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~女将校達ノ日本帝國ヨ、永遠ナレ~  作者: 秋津神州
序章:日本帝國へ来ル
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一〇話:四者面談


 「あれ? 寝てますよ?」


 「あーー、すまんが秋月起きてくれ」


 永田と知らない女性の声で目が覚める。どうやらいつの間にか寝ていたようだ。無意識に背伸びをして時間を確認する。時刻は17時20分頃を指していた。


 「寝ているところ申し訳ない、また会いに来たぞ」


 「また会いに来た? いつ会ったんだ聞いてないぞ」


 「土曜日の朝に、永田殿を助けた礼を言いに来たのです。 その時に」


 「あらあら、東條ちゃんはまた早とちりしちゃって」


 「そういう真面目なところは良い所だが欠点でもあるぞ。 注意した方が良い」


 「はぁ・・・すみません」


 「東條ちゃん、勢いだけはあるから怖かったでしょう? 許してあげてね」


 「むぅ、すまない」


 「いえ、気にしてないので・・・」


 次に声を掛けてきたのは東條だった。あったことがあるのを聞いて二人とも驚いていたが東條なら仕方ないという雰囲気で軽い叱責はしたものの、すぐに和やかな状況になった。


 「ということは東條の紹介はしなくていいな、こっちの緩そうな女が岡村だ。よろしくしてやってくれ」


 「緩そうってどういう意味? 私が岡村寧子(おかむらやすこ)、階級は少将よ。これからよろしくね」


 「はい、よろしくお願いします」


 永田の弄りを程よくあしらって自己紹介をする。見るからに温厚そうな見た目で、好感を持てる人物だ。名前から推測するにこちらの世界における岡村寧次だと思う。陸軍士官学校一六期三羽烏の一人であり、永田の同期かつ東條の一つ上の存在だ。この世界では分からないが永田や小畑と共に東條の面倒をよく見ていた人物である。終戦時には国民党軍に対し穏便に降伏調印を済ませ帰国、その後は日本郷友連盟の会長を7年間務めたり、全国遺族等援護会顧問に着任するなど戦後日本の復興に寄与した人物である。


 「そういえば、例の物を回収していなかったな。ちゃんと持っているか?」


 「ああ、はい。これですよね」


 例の手紙を差し出すよう要求してくる。枕の下に隠していた封筒を手渡し、中身を確認し始めた。


 「うむ、問題ない」


 確認し終わると満足そうな表情になり、手紙の入った封筒を半分に折って胸ポケットにしまった。しばらくこちらの容態や近況の報告をして少々の雑談に興じていると


 「ん~~でも・・・」


 「しかし、本当なんですか? 未来の別世界から来たというのは・・・俄かに信じられないのですが」


 「疑うのは当然だ。私もあれを見るまでは信じられなかったからな」


 「あれって?」


 「丁度いい秋月、例の物を見せてやってほしい」


 「了解です」


 手紙で事前に説明しなければならないことは分かっていたので準備していたスマホを取り出す。今度はタブレットも含めて写真や動画以外にも、その編集やBluetooth機能を使ったデータの転送、Wi-Fi未接続状態でも出来るゲームを披露した。これらの機能に最初は疑念が晴れなかったが、自分で触って確認すると異様さに気付きそれぞれ反応を示していた。


 「わぁ・・・これは凄いわねぇ」


 「こ、これは僥倖ですぞ! このスマホとやらを軍事転用すればあらゆる作戦行動に生かせる! 偵察、通信、情報操作、いやそれだけではない! すべての科学技術において我が帝國は一歩世界に先んじて前進することができる!」

 

 「落ち着かんか東條、ことはそう単純ではないぞ」


 「そうも言ってられません。完全再現が叶わずともこの技術は「だから落ち着け東條」」


 「ぐっ・・・」


 「この異物は秋月が言っていることが事実なら一世紀ほど未来の技術だ。我々、世界の技術者を総動員したってこの主要技術の一部分すら模造することなどできんよ」


 「技術屋じゃないから詳しいことは分からないけど、今の科学力じゃあこれを作る基礎技術の基礎技術も出来上がってないでしょうしねぇ」


 「考えても見ろ東條。どうやって今の技術でフィルムも無しに映像を映し出し、情報の転送を行うんだ。ガラスのような板に触れただけで操作できる方法も不明。今の我々にはこれを作る概念すら欠けているんだ」


 「うぅ、すみません。興奮しすぎました」


 「気にすることは無い。私も最初にこれを見た時は年甲斐もなく高揚して模造できないかと考えたものだ」


 「あら、永田さんも?」


 「当然だ。こんな代物、量産して軍事に生かせるなら、これほど便利な物は無い」


 「しかし、残念です。せっかく目の前に何をしても手に入らないようなものがあるというのに、何もできないというのは・・・」


 「ふむ、それに関しては少し考えがあるのだが・・・」


 「考え?」


 「まあこれは後にしよう。秋月、体調の方はどうだ? 歩くくらいは出来るだろうか」


 「一応はできますけど・・・」


 「ならいい。そろそろ、もう18時だ。私も腹が減ってな。この後、料亭を予約してあるんだが一緒についてきてほしい。病院食の味気ない食事ばかりでは飽きるだろう? これより先は食事をしながら話をしようじゃないか」


 「大丈夫なんですか? そんな病院を抜け出すようなことをして」


 「問題ない。病院側には伝えてある」


 「ならいいじゃありませんか。こんな殺風景なところで立ち話するより、食べながら楽しく会話したほうが話も弾みますよ」


 「うむ、異論はない」


 「はぁ・・・そこまで言うなら」


 「では決定だな。しかし、その服で出歩くのは少し目立つ。適当に君に合いそうな服を見繕ってきたから、これに着替えると良い」


 あれよあれよという間に外食することが決定する。目立つからと言って差し出されたのはどうやら紳士服のようだ。どうやらこれに着替えなければならないらしい。


 「しばらく外に出ておく、着替え終わったら呼んでくれ。案内しよう。君の荷物は念のため持っていくので安心してほしい」


 「はい、わかりました・・・」


 いよいよ外に出る瞬間がやってきた。襲ってくる不安と緊張に耐えながら紳士服に着替えていく。異様に汗が出るのは暑さだけではないだろう。

 用意された紳士服は大きめに見繕ったのか少しだけ大きく感じた。スマホ類の荷物は先に持ち出されてしまったし、病室に鏡が置かれていなかったので自分で確認はできなかったものの、出歩く分には問題ないと思う。

 着替え終わり、準備が整うと意を決してドアノブに手を掛けるのだった。

 

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