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~女将校達ノ日本帝國ヨ、永遠ナレ~  作者: 秋津神州
序章:日本帝國へ来ル
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序話:墜落


 帝國とは何とロマンのある響きなのだろう。それが悪役であろうが主役であろうが国家や戦争を扱う作品には必ずと言っても過言ではないほど帝國という国号が付いた国家が存在する。21世紀において帝國の国号を公に使用している国家が存在していないのにである。いや、逆に存在していないが故に使いやすく物語を構成するのに打って付けなのかもしれない。

 そんな過去の存在である帝國だが歴史を辿れば極近年まで存在していた。その中の国の一つが大日本帝國である。2次大戦の敗戦に伴って帝國という国号を使用しなくなって100年と経っていない。細々とした帝國は1970年代まで存続していたが、実質的に世界が帝國と認めていた国は大日本帝國が歴史上最後の帝國だ。(だとする人もいる)厳密にはemperorと訳される天皇制が存続している点を見れば現在も帝國と言えないことはないのかもしれないが、そんな些細なことはここでは置いておこう。この物語はこの世と似ても似つかない別世界の物語なのだから。


_____________________________________



「おい!大丈夫か!?」


 最後尾にいる友人が自分に声をかける。今は大学の登山サークルのメンバー6人と西日本最高峰の石鎚山に登山中だが、不幸にも大雨に遭遇していた。雨と霧が視界を遮り、前後の人影を確認するのがやっとである。


「ああ!大丈夫だ!もう少しで頂上に着くぞ!」


 2ノ鎖をすでに超えてしまった段階でいきなり大雨に遭遇した我々6人は3つの手段を迫られた。

 一つはその場に留まって雨が止むのを待つ事。もう一つは2ノ鎖を降りた先にある休憩所まで降りる事、ここは雨風を凌げる小屋が建っており、他の登山客もいるだろうからここまで下山できれば安全だ。最後は頂上を目指すこと。頂上はほぼ2000mの標高にあり、建物もあることからここも安全だ。もし雲を抜けることができたら雨の心配もなくなるし、一番近い建物もここだった。

 最初は雨が落ち着くまで留まることにしたが、メンバーの一人が低体温症の症状が出始めたので体力があるうちに雨風を凌ぐことが出来る頂上へ向かうことにした。

 その際、一度登頂経験があり、雨具の用意のあった自分が先頭を行くことになったというのがこれまでの経緯である。


「くそ、今日は晴れで登山日和だって調べてきたのにこれかよ!くたばれ気象庁の野郎・・・」


「全く同感!あとで訴えてやろう!」


 最後尾の愚痴に同意の言葉で返す。普段なら笑いが起こるのだがもうそんな余裕は後の4人には無い。かといって自分も余裕がある訳ではない。おそらく後ろの友人もそうだろう。しかし、何か話していないと心が折れそうで仕方なかった。一番装備を整えてきた自分でさえこの有様である。考え得る限り最悪の状況だった。

 標高2000mに満たない山で天気も良好だと油断してしまったのだろう。登山サークルを謳うメンバーとしてあるまじき醜態である。


「うそだろ・・・」


 前から2番目の一人が力なく声を発する。目の前に現れたのは崖に併設された手すりの心もとない階段。落ちれば一巻の終わり・・・助かることは無い。しかし、行くしか助かる道はない。行かなければ皆低体温症で死ぬだけだ。


「なあ、やっぱり下山した方が良かったんじゃないか?」


「馬鹿言え!この天候で下山して道に迷ったら戻れなくなるぞ!」


「それに岩肌が露出して滑りやすい道も多かった・・・滑って転倒したら取り返しのつかないことになる」


「行くしかない!」


 しばらくして皆が決心したように階段を進みだす。この先に頂上があると信じて。しかし、登頂経験のある自分はこれからが長いことを知っていた。皆の気力を持たせるために言わなかったが普通の足でもここから頂上まで20~30分かかる。この悪天候では倍以上掛かるかもしれない。それまで体力が持つかどうか・・・。


「っ!」


 ガタン!っという音と共に自分の真後ろの友人が倒れる。どうやら足を滑らしたようだ。


「大丈夫!?立てるか?」


「ごめん、もう無理だ・・・みんなで先に行ってくれ」


「そんなこと出来るかよ!全員で生きて帰るぞ!荷物持ってやるから立て!」


 そのとき、轟音と共に下から噴き上げるような風に見舞われた。階段はところどころ吹き抜け状態なのでこの時の強風を一身に受けることになる。


「うわっ!?」


「隆之!」


 気付いた時には遅かった。雨具・・・ポンチョがめくれ上がり、視界を奪ったと同時に強風に煽られてバランスを崩す。

 刹那、無重力になったかのような、浮いたような感覚に襲われる。


「―――!?」


痛々しいまでの風切り音で友人の声も聞こえず、自分が落ちているのかすら理解する暇もないまま私は何かに激突した・・・。

 

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