ぶりぶり
う~ん・・・
「うゔぅ~~~~~~~~~~ん」
ぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶりぶり
目が覚めるとそこには生い茂る木々と、筋骨隆々で脱糞中のおっさんがいた。
「何だこのおっさん!?」
「おっ、目ぇ覚ましたか!」
俺の声に気づいたおっさんは草葉でケツを拭きながら歩み寄ってきた。
「く、来るなっ!」
「来るなとはなんだ、俺は命の恩人だぞ?無防備に倒れてるところを魔物に狙われてたから助けてやって、しかも介抱までしてやったってのに」
そういうとおっさんは自分の腕を指差した。気づけば俺の腕には包帯が巻かれていて、止血した跡があった。眠りから覚め、意識がハッキリした今、少し痛みを感じる。あの神様少し雑なんじゃないか?
「お前さんも魔女にやられたのか?」
「魔女?」
「なんだ?あの魔女を知らないのか?」
おっさん曰く、最近ここ一帯で、魔王軍の四天王の一人である魔女が暴れまわっているらしい。行く先々の村を壊滅させ、殺戮の限りを尽くしているそうだ。
このあたりにはおっさんの故郷のボットン村もあり、魔女の噂を聞きつけて、急遽帰省をしたのだという。
おっさんに転生したことや、有り金がないことなどの事情を話すと、近くのデール村の宿で一緒に泊めてもらう事になった。
デール村の宿についた頃には日が落ちかけていた。
「そのイセカイテンセイってのはよくわかんねえが、カネがねえんだったら冒険者ギルドで稼ぐのが手っ取り早いな。命がけの仕事の割にハシタ金しかもらえねえが、身元がわからねえ奴でも雇ってもらえるぜ。ギルドはここの通りを真っすぐ行ったとこにあるから、登録してきたらどうだ?」
「何から何までありがとう!宿のお金も必ず返します!」
「いいっていいって。あと、くれぐれも無茶な依頼は受けるなよ?」
「わかりました!それではいってきます!」
そうして俺は冒険者ギルドへ向かうこになった。転生前の世界の服のせいか怪我のせいかわからないが、道中では周囲の視線を集めていた。あと、途中で犬の糞を踏んだ。
ギルドでの冒険者登録は名前を書くだけであっさりと終わり、冒険者の証であるカードを貰った。
ギルドのお仕事は至って単純。張り出された依頼から一つ選び、達成できたら報酬をもらう。
壁に張り出された依頼書を見渡すと「魔女討伐」「ブレイズドラゴンの角の収集」などの高額そうな案件から、「スライム討伐」のような初心者向け依頼まで様々なものがあった。剣も魔法もない俺は、手始めに難易度の低い「ウンコザウルスのうんちの収集」を受注し、おっさんのいる宿へ帰ることにした。
~次の日~
ウンコザウルスの生息地はおっさんの故郷のボットン村の付近なので、村までは一緒することになった。デール村を発ち、広々とした草原を歩いて行く。道にはパーティーを組んだ冒険者や荷物を積んだ馬車が通行している。今更だが、ここはテンプレファンタジーな世界のようだ。
「それにしてもなんでウンコザウルスのうんちなんて欲しがるんだろう?」
「それはな、ウンコザウルスのうんちは高級食材だからだ。ウンコザウルスの主食のブリの実の果汁を、胆汁や腸液でブレンドしたうんちには独特の甘みがあってな、珍味として一部のグルメに人気らしいぜ。ほら、あそこの芝生を見てみろよ」
おっさんが指差す方を見ると、冒険家が落ちているうんちを拾っては口に入れ、吐き出している。
「何やってんだあいつら!?ウンコ食ってるぞ!」
「あいつらもウンコザウルスのうんちを探してるんだろうよ。ウンコザウルスのうんちを見分けるには味を見るのが一番手っ取り早いからな」
(この依頼取り消そうかな・・・)
「おっ、ほら見えてきたぞ!あそこが俺の故郷、ボットン村だ」
気がつくと道の続く先には、木造の家々が並んでいた。村に近づくに連れ、倉庫や小さな畑、教会のような建物も見えてくる。建材に石が使われていて、道もある程度舗装されているデール村と違い、いかにも田舎という感じだ。
さらに歩みを進めると俺とおっさんはある違和感を感じた。人気がまったく無く、村中うんこまみれということに・・・。