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勇者始動編

魔王城・玉座の間


「辺境国との小競り合いはどうなっている?」

 少女のように見える体躯の魔王が眼前の塊に問いかける。


 玉座の前に傅く巨躯、その鎧や露出した肌には歴々の戦闘により刻まれた大小さまざまな傷が見てとれる。

 人族と比べ長命の魔族においても老齢の域に達している騎士、軍の一角を担う将。先代魔王の時代からの将官である。


「万事滞りなく。先日の戦闘で辺境国軍の一翼を撃破し防御陣を崩すことに成功しております」

 先ほどより深く頭を沈める。


「上々である。で、貴様は次にどう動く?」

 あくびを噛みころし、興味無さげに魔王が問いかける。


 ぞくり、と巨躯の老騎士は背筋に氷を差し込まれたような悪寒が走る。叡智の深淵とも呼ばれる小さき魔王に、自らの手駒となるだけの才覚があるのか見極められている。


「はっ……じ、陣の(ほつ)れにくさびを打ち込み、分厚い鎧を引き割き、確固包囲して押し潰します」

 ぎらり、と業火のごとき赤い瞳が輝いた。気がした。

「……ほぅ」


「すでに突入部隊の編成を始めております。翌朝には突入を行う予定です」

 全身から汗が噴き出し指先が震える。気付かれまいと、手をぐっと握りしめる。


 (あまり良い手とも思えんが、悪手でもない。そこまで口出しすることもないだろう)

「よかろう。貴様の手並みを見せてみろ。下がれ」






 老騎士が立ち去り、次に静寂が訪れる。



 

「アリアドネ、アリアドネはいるか!」

 静寂を切り裂いて、少女の高く力強い声が部屋に響く。


「はい、魔王さま。ここに。」

 声だけが聞こえ、おや?と首を(かし)げる。

 瞬きをした刹那、眼前に膝をつき頭を垂れる女性、アリアドネの姿が。

 

「アリアドネよ。毎度毎度私の虚を突かなくてもよいのだぞ?」

「申し訳ございません。私の趣味でございますのでどうかご容赦を」

 眉一つ表情を変えずにアリアドネと呼ばれた女性型の魔族が答える。


「アリアドネ、人族の勇者の状況はどうなっている?」

 特にどうという感想も抱かずに魔王が問いかける。毎度繰り返される儀礼のようなものだ。


「勇者は健やかに成長しております。ついに先日、はいはいをするようになったと報告が上ってきております」

 魔王は興奮を抑えきれず玉座から身を乗り出して息を荒げる。

「よもや!よもやこれほど早く!くくっ、やはり勇者か。その身に宿す神力をすでに発現しているようだな」

 目がランランと赤く輝く。


「魔族より短命であるが故、幼年期の成長は人族のほうが早いと聞き及んでおります。ですが人族の中でも若干成長が早いとの報告もあります」

 冷静を装っているが若干声が弾んでいる。


 会話をしながらもいつも通りにテーブルとイスが作られ、虚空よりお茶が用意される。


「くくっ。で、アリアドネよ。」

「なんでございましょう、魔王さま」

 先ほどのお茶の出来に満足がいかなかったようで淹れ直しながら答える。


「お前の力で勇者の姿を映し出すことはできるか?」

 新しいお茶の香りを楽しみながら、チラリと上目遣いで尋ねる。

「可能でございます、魔王さま」

 


「では今すぐここに……」

 ぐぐいと身を乗り出す。

「お断り致します」

 即答。


「なんだと!貴様、私の命が……」

「お断り致します」

 食い気味に即答。


「そ……」

「お断り致します」

 魔王の発言を遮り3度目の拒否。


 カップをテーブルに置いて、目を伏せながら

「空間を繋いでしまいますと、魔王さまから駄々漏れの魔力により勇者の村が滅びる事になります」

「漏らしてない!ちゃんと制御してるけど、そもそもの量が多すぎるんだ」

 ドン、とテーブルを叩き抗議の意を示す。

「後ほど、記録映像をお渡し致しますのでお気をお鎮めください」


「しかたない。今日はそれで手を打とう」

「寛大なご措置に感謝致します」

 魔王は溜めこんだ息をふぅ、と吐き出しイスに座りなおす。

 アリアドネは額に浮きだした汗を拭う。


「して、アリアドネよ。お前の事だ、すでに調べはついておるのだろう?」

「抜かりなく。あの年頃の人族の子は、音が鳴る玩具などを好んで手に取るようです」


 




 ふむ、と魔王が切り出す。

「宝物庫にあったであろう。ケラケラと笑い声を上げる呪いの人形が」

「お考え直しくださいませ」


10回ぐらいで終わるようにしようと思います。

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