04話 相伝とは?
「そうでん」ってなんだ?私にはただのほくろのように見えるが・・・・・・!?
その瞬間私は背筋が凍った。ずっとほくろがあったはずの場所からツタのような紋様が少し、でも濃くはっきりと紋様が表れていたのだ。
「君のその紋様はこれまでに例がないほど濃い。時間が経てばその紋様は成長し、あとはそれがどんな形を成すかだな・・・。」
「そうでん」の意味すら私は分かってないのに先生は黙々と話し続ける。話についていけないので聞いた。
「あの、そうでんってなんなんですか?」
そう聞いたら、先生は1人だけで話に走りすぎてたことに気がついたようで、すまんすまんというような顔でこう答えた。
「相伝と書いて、そうでんと読むんじゃ。原因がまだあまり分かってない超常現象でね・・・」
「この紋様と何が関係あるんですか?」
「あるアメリカの有名な精神科医がいてね。その人の研究チームの説が今一番有力なのじゃが、紋様が出たものには様々な超能力が付与されるらしい。この紋様は人それぞれでね、基本はもっと色が薄いんじゃ。君は濃すぎる。」
「そうなんですか。あと、なんで私には紋様が出たんですか?」
私にはこれが疑問でしかならなかった。今まで会ってきた人でそんな紋様が出た人なんか見たことなかったから。
「相伝とはね、その名の通り先祖からくるものなんじゃ。現在の研究で分かってることは、没後100年以上の者が人生でやり残した事や、後悔や、夢だった事を現代人に託すということじゃ。ただ、縛りというものも存在し、その夢とやらを付与者は被付与者に伝えることができない。まあ、だから付与者は期待できそうな現代人を自ら探し出し、その現代人(被付与者)にスキルとして自分の培った力を渡すわけじゃ。ただ、その縛りと、あの世からこの世に付与する際に多少変形してしまうため、超能力のようになってしまうんじゃ。」
「具体例とかありますか?」
「うーん。噂には聞いたことがあるが、コロンブスの相伝を持った者がヨーロッパで発見されたとか。偉人の相伝は強いスキルをもたらすことが多く、そのコロンブスの相伝を持ったものはある日突然、ベテラン顔負けの航海術を手に入れたらしい。」
相伝ってかなりレアなんだな。しかもスキルとか言われると、なんかワクワクしてくる。
「ただし!!」
「!?」
ビックリした。なんかこのおじいさん強弱激しすぎる。先生は話を続ける。
「相伝は政府の最重要機密じゃ。さっきも言ったが、特に偉人の相伝から来るスキルは想像以上の力を持っている。コロンブスを例に挙げたが、戦闘系の相伝だって存在する。もうお分かりいただけたじゃろう。そう!この長期戦争を終わらせるための鍵となるのがこの相伝なんじゃよ。相伝は軍の兵器として使われる。相伝のことを知っているのは相伝を持っている本人か政府関係者だけなのじゃ。」
「え・・・、でも先生知ってるじゃないですか、相伝のこと。」
すぐに思い浮かんだ疑問がこれだった。だって先生、どこからどう見ても相伝持ってないじゃん。
「いいところ聞いてくれたねー。私がただの医者に見えたかい!、なら嬉しいな。そう、私も政府関係者じゃ。もちろん、この病院の職員全員もね。」
「なるほど・・・。え、でも・・・。」
顔が青ざめて、鳥肌が止まらない。今まで気がつかなかった。
「そう!私も相伝持ってるよ!微量だけど・・・。」
えへへっと言う感じで母はこちらを見てくる。いや、えへへっじゃないんですけど。こんな恐ろしい環境で暮らしてたの!?もう、熱とか感じられない状況になってしまった。
「私の相伝は、多分どこかの占い師か預言者みたいな人のものでね、未来をちょっとだけ覗くことができるんだ。
でも、みんなが思ってるほど便利じゃないよ〜。1回に消費するエネルギーはほぼ100%だし、覗けても視界の悪い状態でほんの数秒未来が見えるくらい。まあ、これのおかげであの夜は救われたんだけどね。相伝は使いこなせるかどうかだからね〜、お母さん全然努力してないのバレちゃった。」
あの夜とは、東軍による奇襲の時の事だろう。今この話を聞くと、全て辻褄が合う気がする。母は手の甲を指さして、ここだよ、と相伝を見せてくれる。やはり小さいし、薄い気がする。
「お母さんの言う通り、相伝は使いこなせるかどうかで強さが天地ほど差が出る。そこで、相伝を専門的に学べる学校制度があってね。学校制度とはいえ、相伝を持った子供は少ないから小学校と中学校と高校の12年間で1つの学校になっているんじゃがな。」
「学校。あと2年後の未来・・・。」
そういえば学校また行かなければならないんだった。転生しちゃったからね。
おじいさん先生がまた私に問いかける。
「君にはここから2つの選択肢を選べる。そう、学校じゃ。1つは政府公認の学校でね、卒業後はそのまま軍の相伝特別部隊に入ることが多い。もう1つはその反対。政府非公認の学校でね、政府と軍の崩壊を企む学校じゃ。今も政府から逃げながら動いている。君はどっちに入りたい?今答えを聞きたいところじゃが、熱も出てるしそろそろ薬を出してこの話も終わりにするか。その紋様は日が経つにつれてだんだんと変化するはずじゃ。詳しいことは学校に入ってから聞いても遅くない。あっ、そうじゃ!その2つの学校のパンフレットをそれぞれあげるわ。私は政府側の者じゃが君は君の正しい道を進むべきだと思う。よーく考えて進路を決めるのじゃぞ!」
(この人意外といい人だ。」
パンフレットをもらいながらそう思う。
「ま、まあ、わしは政府の方を薦めるんじゃがな!」
(いや、そうでもないな)
この先生結構面白いな。いいことも教えてくれたし。
「ありがとうございました〜。」
お礼を言って診察室を後にする。またおいでね〜って声が聞こえたが、聞こえてないふりしておいた。
併設された薬局で薬をもらい車で家まで帰る。休日って車が多いんだよなあ。家がもう見えてるのにここから20分くらいかかりそうだ。効率の悪い道路・・・。
交通の予算は少ない。そう、それが政府だ。全ては軍事費用に持ってかれる。昔はこんなことがなかったらしいのに・・・。
私は暇つぶしに先ほどもらったパンフレット2枚に目を通す。もう心は決まった。
「私こっちに行きたい!」
信号待ちしている母に片方のパンフレットを見せる。そこには政府非公認の文字。母は少し驚いた後に、
「いいじゃない!」
この一言だけだった。
瞬間移動できる相伝が欲しいです。