南へ
読んでいただきありがとうございます。
「あー。つまらないよ~アルト~」
話し合いから数日。
初めのうちは魔道具作りに没頭していたが、相談できる相手も話し相手もいない……。
「んーーーーーーー。そうだ!こっそり旅に出ようかアルト♪
手紙書いておけばいいよね~、そうと決まれば準備、準備」
私は倉庫から、数日暮らせる食料と寝袋などなど思いつく限りポシェットに詰め込んで、リックサックを背負うと羽を広げ空に飛び出した。
「やーこれが完成していて本当に良かったね~」
「クワ-」
アルトは私の背中に掴まりご機嫌だ。
「初めての遠出はね、南に行くって決めてたの。
ルアナっていう大きな国があるのよ~。どんな街かな、楽しみだね♪他の国にはどんな魔道具があるんだろう」
「クワ-」
私とアルトは柔らかな青空をどんどん進んでいく。
ルアナ王国にはこの川をたどればつけるはず。
目下には大きな川が流れていて、川の右側には国と国を繋ぐ街道があり商人や旅の人が行きかうのが小さく見える。
「空で行けば今日中にはルアナ王国に着くかしら。」
少し進むと山に向かう道と川沿いの道に街道が分岐している。
「んー。川沿いの道でいいのよね~」
分岐する道の上空で、両方の道を見比べる。
山側の道に眼を向けると遠くに商馬車が大きなグリズリーに追いかけられているのが見えた。
「わあ大変!何か攻撃魔法! それより私の特異な風魔法!」
急いで馬車に近づき、グリズリーに向けて風魔法を放つ。
風で竜巻を作りグリズリーを空に巻き上げる。
そのまま竜巻を飛ばし、グリズリーを森の奥に連れて行った。
周りを見回しても誰も倒れていないし、商馬車は少し先に止まっていて壊れてもいなさそう。
「あービックリしたね。アルト♪
凄い大きなグリズリーだったよ。でも誰も怪我してなさそうだし、先を急ごうか」
背中の羽を動かし、空に舞い上がろうとした瞬間に手を掴まれた。
「待ってくれ天使!」
「やややや。離してください。天使じゃないんで!」
手を振り払おうとぶんぶん上下に動かすが、青年は手を離してくれない。
私は手を払いのけるのをあきらめ、青年の顔をまじまじと見つめる。
綺麗な黒髪を後ろで三つ編みにし、商馬車に乗っていたけど…貴族なのかしら質の良いシルクでできた見慣れない服を着ている。碧眼の瞳は吸い込まれそうな……深い青……。
「おい。近いぞ」
「クワー」
2人の声にハッ!と気がつくと、彼の瞳を覗くために自分で顔を近づけていた!
「わあ!すみません」
2人とも顔が真っ赤だ。
「イオ様。淑女の手をむやみに掴んではいけません」
騎士の様な方が近づいてきて彼に話しかける。
「す すまない」
慌ててイオと呼ばれた青年が手を放す。
「主人が失礼しました。
さらに先ほどはグリズリーから助けていただきありがとうございます。大事な品物を運んでいたため、荷を守る事に注力し、なかなか反撃ができないでいました」
「お二人であの大きな商馬車を?」
「はい。急ぎの大事な荷物でして」
「荷物も人も被害がなくてよかったです。
じゃあ。私はこれで失礼しますね」
「だから待ってくれ天使」
また手を掴まれる。(注意されたばかりでしょ!)ぎっと睨むと青年は微笑んで紳士の礼をした。
「度重なる失礼を。
私は ルアナ王国 バーンズ公爵家が長子、イオと申します」
!!!
公爵様だった!
「私は、 バーンズ公爵家に仕えております。ブロスト伯爵家のモーガンと申します」
続けて騎士様が礼をとる。こちらは伯爵様!
2人とも洗練された優雅な立ち振る舞いなわけだ。
慌てて私もワンピースの裾を少しつまんで挨拶をする。
「コアナ王国、エバンズ伯爵が娘 リノアと申します」
「コアナ国の伯爵令嬢でいらっしゃいましたか!どうしてこのような所に?」
モーガン様が穏やかにほほ笑みながら話しかけてくる。
「あの。 ちょっと数日旅に出たくなりまして」
気軽に出てきた行動がいまさらなんともおはずかしい……。
「従者は?もしかして一人?どこに行くつもり?そんな軽装で?」
ぐいっと割り込んできたイオ様が、つぎつぎ質問を繰り出す。
私があわあわしていると、モーガン様が助けてくれた。
「イオ様、そんなに立て続けに質問しても答えれれるわけがありません」
「そうかすまない。急ぎの旅じゃなくて目的地も決まっていないなら俺たちとルアナ王国に来ないか、ちょうどイルーゾ王国から荷を積んで戻るところだったんだ。まあ近道に森を抜けたせいでグリズリーに追い回されることになったんだが……。」
「……」
「いやこれからはちゃんとした街道を行くから大丈夫」
「エバンズ伯爵令嬢さえよろしければ是非。先ほど助けていただいたお礼もさせていただきたいですし」
「これから暗くなるし、令嬢一人じゃ危ないだろ?」
「……」
んー。公爵令息と伯爵様だもの大丈夫よね。アルトもいるし♪
私は一緒に旅をすることに決めた。
「私の目的地はルアナ王国です。特にどこに行くかは決めていませんでしたが始めていくので、いろいろ教えていただけると嬉しいです」
「そうなんだ。ねえ、リノアって呼んでもいい。俺の事はイオでいいから」
「ややや。公爵令息を呼び捨てになんて……。無理です」
「じゃあ家名はダメだけど、好きに呼んで」
こうして私は、三人と一頭で旅をすることになった。
(#^^#)




