寒さのボクサー
星が見えない空を見上げる。
昨日は星に綺麗だなと呟いた。
今日は見えない星に溜息が出た。
星が好きというわけではないけど、
ふと見上げた空に星が散らばっている。
綺麗と思う気持ちがある自分が人間らしく嬉しい。
機械のように過ごし、機械のように過ぎる。
毎日に人間味がなくなったと感じていた。
田舎の夜は静か。
カエルの合唱も聞かなくなった。
そりゃ、寒いと思う夜にカエルも鳴かないか。
冷たくなった手をコートのポッケに入れる。
自分の熱で温かくなる。
風が吹きブルッと寒くなりポッケの中の手に
力が入る。
昼間、苛ついた時に力を入れた手とは違う。
寒さと戦うボクサーみたいだ。
あとどれくらい寒さと戦うのだろう。
朝の寒さは手強い。
いつか勝利出来るだろうか。