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ノックバック系勇者は頑張ります!  作者: ショゴス=スライム3世
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ついに冒険の始まり! いきなり衝突ですか!?

「そうと決まればギルドに行きましょ」


 教会の外に出たエーデルはやたらと切り替えが早い。できる子だ。


「あの、アーシアンって連れてると面倒なんですか?」


「あ、さっきはごめんなさいね。アーシアンだからといって不都合はないわ。ただ呪い持ちって言うのがね……」


 エーデルは目を逸らす。

 俺の呪いはそんなにヤバいのか……。


「あの、俺死んだりしませんよね」


「ええ。きっと。たぶん、そう。であると願いたい。です」


 俺は自分から血の気が引いていくのを感じる。

 恐怖を振り払うかのように頭を激しく横に振る。

 いや、後ろ向きに考えても始まらない。

 今は冒険者ライフを楽しむとしよう。


「それであの、俺とパーティーに……」


「ええ、もちろんよ。教会での礼拝にも飽き飽きしてたからね。私も少し旅をしてみたかったのよ」


 話を聞く分には、ずっと教会でお祈りをする毎日だったらしい。

 時々訪ねてくる冒険者の話に目を輝かせていたそうだ。


「そのために攻撃魔法も練習してたのよ。まあ、そのせいで度々面倒事を押し付けられるんだけどね」


 この子も苦労が多いのだろう。

 教会内で翻訳魔法を使える二人の内の一人なんだから、きっと優秀なのだ。

 才色兼備とは恐らくこの子のことを言うのだろう。


 ――冒険者ギルド――


「いらっしゃいませ! 初めての方ですね。お手続きの方はカウンターまでお願いします」


 赤髪がフレッシュなお姉さんが出迎えてくれる。

 営業スマイルというやつだろうが、満点を上げたいくらいの眩しさだ。

 見ているだけで元気を貰える。


「あ、こほん」


 エーデルは咳払いをする。


「それでギルドっていうのは出資金を持ち寄って、共同所有者になるの。そうすれば出店や鍛冶屋、温泉に食事処なんかを使わせてもらえるわ。冒険者になって依頼を受けることもね」


 生協みたいなものか。


「取り敢えず出資金は出しといてあげるから、その書類を書いて待ってなさい」


「ありがとうございます」


 出資金まで出してくれるなんて天使なのか。

 文無しの俺にとって、この子がいなければこの世界で生きていけない。

 強く感謝を噛み締めながら書類に必要事項を書き込んでいく。


「そこにアーシアン。あと備考に呪い持ちって書いてちょうだい」


 呪い持ちか……最悪の称号だ。差別批判待ったなしだな。


「呪い持ちは天使に嫌われて魔族に好かれるから酷いことを言われるかもしれないけど、私じゃどうしてあげることも出来ないわ。力及ばずでごめんなさい」


「謝らないでください。本当に沢山のことをして貰ってるんですから」


「少し待っててちょうだい。手続きを済ませてくるから」


「はい」


 エーデルは受け付けまで行き、冒険者登録の手続きをしている。

 それにしてもこの呪いをどうしたものか。

 ノックバック――それはゲームに出てくる一部のモンスターの特殊技に付与されている対象者を突き飛ばして後退させる効果のことだ。

 とても毒や麻痺のような強力なバットステータスではない。

 いや、その方が助かるのだが。


「キャアッ!」


 俺は反射的に声がした方を見る。

 そこにはエーデルと革鎧を着た冒険者。

 何やらエーデルが絡まれているようだ。

 そこの席に座っていたのは、こんな昼から飲んだくれているようなろくでなし達。

 そんな酔っ払い達に悪絡みでもされたのだろう。

 酔っ払いは苦手だが、エーデルが困っているなら見逃すわけにはいかない。


「このっ……!」


 エーデルが手を出そうとした瞬間に、俺はエーデルと男の間に入る。


「おい、やめろ……」


 カッコつけて発した言葉は完全に震え声だった。

 ダサすぎて泣けてくる。


「なんだお前……」


 怖くて声が出せないが、必死に相手を睨みつける。


「んだァ、テメェ?」


 男に胸ぐらを掴まれる。

 喧嘩はちびりそうなくらいがちょうどいい。

 そう聞いたことがある。

 静かに息を吐いて覚悟を決める。


「来いよ!」


 覚悟を決めて叫ぶ。


 ――渾身の右ストレート。

 それだけで勝敗は決した。


 信じられない結果を目の当たりにして、観客は少しの間無言だったが、すぐに黄色い歓声が上がった。

 結果は俺の完敗。

 俺はものの見事に吹っ飛ばされ、ギルドの外壁にめり込みKO。

 あまりに尋常じゃない飛び方をしたので一瞬空気が凍ったが、場はすぐに湧きたった。

 勝者への歓声が辺りに響き渡る。

 カッコつけるつもりが殴られて完敗。最高にカッコ悪い。

 相手の男にはギャラリーが群がり、ハーレム状態。

 エーデルだけが俺のもとに来てくれた。


「ビビリの弱虫アーシアンかギルド登録初日にケンカする馬鹿だと思ったけど」


 エーデルは微笑む。


「カッコイイじゃない」


 意外だった。

 殴られて吹っ飛んだ俺は予想だにしなかった言葉。

 それは殴られたことなど吹き飛ぶような嬉しさだった。



「エーデルでいいわ。あと敬語はなし。パーティー組むなら不便でしょ」


「エーデル……さん」


 エーデルは不満げにこちらを睨む。


「わかったよ、エーデル……」


 エーデルは満足気な表情を浮かべ、情報板の方へ歩いていく。


 情報版にはギルドへの依頼や特別指定危険なモンスターの棲息地・活動時間、パーティーの募集、行方不明者数などが貼られている。

 特別指定危険モンスター。町近くで見つけた場合通報して下さい。

 ブラッドロード、クィーンエイリアント、etc……。

 見るからにヤバそうなののオンパレードだ。

 きっと反則級の強さを持っているのだろう。

 モンスターのデータは見ているだけでわくわくしてくる。


「依頼……はまだ無理だろうから、近場の低階層ダンジョンを探検してみましょ」


 俺は胸を高鳴りに躍らせながら、エーデルの後をついて行く。

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