リノア ドラゴンと出会う②
読んでいただきありがとうございます。
「キャーーーーーー。」
叫んでもその声は、空に吸い込まれていくだけ。
ああ。ポシェットに何か入っていたっけ?攻撃?逃げる?この状況を打破できるものはあったかな~。
ごそごそとポシェットを探すが良いものが見つからない。
そんなことをしている間に私を掴んだドラゴンは、山の中腹にある洞窟に入ってしまう。
洞窟の中はとても広く、3頭の大きなドラゴンと2頭の小さなドラゴンが水場のそばでくつろいでいた。
私は小さなドラゴンのいる場所に降ろされる。
あぁ~子供たちの餌なのですね……私。
お父様、お母様。言いつけを守らなくてごめんなさい。
マエルもいつも助けてもらってばかりで、お返しもできなくてごめんなさい。
ミラもテオもわがまま言ってごめんなさい。
あぁ~。あとあと。
食べられて死ぬなんて思ってもいませんでした~。
ぎゅっと強く目をつむり食べられるのを待っていると、頭にごしごしと何かが押し付けられる。
おそるおそる眼を開けると。
小さいと言っても私より一回り大きなドラゴンが、私の頭に顔をこすりつけていた。
大きなドラゴンより眼がクリクリしててかわいい。
銀色の胴体にお腹は水色、羽の先はオレンジ色できれい。
小さなドラゴンと見つめ合う。
「こ。こんにちは。 私……。リノアです。
よろしくお願いします」
「クゥワー」
可愛い声。
これは。もしかして私は餌ではない?
食べ物ではなく、おもちゃかしら?
小さなドラゴンを撫でたくなってしまい、手を伸ばすとドラゴンは自分から手に頭を擦り付けて来た。
なでなで。なでなで。
少しひんやりしていて、すべすべで気持ちいい。
「お名前はあるのかしら?」
なでなでを続けているともう一頭の小さなドラゴンもやってきて頭をゴリゴリ私に押し当てる。
「あら。なでてもいいの?」
もう一頭も、なでなで。なでなで。
ん~。かわいい。
「クワーーーー。」
ひと際大きな声で、私を連れて来たドラゴンが鳴いて洞窟の空気が震えた。
驚いて見上げると、ドラゴンは水場の方に眼を向ける。
目線の先を追うと、一匹だけ立ち上がれないドラゴンがいる事に気がついて急いで駆け寄る。
近づくと後ろ足の裏に尖った石が刺さって血が流れている。
「痛いね……。
私ね。怪我の手当をする消毒や薬を持ってるから、少し触ってもいい?」
ポシェットを握りしめ、傷ついたドラゴンと眼を合わせる。
「クワ-」
傷があるドラゴンが小さく鳴いた。
「いいのね。痛いけど我慢してね」
私は傷ついたドラゴンの首を少し撫でてから、足に刺さった石に手をかけ一気に引きぬいた。
「クワ-」
くぐもったドラゴンの声が響く。
持っていたタオルで傷を抑え、止血してから水で傷を洗い。
消毒して傷薬を塗りきれいなタオルで傷を覆い、髪を結んでいたリボンでタオルを固定。
手当の間ドラゴンは、時々低く鳴いたが、動くことなく手当を受け入れてくれた。
「できた…。」
ドラゴンの首を撫でてから、私はガサガサとポシェットを探り、小瓶を取り出した。
「ドラゴンにも効くかしら?大きな体には少ないかもしれないけど…。」
「そうだ強化すれば!」
私は消炎鎮痛の効果がある薬草を煎じた薬の入った小瓶に手をかざし、効能を強化する魔法をかける。
「苦いけど飲んでくれる?早く傷が治ると思うの」
金色に輝く瞳を覗き込み、小瓶を差し出すとドラゴンは少し口を開けてくれた。
薬を流し込むとごくりと喉が動いた。
「良かった~。早く良くなるといいね」
私に治癒能力があればよかったのにな、国の中には治癒能力が使える者は少ない。
「ハァ! 今はいったい何時だろう?」
洞窟の中は壁が白く発光していてずっと明るくて気にならなかったけど……。
夕方出かけて来たんだもの外はもう真っ暗よね。それにみんな心配してるよね。
私がシュンと元気がなくなると、小さなドラゴン達がぴたりと私に張り付いてきた。
「ありがと。慰めてくれてるの?
でも、もう遅いから私もお家に帰らなきゃ。」
二頭の首元を撫でてから私は立ち上がる。
「そうだ!
みんなは何を食べるのかな?何でも食べれる?
今日は、ちょこっと散歩するだけのつもりだったから沢山は無いけど」
何でも入るポシェットは魔道具で、収納力は抜群なうえに生ものも冷やして保存できる。
「干し肉と果物くらいはあったはず」
ポシェットの中の食べ物全部を取り出した。
出してみたら干し肉は少しだけど、果物は山盛りになった。
「みんなで食べてね。また怪我の様子も気になるからここに来てもいいかしら?」
私を連れて来たドラゴンの方を見て聞いてみる。
「クワー」
やさしい鳴き声で返事があった。
「いいのね。ありがとまた来るね」
出口に向かおうとすると大きなドラゴンが、私の前に出て首を下げる。
「乗っていいの?」
「クワー」
「わぁ。ありがとう」
背中に乗ると凄く高い。
最初になでなでさせてくれたドラゴンが、私の横でポンと一回転すると肩に乗れるくらいのサイズに小さくなった。
「かわいい~」
両手を差し出すと腕の中にすっぽり収まる。
「もしや!一緒に来てくれるの?」
「クゥワー」
返事と共に私を乗せたドラゴンは、洞窟から夜の空へと飛び出す。
「わー。今日は星がきれいね~」
満点の星空の海を泳ぐように飛んで、楽しい空の旅はアッと言う間に終わってしまい、私を探すため夜中でも煌々と明かりが灯る伯爵家に到着した。
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