表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙の怪獣  作者: 天然水素
第二章 雷獣
9/63

第八話 プロデューサー&ディレクター

 さて、そうは言ったものの、どうやってテレビ局の中に入ったものか。


 しばらく考えてから、とりあえず着ていたパーカーを脱ぐと、プロデューサー巻きにして、首元に身に着け、堂々と警備員の前を歩いていった。


「おっ、おつかれちゃん」


「ちょっと、ちょっと、ちょっと」


 案の定、警備員に止められてしまった。


「見逃してくれよ〜。ザギンでシースご馳走するからさ」


 私は目を泳がしつつ、ビビりながら、精一杯の番組プロデューサーの物真似をした。


「君、よくそのクオリティで挑んできたね。君の勇気には感心するよ」


「えへへ、ありがとうございます」


「褒めているけど、褒めてないよ」


「ところで、その制服とても素敵ですね」


「おだてたって無理だと思うけどな」


「いい気になって、入局を許可してあげようとかならないんですか!」


「ならないからね」


「ケチ!」


「ケチじゃないから」


「そんな……」


 私のモノマネが下手で、なおかつ、この作戦も失敗するということはうすうす分かっていたので、逆切れして乗り切ろうと思ったが、普通に失敗した。


 すると、がっくりと膝に手をついてうなだれている私のもとにポニーテールの女性が話しかけてきた。


「あっ! 君は、あの時の男の子だよね!」


 話しかけてきたのは、昨日、電車であの生物に襲われかけていた女性であった。


 彼女は即座に私の状況を察してくれたのか、「この子、テレビ局に入れてあげられないかしら?」と入構証を見せながら、警備員に頼んでくれた。


「お願い!」


 彼女が両手を合わせて、軽くウィンクをすると、「……まぁ、園尾さんがいうなら」と彼女と私の懸命さを認めてくれたのか、警備員も渋々了承してくれたのだった。


「君はブラック飲める? 甘い方が好きかしら?」


「すみません。私、あまりコーヒー飲めなくて」


 彼女は自販機から、紅茶とアイスコーヒーを買うと、私の方に紅茶を差し出してくれた。


「ありがとうございます」


「お礼をいうのは、こっちの方だよ。あの時、怖くて足が動かなくなっちゃって、君が来てくれて、本当に助かった。まさに九死に一生を得たってかんじ。ありがとうね」


「とんでもないです」


「ほんとは、あの後すぐにでもお礼に行きたかったのだけれど、走って逃げるときに、足をくじいちゃったの。それで、『お怪我はありませんかー! あるじゃないですかー!』って、元気な駅員さんに連れていかれちゃったのよ。ところで僕くん、名前はなんて言うの?」


「双葉 真白です。大学二年生です。お姉さんは?」


「私は、園尾 瑠璃。コトブキテレビ局の番組ディレクターよ」


 自己紹介を終えたところで、園尾さんはアイスコーヒーの缶を開けた。


「それで、真白くんはどうしてテレビ局の中に入りたかったの? もしかして社会科見学?」


 私は、園尾さんにこれまでの経緯を説明した。


「なるほどね。うちのテレビ局に昨日の怪獣が来ていたなんて。私も協力するから、君がよかったら、一緒にこのテレビ局を回りましょう」


「ほんとうですか? 助かります」


 私は、ニドケーが出没したというニュース番組のスタジオに連れて行ってもらった。


 スタジオは今もまだ復旧作業中のようで、セットのほとんどがぐしゃぐしゃになっており、小道具やセットの破片も散らばっている。


 また、やはり電化製品は、故障が多いようで、動かなくなった照明や、放送カメラのいくつかがスタッフによって、メンテナンスされていた。


 その中の一人が、スタジオに入ってきた私と園尾さんに気づいたようで、こちらへと駆け寄ってきた。


「お久しぶりです、園尾さん。園尾さんがこのスタジオに来るなんて珍しいっすね。どうかしたんですか?」


「ええ、あなたにもすこし話を聞きたいのだけど。ちょっといいかしら?」


「勿論です。もしかして、今朝の『ググっとモーニング』で起こったトラブルについてですか?」


「そうなの。あの時に何があったか聞かせてくれるかしら?」


 聞き込みが始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ