表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙の怪獣  作者: 天然水素
第一章 始まり
5/63

第四話 毛布

 翌朝、これから夏休みの始まりだというのに、気分はマリアナ海溝の海底ほど沈んでいた。というのも、朝から「調査だ! 調査にでかけよう!」と、はやし立てる通信機が同室に存在しているからである。


 レンジャーへの勧誘がうるさすぎて、駅から自宅までの帰り道に捨ててこようか、という考えも一瞬、頭によぎった。しかし、そこまで薄情にもなりきれないので、折衷案として、通信機をガムテープでぐるぐるに巻き、勉強机のうえに置いてあるのだった。


「開放しろ―、地球人!」


「まだ朝七時ですよ。あんまり大きな声出すと、近所迷惑です」


 私は布団にくるまりながら、もごもごと動くと、繭から脱皮して羽ばたく蝶のようにベッドから起き上がった。寝ぼけ眼をこすると、わなわなと喚く通信機にまかれたガムテープを剥ぎ取ってあげることにした。ガムテープを剥いだのは、なんだか今のやりとりだと、自分が悪者のようだったからである。


 するとすぐに、「真白―、うるさいですよー。起きているなら、朝ごはん食べにきなさい」と一階にいる母親から、忠告が飛んできた。


 私は、「はーい」と軽く返事をすると。通信機にジト目を向けた。


「ほら、怒られちゃったじゃないですか」


「僕はあきらめないぞ。君がレンジャー代理を引き受けてくれるまで、粘着的な精神攻撃をしかけるつもりだよ。双葉 真白くん」


 なんともしつこい通信機である。質の悪さはガムテープの粘着性に近い。


 彼は、昨日の段階で、教科書の名前の欄に「双葉 真白」と書かれているのを見たようで、私の名前はとっくにバレてしまったたらしい。


 反対に、私は通信機から聞こえてくる声の持ち主の名前を知らない。昨日、彼に名前を尋ねてみたが、「ふっ、名乗るほどの者ではないよ」との一点張りなので、私は彼を通信機さんと呼ぶことにした。


「こんなやりがいのある仕事ほかにないよ!」


「やりがい搾取です」


「地球がピンチなんだよ」


「……うっ」


 たしかにそれを言われると弱ってしまう。あんな怪獣を私の住んでいる街に野放しにしておくのは、とても危険だと思う。この街には、お世話になった人達や、家族が住んでいる。それを考えると、私があの宇宙生物に立ち向かうべきな気もしてくる。


 しかし、私があれに立ち向かっていくほどの勇気をもっているのか、と問われたら、やはり戸惑ってしまう。……それでも。


「……分かりました。今日のお昼頃からその調査とやらにでかけますから、なるべく私以外の前では静かにしていてくださいね。私があなたと喋っていると、一人で喋っている変な子だと思われてしまいますから」


「それはレンジャーを引き受けてくれるってことかい!?」


「まぁ、そうですけど」


「本当かい、ありがとう! 真白くん!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ