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ショートショート集  作者: fnro
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心地よさと引き換えに

 最近腰痛が酷い。ただでさえ座り仕事な上、痛みのことを考えながら作業することが多いので、どうにもミスが増えてしまう。当然上司から怒られる。精神的なものも関係しているのだろうか、ますます腰痛が悪化する。典型的な悪循環だ。


 残念なことに彼女もいなければ嫁もいない寂しい身だから、夜の生活に支障をきたすだとかそれが原因というわけではないが、悲しくなるから多くは語らない。


 ある時、ふと思い出す。そう、一時期話題になった「人間をダメにするクッション」の存在を──

 当時はそこまで腰痛も酷くなかったし、さして気にも留めていなかったのだが、ここまで悪化している今が買い時なのではなかろうか。ブームも過ぎ去っているだろうし、すぐに手に入るだろう。


 某通販サイトでぽちっとな。

 不思議なもので、まだ届いていないのに購入しただけで少し痛みがマシになった気がする。プラシーボ効果──ですらない何か。積みゲーとも違う。


 翌日、会社から帰ってくるとポストには不在票が。すぐに電話して受け取りにサイン。開封の儀を終えてその座り心地を確かめる。


 おお、これは素晴らしい。ジャストフィットするのですごく楽だ。少なくともこれで家においては腰痛からおさらばできる気がした。



 暫くはウキウキ気分で過ごしていた。

 しかし、だんだん物足りなくなってくる。もっと大きいやつを買っておけばという後悔。気が付けばより大きなサイズをぽちっていた。

 届いてみれば、前のと併せたらベッドいらないんじゃないかという大きさ。思わずダイブしてしまう。そして疲れていたのかそのまま寝てしまった。


 翌日、目覚ましをセットしていなくても目を覚ますことができたのは、眠りが深かったからだろうか。しかし会社に行かなければならない。


 身体を起こそうとして気づく。あまりにもフィットしすぎていて思うように起き上がれないのだ。それにあまりの心地よさに二度寝してしまいそうである。力が吸い取られている感じすらある。


 そういえば、今回買ったのは最初のところとは違うメーカーだったっけ。

 もう起き上がる気力すらなく、ただただそこに寝そべることしかできない。

 辛うじて動く腕で近くに放ってあった領収証を手にしてメーカーを確認してみると、そこには次の文字が。


 「悪魔産業株式会社 貴方の生命エネルギーいただきます」


 そうか、俺はこのまま──

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