表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

運命

今日も、さっさと畑仕事を終えると、昨日シェリーに言われた切り株広場に急ぐ。切り株広場は、森と村の境目にある少し開けた草原だ。

息を切らせながら、たどり着くとラグナが、先に来ていた。

まだ、シェリーとロンは、来ていないみたいだ。


「はぁはぁ、ラグナ早いね!」

「まぁな、何か大人達が忙がしいみたいで、今日の授業は、早めに終わったんだ。」


ラグナは、時期村長なので、週に2日だけ村の学校で授業を受ける僕らとは違い、個別に教師を招いて、村の運営に必要な事を勉強しているらしい。


「そうなんだー、なんだろうね?」

「よく分からないけど、森の中には絶対入るなってさ」

「ふーん。シェリーにも、言っといた方が良さそうだね!」


「お〜い。ラグナ、カエデ〜」


ロンが、やって来たようだ。


「遅れちゃってごめん。あと、シェリルちゃん、急におじいさんと一緒に、隣町に行くことになっとんだって!なんか、知り合いが具合悪いらしくて、暫く帰って来ないってさ!」


「まったく、言い出しっぺが、来ないなんて。でも、しょうがないね!」

「んー、じゃあ、今日はどうする」

「来たばっかりだけど、今日は、もう帰ろうか。なんか、皆慌ただしいみたいだし。」

「そうだなー、俺もそれがいいと思う。」

「僕も、もう少し家の手伝いあるから。」


なんとなく、何時もと違った村の雰囲気に、早めに家に戻ることにした。

途中で、リリアの好きなお花でも摘んで帰ろうかな。


二人と別れ、川沿いの道を歩いていると、目の前を何かが横切った気がした。

虫かな?虫の多い田舎村だが、前世も今も虫嫌いの僕としては、テンションが下がる。

まぁ、仕方ないかと思い、花を探していると、今度は右の頬に、何かがぶつかった。


「あたっ!」

「いった〜、この人間!こんなところで、ぼ〜っとして、邪魔で仕方ないわ!」


んっ、何か聞こえたような・・・

思わず、声の方を見ると、小さい羽の生えた女の子が、此方を睨んでいる。


「えっ、な、なにこれ?」

「えっ、あなた、私の事見えるの?!」


前世から、物語を妄想するのが好きではあったが、まさか、ついに幻まで見てしまうとは・・・

僕は、目の前の不思議生物をムギュッと掴んでみた。

・・・あれ、掴める。


「なにすんのよ!私は、高貴な水の精霊よ!そんな事したら、精霊王様に言い付けるわよ!」

「・・・・、精霊?」

「そうよ、精霊よ!」

「僕、目と耳がおかしくなったのかな・・・」

「何言ってるのよ!貴方に、精霊士の素質があるだけでしょ!都会じゃ、精霊士の学校もあるぐらいなんだから、そこまで珍しくないわよ。」


・・・まさか、精霊なんて存在がいるなんて、思いもしなかった。

僕の手の中で、小さな精霊様は、あい変わらずキーキーまくし立てている。


「いつまで、掴んでるのよ!そろそろ放しなさいよ!急いでるんだから!」

「あっ、ご、ごめん・・・」


ついつい、物珍しさに、固まってしまっていたようだ。

冷静に考えると、女の子を急に鷲掴みするなんて、かなり失礼な行動だった。


「急に、ごめんね、僕精霊て、初めて見たんだ。君は、とっても可愛いね。」

「な、何よ!おだてたって駄目なんだからね!」

「おだててないよ、本当にそう思ったんだ。ところで、何をそんなに慌てていたの?」

「!そうだ、あなたに構ってる場合じゃないわ!意外といい子そうだし、なんだか懐かしい感じがするから、教えてあげるけど、今すぐこの村を離れた方がいいわよ。」

 

そう言うや否や、精霊はすぐに飛び去ってしまった。

バビューンと音がしそうな速さだった。


「なんなんだ・・・大人達が、慌ただしいのと関係あるのかな?・・・とにかく、早く帰ろう」


不吉な予感がして、怖くなってきた。足早にどころか、全力疾走で、家までの道を走った。

せっかく、精霊が見える事実が発覚したのに、なんだかそれどころじゃない。

息を切らせながら、家にたどり着き、扉をあける。

心臓がドキドキする。


「はぁ、はぁ、ただいま。母さん、リリいる?」

「あっ、お兄ちゃんだ!お母さん!お兄ちゃん帰って来たよ!」

「カナデ‼よかった!今、探しに行こうと思ってたのよ。」


二人の姿を見て、少し安心すると、変な動悸も収まってきた。


「一体、何があったの?村の様子が変で、遊ばないで帰って来ちゃったよ」

「実はね、ちょっと前に、町のギルドから、連絡があって、大型の魔物が、この村を通る可能性があるそうなの。それで、避難指示が出るまで、自宅に戻って準備しておくようにて、村長さんから通達が来たの」

「大型の魔物?父さんは、どこに行ったの?」

「父さんは、昔ギルドに居たことがあったでしょ?だから、手伝いに行くって。」


僕の父のグレンは、母と結婚する前は、冒険者として、そこそこ活躍していたので、戦力として、手伝いに行ったんだろう。


「町から、騎士団が来てくれるそうだから、そこまで酷い事には、ならないと思うけど・・・二人とも、とりあえず逃げる準備をして。」


「・・・わかった。リリ、行くぞ、一緒に準備しよう。」

「はいなの。」


何事も、ないと良いんだけど…小型の魔物にしか、会ったことがないから、大型の魔物が、どれほど大きいのか、想像ができない。どんな、魔物なんだろう・・・

リリと二人、古るいリュックに、着替えや、薄い寝具などを詰め込みながら、考える。

一通り準備が終わった頃、村長から避難の通達が来た。

一度村の広場に集まってから、逃げるそうだ。


いよいよ、出発しようとした、その時、大地を揺るがすような、獣のの鳴き声が、聞こえてきた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ