寝床
少しだけ休もう。休むといっても目を軽く癒すだけ。のハズだった。ほんの五分から数十分。
ところが。思っていた以上に、自分の目だけじゃない、全てが休みを求めていた。
気付かないうちに。おかしいな。規則正しい決まった生き方から、調整しやすい、自己責任数十倍の暮らしになって、早三年以上経つというのに。それなりに管理して、バランスを保っていた自覚もあった。これか。
これが以前、勤め人だった頃、あの人、上司Xが言っていたのは。知り合いではないけれど、名前だけはメールの宛先に入っていて実はずっとオフィスに顔を出しておらず、本当に実在かとも言われていた。一部の者しか把握していない、極秘の取り扱いとも噂されていた。
事実を知ったのは、ある日の午後。私が一人で受付に居た日。手土産を持って、その人は私のところ、私を通して、私の上司に挨拶に来た。礼儀正しい、真っ直ぐな印象。
奥の、上司の部屋から、何とも穏やかで良好な上下関係の会話が聴こえた。どうやら上司がその人の処遇を守っていたようで、その人は何度もお礼を言っていた。一時は入院する程、深刻な時期もありそれでも自宅やオフィスのどこかの別室に出勤し、最終的には何の問題もなく、来月の中旬にウチの部署から異動することが決定されていた。
その人が退室した後、上司が私に、本当なら絶対に私にすら話さなかったであろう、ある事実を言った。
過労。真摯なあまり、皆が気付かぬ間に一人、何百倍もの仕事を抱え、資料室で倒れていたところを、私の上司が発見。そこからの付き合い。
やりかけの書類を整理して、戻り横になり目を閉じた。あの人も休めているかな。