ドラゴン 憑き
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伯爵家の明かりを見て私はみんなを驚かせないように、ドラゴンと自分に周りから認識されない魔法をかけてとりあえず裏庭の作業場に降りる。
この魔法は魔力の消費量が多く使える者も少ない。
魔力量の多い私でも30分くらいしか維持することが出来ない。
「早くドラゴンにお見上げを持たせて返してあげなきゃ!」
2人に待ってくれるように話して作業場の貯蔵庫の食料全部を布に包み、大きなドラゴンの背中に乗せ首を撫でる。
「送ってくれてありがとう、みんなと食べてね」
「クワ-」
小さな声で返事をするとドラゴンは空高く飛んでいく、同時に私の魔法も解けてみんなに姿が見える様になった。
「リノア!」
「はい。お父様心配をおかけしてすみません」
私は父に勢いよく頭を下げる。
「お嬢様。怪我はありませんか?」
「やんちゃにもほどがあるぞ、リノア。みんながどれほど心配したか空にとびたったまま帰らないなんて、伯爵令嬢のする事じゃないぞ」
お父様の隣にいた、ノア兄さまとミラが同時に話しかけてくる。
「ごめんなさい」
おずおずと顔を上げるとお父様はなぜか私の後ろを見ている。
「ノア、リノアの後ろに何か見えるか?」
「はい父上、見えませんが気配は感じます」
「ミラは?」
「何も見えませんし、なにも感じません」
「そうか……。」
「ミラ、リノアが無事に戻ったのでみんなに休むように伝えてくれ、皆が休んだところで私の執務室にテオを連れてきてくれないか」
「はい。畏まりました」
ミアが急いで本邸に駆け込んでいく。
「さて、リノアと別の大きな気配がするから来てみれば……。リノアお前はどこまで自由で規格外なんだ。二人とも私の執務室に来なさい」
お父様は大きなため息をついた。
あら?お父様怒らないのかしら?
お兄様の後に続いてお父様についていく。
執務室に入るとソファーに座り父と向かい合う。父は眼の奥を覗き込むように私を見つめ聞いてきた。
「ドラゴンはなぜ、お前の後ろについている?」
「はい?」
慌てて後ろを振り向くと、小さなドラゴンが羽をパタパタさせながら浮いている。なんだかドラゴンの体がさっきとは違い透けて見えるけど……。
私は慌てて手を伸ばしドラゴンを抱っこした。
「あらあなた。どうしてまだここにいるの?」
「クワ-」
甘える様にドラゴンが鳴く。
「はあ~。お前は王宮に囲われたいのか?」
「はあ?お父様。何言ってるの私がそんなこと望むわけないでしょ!どっちかって言ったらお断り!」
「はあ~。そうだろうな」
「あの父上、ドラゴンとは?私は何かの気配がリノアの膝の上にあるのは感じますが姿は見えません」
ノア兄さまが私の膝を見つめながら隣に座る。
ドラゴンが大きな目をパチパチさせて、膝の上でくるんと一回転するとドラゴゴンの透けていた体が元に戻り、ノア兄さまの眼にも見える様になったみたいだ。
「うわーーー。」
ノア兄さまが慌てて自分の口をふさぐ。
「ノア。防音結界を張ってあるから大丈夫だ」
「父上、ドラゴンが見えていたのですか?」
「強い魔力量がないと見えないようだな」
お父様とノア兄さまが話している間、ドラゴンは私の手に甘える様に顔を摺り寄せる。
ん~。かわいい。
「名前はあるのかな?ないならアルトなんてどうかしら?」
「クワ-」
さっきより大きな声でドラゴンが返事をする。
「気に入ったの~。じゃあ今日からあなたはアルトね~」
「リノア!」
お父様の大きな声に驚いて私とアルトはお父様の方を向く。
「名前まで付けたらお前は完全にドラゴン憑きが確定だ」
「ドラゴン憑き?父上、ドラゴン憑きになるとどうなるんですか?」
「近隣諸国には、ドラゴン、ユニコーン、フェニックス、グリフィンの四神獣がいる。基本的に神獣は人間と関わろうとはしないが、まれに絆を結びその人間に力を貸すことがある。それを神獣 憑きと言う。
今回はドラゴンがリノアに憑き、リノアはそれを許し名前を与えた……。
まあうまく使うなら、リノアのドラゴン憑きを王宮に申し出て売り飛ばし、伯爵家が王宮から様々な便宜を図ってもらうこともできる。」
「父上!」
「ノア、カリカリするな。だから最初にリノアに確認しただろ。王宮に囲われたいかと……。ドラゴンを含め、神獣の力は未知数だ。リノアはその力を貸して貰える存在になったんだぞ」
「うちの役に立つことはしたいけど。王宮に閉じ込められるのは嫌」
「王子様と結婚できるかもしれないぞ!」
お父様がからかう様に笑う。
「んー。王子様なんていらない、私はいろんな魔道具を作りたいし見てみたい」
私が宣言すると、お父様は大きくパチンと手を叩いた。
「じゃあ。決まりだな、リノアもう学校の単位は全部クリアしたんだろ?」
「はい」
「リノアは凄いな、あと1年半も残してすべてクリアしたのか?」
「うん。ノア兄さま、魔道具の複雑さに比べたら学院の勉強なんて簡単よ、今も魔道具のことを教えてほしくてロン教授に会いに行ってるだけだもの」
「じゃあ明日から学院に行くのは禁止だ」
「えーお父様なんで?」
「魔力が強い者にはドラゴンが姿を隠しても見えるし、ある一定量以上の魔力があればノアの様に気配は感じる。
リノアは今学院に第二王子が居ることを知らないのか?」
「そうなんだ……。」
「本当に王子に興味がないのだな……。我が妹ながら……。」
そういってノア兄さまは頭を抱えた。
「リノア、学校の手続きはこちらで進める、これからどうしていくのがリノアの幸せか落ち着いた所でまた考えよう。少しの間は作業場で魔道具作りに専念していなさい」
その後、侍女のミラと従者のテオが呼ばれ、ひとまずはこの5人でドラゴンの秘密を厳守することになり。改めてみんなに、ドラゴンに出会って伯爵家に戻るまでの経緯を話すと、お父様とノア兄さまに大きなため息をつかれた。
「あの奥様にはお話しされないのでしょうか?」
ミラが尋ねる。
「話したら、リノアは第二王子の婚約者にされるだろうな~」
「お父様お願い!王子様は勘弁して!」
お父様をじっと見つめると、大きくて暖かな手が私の頭をガシガシと撫でる。
「一緒にリノアが過ごしやすい道を探そう」
こうして私の学院生活は終了し、魔道具を思う存分作ることが出来る時間を手に入れた。
なかなかタイトルのトリップ(小旅行)に行かなくてすみません。
次回からお出かけします。




