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段落と空行の狭間で

 kindle出版に向けて推敲を重ねているのですが、かなりの時間を要しています。ほぼ全編、書き換えています。推敲が完了したつもりでも、後から読み直すと、また同じ個所を修正したくなる。そんなことばっかりを繰り返しています。泥沼に足を踏み入れた様な気分です。終わりが見えない。


 推敲する箇所は、誤字脱字だけではありません。修飾語が多用されたくどい文章は、読みやすくスッキリさせます。主語と述語の関係性が曖昧になった表現が、時々あります。分かりやすく交通整理をします。また、手癖が至る所に散見されます。手癖とは、語彙力がないために、同じ表現を使いまわすことです。文法的には、間違っていません。ところが、後から読み返すとリズムが悪いのです。他の表現に書き換えます。


 僕の手癖の一つに、「……と言った」があります。登場人物のセリフの後に付けます。


「本気で、そう思っているのか?」

 そう言って、隆が僕の事を睨んだ。


 こんな書き方です。間違ってはいません。ただ、厳密に考えると、セリフに対して「……と言った」と表現する必要はない。セリフごとに「……と言った」と書いていると五月蠅くて仕方がない。書かない方がスッキリします。どうせ書くのなら、登場人物の仕草を書き込んだ方が、臨場感が増すことに気が付きました。


「本気で、そう思っているのか?」

 ため息交じりに、隆が僕を睨んだ。


 こうすると、隆という登場人物の心の迷いが感じられます。描写というのは、人物の仕草を表現するということを、推敲をしながら学びました。


 ただ、こうした修正を、全編に渡って書き換えていくというのは、思った以上に時間が掛かります。そのお陰で、僕自身の文章に対する理解や、技術は向上します。感覚的には、毎日、筋肉トレーニングを繰り返しているような感覚です。


 このように、出版するために、それに見合うだけのクオリティに仕上げています。ところが、kindleで出版するとなると、他にも必要な作業があります。それは、空行の挿入です。


 ネット小説に作品を投稿する場合、空行を多用します。これまでの、僕の文章を見てください。段落とは別に、空白の行が各所に挿入されています。効果は、読みやすくなることです。ギュウギュウに文字が詰まっているよりも、空白があった方が圧迫感がない。最近のネット小説では、この空行を視覚的に多用する傾向があります。新しい、文章作法として受け要られています。


 小説を書きだした初期の頃は、そのことが分かりませんでした。文字をびっしりと埋めていました。書き慣れていくにつれ、空行の意味を理解しました。意識的に使用するようになりました。


 ところが、僕が書いてきた文章をコピーして、kindleに落とし込むと、この空行が全て詰められてしまうのです。これは仕様です。そのままでは、空行は認識されません。空行を入れるためには、簡単なコードを挿入する必要があるのです。


「本気で、そう思っているのか?」

 ため息交じりに、隆が僕を睨んだ。


 先ほどの、セリフと描写の間に、空行を入れる場合、次のようなコードを書き加えなければなりません。


「本気で、そう思っているのか?」

<p><br /></p>

 ため息交じりに、隆が僕を睨んだ。


 ネット小説のように、空行を頻繁に入れるとしたら、全てにこのコードを挿入する必要があります。


 ――えっ!


 ちょっと考えてしまいました。作業が膨大過ぎます。

 空行を入れることで、読みやすくはなるのですが、それはネット小説のみで認識されている作法です。僕の家にある文庫本は、どのページを開いても空行はわずかしかありません。僕が購入したkindleの小説を開いてみました。同じように空行は挿入されていません。


 ――その差は何?


 ネット小説と、kindleは、同じネット文化ですが、書式に大きな違いがありました。それは、横書きと縦書きです。縦書きの場合は、総じて空行が少ない。じゃ、どのような時に空行を入れるのでしょうか。少し調べてみました。


 結論としては、段落――話のまとまり――に応じて、空行を入れるというものでした。その匙加減は、作者に任されます。ただ、空行を入れすぎるのは良くないとの記述もありました。


 どちらにせよ、僕は再び一から作品を見直さなければなりません。空行を入れる場所を見つけて、コードを挿入する必要があるのです。


 ――またかよ。


 ため息が出ます。何度も同じことを繰り返しています。空行を入れるために読み返しているのに、手直しをしたはずの文章を、また推敲しています。気になると、直さずにはおれない。ただ……、


 ――腕立て伏せを延々と行っているような、徒労感。


 そんな疲れを、少し感じています。

 簡単に出来ると思ったkindle出版ですが、まだまだ時間が掛かります。今日もがんばるぞ。

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