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ショートショート集  作者: fnro
13/25

野菜

 春から新社会人となり、東京へと出てきた。


 大学までは地元の愛媛県で暮らしていたが、就職活動中はいわゆる売り手市場と言われるようになっていたため、希望だった会社に就職することができたからだ。


 はじめての一人暮らしをを含めて不安がないと言ったら嘘になってしまうが、日々充実していた。ブラック企業なんていう単語に怯えていたが、幸いそのような会社でもなかった。

 とはいえ慣れない仕事を覚えるのはそれなりに疲れてしまう。土日はゆっくりしたかったのだが、歓迎会などがあったのでぐったりしていた。


 ようやく落ち着いた週末をのんびり過ごしていたら荷物が届いた。

 実家から野菜などを送ってくれたようだ。一人暮らしは野菜が不足しがちなんだからという親の気遣いだ。たしかに毎日自炊するのはしんどいので外食が増えてしまう。

 せっかくだから何か料理でも作ろうかと思っていると、手紙が入っていることに気づいた。


「わざわさ手紙なんて」


 そう呟きながら文面に目を通す。

 どうやら祖母が実家へ送った野菜があまりに大量だったからと書いてある。


「そんな言い訳しなくてもいいのに」


 気を遣っていることに対する照れなのだろうか。

 改めて「一人でやっていけているか?」とかそういうことを伝えるのは少々気恥しいのもわかる。自分も親に「ありがとう」と伝えるのが得意ではない。感謝しているのだが。


 次の瞬間、チャイムが鳴った。


 ドアを開けるとそこには野菜をたくさん手にしているばあちゃんが居た。

 そう、祖母は東京に住んでいるのだ。それも自分が一人暮らししているところと目と鼻の先だった。

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