ学生なの?今はお休みの期間?」
学院は卒業している年だと勝手に思っていた。
「少し前に、飛び級で卒業しました」
「飛び級?リノア凄いね。コアナ王国も18歳の年が卒業だろ?」
「はい。でも魔道具作りに比べたら簡単ですよ」
テラスに着いて、準備された席を引いてリノアを座らせる。
思った以上にリノアは優秀なんだな。
「わあ。ここで夕食なんですね。お庭も綺麗」
だがこの笑顔を見れは、17歳も納得だ。
「庭が見える様に準備してもらったんだ。リノアは食べられないものある?」
「辛いのは少し苦手ですけど、食べられないものはありません」
俺もリノアの隣に座り、おしゃべりしながら食事を楽しんだ。
食事のマナーも立ち振る舞いもリノアの所作は完璧だった。
「ねえリノア、背中の靄が見えなくなったけどお部屋かな?」
気配はするが姿が見えなくなった。
リノアは後ろを振り返り、手を伸ばす。
気配が膝の上に移動した。
「見えなくなりましたか?やったねアルト♪」
ドラゴンが、調整したのか……。凄いな。
そしてリノアには見えている?やはりリノアはドラゴン 憑きか……。
俺の天使様はすごすぎるな~。
リノアを振り向かせるにはどうしたらいいんだ!
ついにルアナ王国へ入ります。




