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~女将校達ノ日本帝國ヨ、永遠ナレ~  作者: 秋津神州
序章:日本帝國へ来ル
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一話:暗殺未遂

 

 ガッシャーン!!

 喧しい風切り音が消えたと同時に別の破壊音が耳に入った。体感では幾秒かの間が開き、目眩と共に全身に痛みが走る。ここで初めて理解する。ああ、階段から落ちたのだと。


 「貴様!何をするか!」


 女性の怒鳴り声が聞こえる。まさか落ちた先に人が居たのか?

 いや、そんなはずはない。石鎚山頂付近に人が住んでいるなど聞いたことがない。そう痛みでよく回らない頭で思考する。


 「がはぁ、はぁ・・・いててて」


 「邪魔だ!どけ!」


 最初は分からなかったが誰かの上に倒れ込んでいることに気が付く。歪む視界が次第に鮮明になる中、見たのは振り下ろさんと日本刀を持つ軍服のような物を着た女性の姿だった。


 「っ!?」


 命の危険を感じた私は咄嗟に刀を持つ手を掴む。見事に取っ組み合いになり、何が何だか分からないまましばらく乱闘が続く。命の危険を感じた人間の底力は凄いもので、今まで痛みに動かなかった体が嘘かのように機敏に動く。これまでの経験をフル活用して圧倒的武装の優位を持つ女性に対して立ち回った。鍛えられているのか女性にしてはかなり力が強い。


 「ちょっと落ち着いてください!ぶつかったのは悪かったですから落ち着いて!」

 「うるさい!邪魔ださっさと消えろ!」


 落ち着かせるように宥めるが聞き入れては貰えず、理由は分からないがかなり興奮している状態なようだ。


 タッタッタッタッタ!


 乱闘の取っ組み合いをしている最中に騒ぎを嗅ぎ付けたのか廊下を走る音がした。刹那―――


 「何事ですか!」


 声のした方を見るとドア越しに二人の同じような服を着た女性が見えた。いずれも軍服のようなものを着ている。


 「貴様、そこで何をしている!」「ご無事ですか!?中将殿!」


 状況を確認するや否や二人の女性は慌てて飛び掛かってくる。


 「えっ!俺ですか!?」


 どう見ても危険で暴れているのは刀を持った女性の筈なのに助けに来たと思った女性2人は何故か私を取り押さえてきた。これがまたびっくりするほど力が強く、三人が相手では敵いそうにない。


 「そっちじゃない、相沢の方を取り押さえろ!私に対する暗殺未遂だ!」

 「え、は、はいっ!」


 諦めかけたその時、自分の頭上方向から別の声が聞こえる。これもまた女性の声だった。この時、この部屋にまた別の人が居ることに気付く。

 刀女取り押さえた二人は部屋の中に居たもう一人の女性に敬礼してから、まだ暴れる彼女を連れて部屋を出て行った。取り残されたのは見るからに偉そうな女性と自分の二人。自然と目と目が合う。


 「何が何だか分からんが、とにかく礼を言う。ありがとう」


 「ああ、はい・・・」


 疲れ果てた私は空返事をして、壁を背もたれにしながら座り込んだ。もう何も力が残っていない、まさに満身創痍だ。


 「初対面で悪いが君に色々質問がある、なぜ君は――――」


 何か私に話しかけていたが、それを聞く余裕は残っておらず、次第に重くなる瞼に抗わずあっという間に意識を手放してしまった・・・。


 「(一体何がどうなっているんだ・・・)」


 意識を完全に手放す前、そう思考した。



 次に目が覚めた時、部屋のベッドに寝かされていた。おそらく病院の施設か何かだろうが次々に疑問が浮かんでくる。

 一つはこの部屋の様相だ。見ている限り病院なのは間違いないがあまりにも古臭く感じる。まるで昭和の時代劇に見るような間取りなのだ。エアコンは無いし、病室の明かりもLEDや蛍光灯ではなく白熱電球のそれだ。夜なので窓ガラスの質をはっきりとは確認できないものの明らかに現代の材質とは違うように見受けられる。

 もっと疑問なのは意識を失う前の出来事だ。階段から落ちた先に建物があって人が住んでいるなんて聞いたことがない。服装も変だった。あの時は考える余裕がなかったが、あれは確実に旧日本軍将校の服装に似ている。史実に女性の日本軍人将校などいなかったはずなのに確認できただけで4人もいた。明らかにおかしい。

 その部屋の様相も現代とはかなり違う。一見執務室っぽかったが覚えている限り視界の片隅で見たのは21世紀では似つかわしくない機械ばかりだった。人物含めて時代劇のようなセットだったとしても凝りすぎているし、刀を持っていた女性の迫真の表情は到底演技とは思えない。もし、本当に時代劇やドラマ撮影だったのならば自称旧日本軍研究者として完成品を見てみたいものだ。


 ガラガラ


 しばらく思考に浸っていると引き戸の音がして看護服のような物を着た男性が入ってくる。見た目は中年男性だがどこか違和感を感じる。おそらく服装からして病院の先生ではないだろう。


 「・・・」


 「えっ、ちょっと!」


 「すみません、あまり話すなと軍から通達が来ておりますので・・・」


目を覚ましているのを確認するや否や男は無言で立ち去ろうとする。引き留めようとし、軍の命令で話せないと言うが―――。


 「(軍?聞き間違いでなければ軍と言ったのか? しかし、今の日本に軍などいないはず・・・。 ますます意味が分からない)」

 

 「あなたに会いたがっている人が居ます。到着まで時間はかかると思いますが、それまでゆっくりしてください。無理をなさらないように」


 「ああ、はい・・・わかりました」


 男はそういうと足早に病室を後にした。

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