リザルト
初スライム討伐の興奮冷めやらぬなか、システムウィンドウのリザルト画面を確認する。
『スライムを倒した。経験値1を獲得。1リム獲得。』
「け、経験値もお金も、1。おぅふ。」
私は頭を抱えて天を仰ぐ。
(いや、はじめての町の、町でてすぐの魔物だから当たり前何だろうけど。あの猛者っぷりでも、最弱なのかー。次のレベルまで何体倒せばいいんだろう。)
天を仰ぐのをやめ、項垂れる。
(あれ、システムウィンドウ、続きがある?どれどれ。)
私は続きに目を通す。
『スキル 忍耐 を獲得しました』
「初スキル、きたーーーっ!」
さっきまでのどんよりした気分はどこへやら、ウキウキ気分でスキルの詳細を見る。
『忍耐:忍耐力がつく』
「えっ、それ、だけ?」
もう一度確認する。
『忍耐:忍耐力がつく』
続きがないか、目を皿のようにしてシステムウィンドウを確認する。
当然続きはない。
「ちょっ、下げて上げて叩き落とすとか、どんだけっ。ドSですかー。運営ー。」
気持ちが乱れすぎて、次の戦闘は絶対にミスると思った私は一度町に戻ることにした。
すぐ後ろにあった門のオーブに触れ、町中に転送される。
「おかえり、カムカム」
「あっ、ブリュンさん!ただいまです。」
「はじめて門から戻ったようだな。おめでとう。」
「うぅ、ありがとうございますぅ」
「なんだ、あまり嬉しそうじゃないな」
私はおもいっきりこれまでのことをブリュンさんに愚痴り始めた。
スライムが強すぎなこと。何とか倒したこと。でも、全然経験値もお金も手に入らなかったこと。スキルを手にいれたこと。
静かに私の愚痴に付き合ってくれるブリュンさん。一通り愚痴ると少し、気が晴れた。
静かに聞いていたブリュンさんが口を開く。
「なんにしても初スキル獲得おめでとう。役所に行ってみるといい。はじめて獲得したスキルでそいつの職業適正がわかるからな。」
「職業適正ですか?」
「ああ、スキルを手にいれればそのスキルに対応した職につける。職につけばその職に対応したスキルが手に入り安い。転職も可能だが、大まかな職とスキルの獲得傾向は、最初のスキルで決まるんだ。その傾向が職業適正だ。」
「私のスキル、忍耐、だったんですが。」
「ほう、聞いたことのないスキルだ。まあ、私はしがない門番だからな。」
「役所に行ってみますね。」
「うむ、そうしろ。」
私はブリュンさんに別れを告げ、役所に向かう。
役所につき、また番号札を取って待つ。
呼ばれて行くと、この前と同じおじさんだった。
「えー、ではスキルを拝見しますね。はい、スキルが一つありますね。職業を選択しますか。職業はいつでも転職できます。」
「おねがいします!」
私は勢い込んで答える。
「では、あちらの小部屋に入って下さい。中にある祭壇にオーブがついていますので、それに触れて下さい。1つから複数個の候補が出ますので、希望する職業を選んでください。選び直すことも出来ます。終わったらまたこちらのカウンターにお願いします。」
「部屋に入って、オーブに触れて、選ぶ。はい、わかりました。」
「では、良き職との出合いがあらんことを。」
私はカウンターの隣にある小部屋に向かう。
見たことのない、だがおしゃれな紋章の刻まれた扉の前に立つ。
取っ手をつかみ、ゆっくりとあける。
中は本当に狭い。3、4畳くらいの広さで中に祭壇があるだけの殺風景な部屋だ。
祭壇が存在感を放っている。
石造りの土台にオーブが嵌め込まれている。
私は近づき、オーブに触れる。
目の前にシステムウィンドウが開かれる。
〈転職可能職業〉
・農夫
・石工
・ポーター
・下忍
「えーと、どれどれ」
私はシステムウィンドウに目を通す。
「ほとんど戦闘職じゃない……。唯一の戦闘職は、この下忍か、というか、忍耐だから忍者って、ほとんどダジャレじゃないか、これ。」
私は詳細が見れるか試してみる。
下忍:したっぱの忍者。忍術はほとんど使えない。長く辛い修行を経て中忍へと至る、かも。素早さに微補正。短剣攻撃時微補正。
「おっ、出た!どれどれ。」
私は詳細に目を通す。
「長く辛い修行を経て中忍へと至る、かもって。かもってなに!?補正が2つ付くのは良さそうだけど。これでデスペナ時でもスライムに攻撃当たりやすくなるかもだしな。」
私はディスプレイを見ながらウンウン唸る。
「なんにしろ、私は戦闘と冒険がしたいんだ!転職も出来るって言うし、決めた!下忍にする!」
私はディスプレイをタッチし下忍に転職を選択した。
勇壮な音楽が流れ、転職を祝福するかのような光のエフェクトの演出を彩る。
私はこの時は、まだ知らなかった。
最初についた職業が及ぼす影響の大きさを。