世界の全てを知っている少年
彼は、生まれつき世界中にある全ての知識を知っていた。
だが、当然生まれた時から言葉を喋れたりしたわけでない。
両親は最初は普通の赤ちゃんだと接していた。
だが、その子どもが1歳になっときに両親に捨てられた。
なぜなら、彼は世界中にある全ての知識を知っていたからである。
彼はその後、養護施設に預けられてそのまま大人になった。
大人になる頃には彼は、モノの分別が付き、自分に世界中の知識があることは隠して生活していた。
世界中の知識がある彼にとって、学校や仕事などでは一切の苦労をせず、悠々とした人生を送っていた。
そして彼が仕事を退職し、老後の人生を歩んでいた時にふと、あることを思った。
この世界中の知識は、ただ持っているだけでは無駄ではないかと。
自分がこの知識を持って生まれたからには、神様が自分になにか使命を与えてくれたからではないだろうか。
その時の彼は70歳だった。その後、彼は90歳の死ぬ直前まで世界中の知識を書き留めた。
20年間、彼が書き留めたモノは、彼の親族らと大手出版社の協力により書籍化された。
その本は全4839巻にもなった。
巻数の多さから、10セットしか印刷されず、1セット800万円もの値段になった。
モノ好きの一部の人が買ったり、大きな図書館で保管されるために買われたり、10セットしかない本は世界中の様々なところに散らばり、さらにその散らばった先でも巻ごとにばらばらになっていった。
本の内容は、誰でも既に知っている当たり前の事から、普通の人じゃ到底理解できない物理学の知識まで様々だった。
中には、世界中から禁止とされている、殺人兵器の作成方法や、裏の組織の内部事情まで、世間では晒すことが不可能なこともたくさん書かれていた。
さらに、現代の科学では証明できない、異世界や死後の世界、宇宙の果てやなど森羅万象全て書かれていた。
この本を全て読めば神になれるとも言われた。だが、結局その本は世界から危険本扱いされ、1巻残らず全て消されてしまったのだった。
そんな中、本の作者の親族が密かにその本の原稿を家に隠し持っていた。
そのことが発覚し、第三次世界大戦が起こるのはそれから数十年後の話である。