ノイレのシロとクロ 2
「願いを…生成…?」
《yes》
「はっ…世界を恨んでる私にまで力を与えるなんて…この世の神とやらはお人好しなんだな」
私は皮肉を含んだ言葉を世界の言葉に向けて言い放つ
しかし世界の言葉はそんな事を気にしていなかった
ただ淡々と私が今現在得る事のできる力の名を告げる
《スキル、鬼神の戦技、防御の盾、癒しの雫の3つから習得可能…現在のレベルでは選べるのは1つです》
「戦…ん?」
《スキルの説明を開始しますか?》
yes no
目の前に青い薄い板のようなものに文字が浮かび上がり、突然の事に私が戸惑っていると世界の言葉が声を掛けてきた
《説明を開始する場合はyes、Skipする場合はnoを選択してください》
「……この変な字に触れればいいんだな…?」
私がyesに触れたその瞬間あたりが一瞬で変わった
「なっ…!?ここは??」
《鬼神の戦技の説明を開始します》
私が驚いている事を気に求めず世界の言葉は説明を始めた
鬼神の戦技
ーーーーーーーーーー
東の果てにある幻と言われたの灯の国の戦技
かの国には鬼と呼ばれる神が鎮座しその神が編み出した剣の技だと言い伝えられる
壁をまるで地のように走り蹴り上げ空から放たれる強力な一撃はまるで舞のようだと言われており
小さな力も大きな破壊の力となる
SKILLBONUS
…………………………
力+15
速+15
技+10
「…凄いな…」
《次に防神の盾の説明を開始します》
「あ…あぁ…」
防御の盾
ーーーーーーーー
巨大な盾を一枚高速展開し味方を守る
技術力に依存するが鍛える事で離れた遠くの者も守る事ができる
スキル所持者の技術力が高ければ高いほど小型の盾を多数展開したり大型の盾すらも数枚展開することが可能、但しMPの消費が激しい為使いどころを考えなければならない
防御スキルの中ではトップクラスの防御力を誇る
SKILLBONUS
…………………………
防+20
魔防+15
HP+30
「なるほど…守りか…クロを守るとなればこの力も良いかもしれない…」
《最後に癒しの雫の説明を開始します》
癒しの雫
ーーーーーーーー
大切な誰かを守りたいと言う気持ちが具現化した力
様々な悪影響を及ぼす状態異常を完全回復
HPを15%回復する
このスキルだけではHPを多く回復する事は出来ないが
スキル派生先の※※※※※を習得することにより本来の力を発揮する
SKILLBONUS
…………………………
魔+10
精神+15
MP+25
「そうか…これはクロが怪我した時に手当してやれるのか…」
《スキル習得時、SKILLBONUSとしてそれぞれのステータスが+されます》
「ステータス強化か…」
私は自身の可能性であるスキルの動きを見つめる
私が飛ばされた場所にはそれぞれのスキルを覚えた人形の様なものが動きながらその効果がどれほどであるか…そしてどのような影響があるのかが分かるようになっていた
「防御もいいとは思う、クロを守れるならそれは嬉しい…でもそれでは意味がない…」
《防御の盾の習得を破棄します、スキルを破棄した為…防+2獲得》
「なるほど…選ぶのをやめたやつはそのスキルが特化したステータスが強化されるのか」
私は自身の可能性である2つをまたじっと見つめる
「癒し…私はあまり回復や手当てなどは器用ではないからな…これじゃきっとクロの役には立てないだろうな…」
《癒しの雫の習得を破棄します、スキルを破棄した為…魔防+2、MP+5獲得》
「私は力を選ぶ…どんなに憎かろうが力が手に入るなら…クロを守れるのなら…世界すらも利用してやる」
《鬼神の戦技を獲得…ノイレ※※※※のアップデートを開始……終了まであと30秒……》
そう世界の言葉が言うと同時に急な痛みが私を襲った
「っ…がはっ!!」
《終了まであと15秒…》
「うあぁぁぁぁぁっっ!!」
痛みに身を捩り唇を血が出るほど噛みながら必死に傷みに耐える
スキル…力を得るということがどういう事なのか叩きつけられた気がした
《終了まであと10秒…9…8…》
「ふーっ…ふーっ…」
《5…4…》
「っあ…」
《3…2…1…0……アップデート完了…鬼神の戦技の習得が完了しました》
「うぁ…はぁっ…はぁっ……」
乱れた息を整える
涙でぼやけた視界が戻る頃には私は元の場所に戻っており、世界の言葉も聞こえなくなっていた
身体が軽いような気がした
「これが…力を持つということか…」
私は静かに両手をギュッと握りしめた
すると後ろから怯えるような慌てているようなクロの声がした
「シロっ!!シロ…!!!怖いよっ!!」
「どうしたんだ!何があった!?」
「王様の…追手が……来るって…リーテスの群れが教えてくれたんだ…怖いよ…」
「なに…!あの男の追手だと……!?チッ…嗅ぎ付けたか…」
リーテスは手の平に乗るほどの小さなコウモリ型の魔物でとても臆病な性格だ
持ち前の超音波感知と熱源感知を駆使して敵がどれほどの位置にいるかを把握出来る
そんなリーテスの言うことだ信じる他はない
「シロ……」
「大丈夫だ、私が守る」
「うん…」
クロが聞いた話ではもうここから離れても1kmを切っている
早く隠れるか逃げるかをしなければまたあの地獄に逆戻りだ
「逃げるぞクロ…走れるな?」
「うん…!大丈夫!僕…走れるよ…!!」
私はクロの手を取って洞窟の出口へと走り出した