虹の架け橋~汚れなき汚穢を求めて~
開会式が終わると出場番号が書かれた札を渡された。排泄者たちは解散し、皆準備に取り掛かる。
実演までの待ち時間、俺たちは舞台袖で他の排泄者を見物することにした。
「いくぜ!うんこトルネード!」
「秘技!うんこバンジー!」
「ゴールデンうんち!w」
それぞれの排泄者が今日のために溜め込んだ全ての力を出し切り、そのうんちの美しさに歓声が上がる。
排便を終えるごとに会場が湧き上がっていく事が分かる。
今まで俺はうんちを嫌い、忌避すべきものだと思っていた。決めつけていた。
しかし、この心を揺さぶるそこはかとない衝動は何なのだろう?
今、俺はうんちに感動していた。
確かに、うんちは臭くて汚くて馬鹿馬鹿しいものかもしれない。
でも、そんな馬鹿馬鹿しいうんちを何のためらいもなく、全力で、楽しそうに排泄するあいつらを見ていると、なんだか元気が湧いてくる。
一文無しで転生させられ、ギルドには安い雑用案件か危険な高難易度案件しかなく、ついさっきまでこれからのことが不安だった。
でも、今は違う。根拠も何もない自信と勇気が湧いてくる。今だったら何でも出来そうな気がする。
うんちって、こんなに気持ち良かったんだなぁ。
「さぁ!お次の排泄者はうんちっち村からやってきた男!ウンポッポだああああああああああああああ!!!!」
わああああああああああああああああああああああああ
とうとうウンポッポの出番がやってきた。大口を叩いてのお手並みを拝見してやろうじゃないか。
「へっ!高級肉を食い続けてきた俺のうんちは!まさに百獣の王!ライオンさんうんちだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶり
腹に溜めていた大量のうんちが解き放たれる。栄養バランスの偏った不健康なうんちからは重々しくドス黒い、負のオーラが放たれる。
こころなしか、うんちの匂いがこちらまで伝わってきた。それは空気を伝わってきたのか、はたまた、あまりの威圧感にそう錯覚したのか区別がつかなかった。
「気になる点数は・・・10点!9点!10点!、現時点での最高得点だああああああああああ!!!!!」
わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
排泄が終了し、ウンポッポがこちらに向かって来る。
「やるじゃねえか。だが、負ける気はねぇぜ?」
「へっ!面白い奴だぜ!お前の全力、俺に見せてみろ!」
ウンポッポはそう言うと、背を向けて手を振り去っていった。
「もうそろそろ俺の番だな。フィース、あれを頼む」
「了解です!」
・・・
「お次の排泄者は身元不明の異国の少年!ブチオォォォォオオオオオオ!!!!」
わああああああああああああああああああああああああ
とうとう俺の番がやってきた。俺は舞台に立つと、ベルトを外しズボンをズリ下ろし、地に背を付ける。
次に足を上げ、天にケツの穴を向けた。
目を閉じてケツを緩めながら、心の中で感謝の気持ちを伝える。
(いらないものを出してくれて『ありがとう』)
バシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
すると、ケツの穴から液状の虹が溢れ出した。
それはまるで、噴水のように光を放つ、設置式の花火のようだった。
わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
すげええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!
(前におっさんが摘んでいた虹色の花を食べ、水をがぶ飲み、さらに直前の浣腸での流動性の向上。どうやらうまくいったようだな。だが、驚くのはまだ早いぜ!)
目を閉じたまま手をギュッと握り、緩めていたケツを気張る。
そして、再び感謝の気持ちを伝えた。
(気持ち良く出てくれて・・・『ありがとう!!!!』)
プシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!
虹色の残り汁が水しぶきを上げ、落ちていく虹色の下痢とは対の方向に霧となって噴出された。
舞台と俺に雨のように虹が降り注ぎ、空には虹が架かった。
「いつしか雨は止み、そこには虹が架かる・・・これが俺のうんち!虹の架け橋だ!!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
「へっ!俺のうんちは力、奴のうんちは技で勝負したってところか・・・へっ!一本取られたぜ!」
「審査結果!10点!10点!10点!歴代初の最高得点だあああああああああああああああああああああ!!!!」
わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
今までに無い開放感、達成感を感じる。気づけば目から腸液が流れていた。
俺は放心状態で排泄の余韻に身を預ける。歓声と快楽に包まれるまま、ただ横たわっていた。
・・・
あの後の記憶は残っていない。意識が戻った時、最初に感じたのは便意だった。
腰を起こし、ベッドから足をおろした時には、既に元の世界に戻っていることに気づいていた。
素足のままトイレに入り、便器の蓋を開ける。
ズボンをズリおろし、腰を下として、ケツの穴を緩める。
ありがとう・・・・・
渕雄の目からは大粒のナミダがこぼれ、虹色のうんちが産み落とされた。