善狐と妖狐
人間の足もとに我が子がいた、白狐の体は、全身が真っ白な毛で覆われているのに人間の足もとにいる我が子は、赤色の毛で寝ていた。
人間は、そんな我が子の足を縄で縛り、肩に担いで山を去っていった。
白狐は、人間の姿をずっと見ていた、我が子を見ずにずっと人間を見ていた、憎しみや悲しみ等の感情は、ないであろう瞳で人間をじっと見ていた。
白狐は、しばらく動きませんでした、他の山に住む者たちは、人間が山から去っていったら動き始めましたが白狐だけは、動かずに人間が歩いて行った方を見ていました。
どれくらい時間が経ったであろうか、辺りは、暗くなり善狐の時間から妖狐の時間になっても白狐は、動きませんでした。
そんな時、白狐の周りに五つの狐火が現れた。
一つ目の狐火は、赤狐である。(赤狐とは、赤毛の狐である)
二つ目の狐火は、黒狐である。(黒狐とは、黒毛の狐であり北山に住む神獣である。)
三つ目の狐火は、銀狐である。(銀狐とは、銀毛の狐であり月をシンボルとする狐である。)
四つ目の狐火は、金狐である。(金狐とは、金毛の狐であり日をシンボルとする狐である。)
五つ目の狐火は、天狐である。(天狐とは、歳は千を超え、尾は、四つあり神通力が使える神獣である。)
しかし、白狐は、その五つの狐火にも、まったく気づかずに人間が歩いた方をじっと見ていました。
そんな時でした、我が子のいた場所に人間の姿をした野狐が立っていました。
その野狐は、尾が九つあり周りの狐霊からは、白面金毛九尾の妖狐といわれる悪狐であり、
しかも、その九尾の妖狐は、なぜか悲しい瞳で白狐の子がいた場所を見ていました。
しばらくすると九尾の妖狐は、一言だけ白狐に言いました。
「なぜ、我が子は、死んだのか」と。
辺りは、シーンとしました。
しかし、白狐は、何もいいませんでした。
そんな白狐に九尾の妖狐は、「答えろ、誰が我が子を殺した」と再度聞いてきましたが白狐は、やはり何もいいませんでした。
我が子を殺された九尾の妖狐の怒りは、凄まじく月が見えていた空は、分厚い黒雲が静かだった大地は、激しく揺れ全ての者を震え上がらせた。