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~女将校達ノ日本帝國ヨ、永遠ナレ~  作者: 秋津神州
序章:日本帝國へ来ル
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四話:理解(後篇)


 「こうするだけで写真が取れるんですよ」


 さっそく、彼女に今撮った写真を見せる。すると


 「い、今撮った写真がフィルムの現像無しにそのまま映し出されているだと!?」


 驚きを隠せないようだ。まさに信じられないと言った様子である。


 「私にも使わせてもらえないだろうか?」


 驚愕と同時に恐れもせず、目の前の機械に興奮を隠せないでいた。さすがはエリート将校と言ったところか、新しい物にも臆せず情報を吸収しようというところが優秀な所以なのだろう。


 「いいですよ」


 私は一つ返事で了承した。さっそく彼女に使い方を説明していく。怪我で自由に動けない自分に代わって前のめりに、熱心に耳を傾ける。


 「この赤いボタンを押すだけです。それだけで取れます」


 「そんなに簡単なのか?」


 「はい、これがカメラのレンズになっているのでこれを撮りたい方向に向けて画面により確認します。親指と人差し指で広げるように画面を触れば拡大できますし、縮めるようにすれば縮小できます」


 つたない指の動きで画面をそうさしている。人間、びっくりするほど新しい物を見ると声が出なくなるのか・・・。


 「ちなみにそこのビデオを押すと映像が取れますよ」


 「しゃ、写真を撮る写真機なのに撮影機のような使い方もできるのか? これもフィルム無しに・・・」


 「まあ、写真や映像を撮るためだけの機械じゃないんですけど・・・それは後で説明しましょう。とりあえず今は映像を撮れる設定なのでやってみましょうか」


 「ああ・・・わかった」


 ピコンという音と共に録画が開始される。30秒ほど続けて再度赤いボタンを押すように指示し、録画が終わった。短い動画だが、彼女にとっては初めての経験だ。当然興奮を隠せよう筈がない。動画を再生し、約90年後の高度技術に触れ終わると


 「凄い!これが未来の技術!これを軍事転用できれば・・・あっ」


 年甲斐もなくはしゃいでいた彼女はそれに気付くと少し赤面して「ごほん」と咳払いし、場を凌いだ。しばらくスマホを見つめていると意を決したように目を合わせてくる。


 「本当に未来から来た人間なのか?」


 「最低でもそうだと思います。信じてくれるのですか?」


 「これだけの物を見せられれば信じるほかあるまい。今の世界中の技術を結集してもこの機械の複製は不可能だろう。しかし、ではなぜ陸軍省に飛び込んでくるような形で入ってきたんだ? 問題の中核部分は解決していないぞ」


 「私にもよくわかりません。登山中に転落して気付けばそこにいましたので」


 「それで偶然私を暗殺しようとした相沢に体当たりして命を救われたということか・・・なんともまあ信じがたい真実だな」


 「ごもっともです・・・」


 頭を抱えて溜め息を吐く。通常なら到底信じることが出来ない事象が今、目の前に証拠と共にある。頭を抱えたくなるのは仕方のない事だ。しかし、問題は他にもある。


 「話はまだ終わってないぞ、未来から来たという前に異世界から来たと言っていたな。それはどういうことだ?」


 「これは私の憶測というか仮説にすぎないのですが、私のいた世界とは男女の性別が逆になっているのではないかと思うのです」


 「男女が入れ替わる? ということは私はそちらの世界では男だと?」


 「その通りです、私が陸軍省に現れたあの日は8月12日ですよね?」


 「ああ、その通りだ」


 「で、貴方を相沢という女性が切り付けてきて斬殺しようとしたと」


 「間違っていないな、それで相違ない」


 「なら間違いありません、貴方はこちらの世界では男性で永田鉄山という人です」


 「そんな馬鹿な話が・・・いや、君がここにいること自体本来はあり得ないことだ。今更なにも驚くことはないか・・・」


 半ば諦めのようなものが彼女の中にはあった。非現実的な事実をたった1時間足らずで認めざるを得なくなり、エリート将校たる彼女でさえ混乱を隠せないでいる。彼女側も一日整理する時間が必要だった。


 「今日はここまでにしては如何でしょうか。永田中将殿も一旦情報をまとめる時間が必要でしょうし、夜も深くなってきました。続きは明日以降がよろしいかと思います」


 「そうだな、それが良いと私も思う。では、明日また仕事終わりに寄らせてもらう、その時に再度話を聞かせてくれ」


 「了解しました。お待ちしております」


 昨日とは違い、重い足取りで病室を後にする。部屋に取り残された自分は緊張が一気に解けて眠気が急速に迫ってきた。とりあえず命が助かったことだけはよかったがこの先が不透明なのは変わらず終い。不安に胸が締め付けられるのをごまかす為に今は寝ることにする。


 「どうなっちゃうのかなぁ・・・」


 重い瞼を閉じ、明日の自分を憂いながら眠りにつくのだった。

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