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3話 システム

 世界の一端との同化。それが何を示すかと言うと。単純な話、大概の事は何でも出来る。簡単に言うと雨を降らせようと思えば簡単に出来るし、風を吹かせようと思えば吹かせられる。そう言ったモノ。


世界と言うシステムの一端に同化しまったオレは大概の事が出来る。その事が分かったのはオレが6年もの昏睡状態から覚めた直後で有った。その際、スピリタスからこの世界について様々な情報を貰っている最中に事は発覚した。この世界はどうやら定期的にこの世界から見て異世界人。つまりは俗にいう召喚者を定期的に呼び寄せているらしく、その起源はおよそ800年前から異世界人を召喚しているらしい。


 召喚者をこの世界では世界を流れて来た者「流界者るかいしゃ」。や単純に「勇者」。更には異なる世界の並外れた知識を与える者「異賢者」と敬意をもって呼ばれているらしい。主だって使われているのは流界者と言う名称らしく、スピリタスの6年もの月日で集められた情報の中は主に流界者の文字が見られた。


 流界者と呼ばれる者には基本的に日本で言うところに「チート」や「スキル」と言われる力が備わっていた。それらの力の総称は「権能」と呼ばれ、世界に召喚された際、召喚用の魔法陣に備わる「女神の祝福」と言われる、創生神である女神の力がランダムで流界者に与えられる。


力を与えられた流界者の目的は、時代によって様々であり、多種多様。各国のパワーバランスの為であったり、魔王を倒す。など。


オレがオレの力を知った原因は、過去に居た流界者が作ったとされるステータスと言う技術のおかげだった。このステータスは、どう見てもゲームの様でいて尚且つ理に適った仕上がり具合からいって、この技術を作り上げたのは現代日本人ではないか。この世界の過去に現代日本人が居たのでは。と言うのがオレの感触だ。


 ステータスは一種の魔法だが、その実、自身の魔力を消費せず世界に漂う無限の魔力を消費して発動される特殊魔法との事。使い方は簡単で、誰にでも扱える様に作られていて、魔力を扱う事の出来ない物は指輪やペン、ピアスと言った装飾品からペンと言った日用品の形態をとった道具を使う事によって発動する事が出来るようになるらしい。魔法を扱う物はそれらの道具を扱わなくても発動できる。とそうスピリタスから聞いた。


 何故にオレがここまでこのステータスの話をするのか。その理由はステータス自体に有る。

このステータスと言うのは、発動者によって画面の色が違う。それの何がおかしいのかと言うと、このステータス。自身の持ちうる力や、技能を相手に見せる為のモノだと言ってもいい。早い話が持ち歩かないでも良い名刺の様な物を連想して貰えば良い。


一般人なら白、何か特殊技能を持っている物なら緑、流界者なら蒼と言った具合に色分けされていて見せられた者がすぐさま分かる仕組みになっている。しかしどうやら全てが表示される訳では無いようで隠したい情報は隠せるらしい。


さて、どうしてオレがステータスの事に言及するかと言うと。このステータスの魔法。オレ場合画面が異なるからだ。さっきも説明した通り、流界者は蒼い画面になる筈のステータスがオレだけが黒く、文字が赤い。しかも何かしら文字化けしていて読めない。そもそも召喚者用のシステムなので転生してしまったオレには適応できなかった。と言うのがスピリタスの読みだ。現時点では何も分かっていないに等しい中、唯一ステータスの中で、読める部分が有った。それは。


「世界の一端と同化しています」


そう書かれた文字は、七色に輝き、その部分だけ銀色しろがねいろになっていた。


その原因であろうと思われる事柄をスピリタスに説明するとあり得ない。の一言で終わってしまった。


今からそのあり得ない力の一端をお見せしようと思う。




「ならば、我々に出来ない事など無いだろう」


 そう言ったスピリタスは踵を返してカウンターの内側に入ると、天井から吊るして有る呼び鈴を鳴らす。

しかし、何度鳴らせど変化は無い。


「余程研究に忙しいと見える」


 この店には、本来もう一人従業員が居るのだが、人前に出れる格好をしておらず、もっぱら研究要員件倉庫番として働いている筈なのだが。


「おい、スピリタス。何、呼んでも来ないの、アイツ。もしかしてアイツ頼りなのか」


「いや。作業が速くなるだけでやる事は変わらん。まあ良い」


そう言うとスピリタスは凪にカウンター内の棚にある空のフラスコと試験管を取らせるとフラスコの中に黒い塊を入れた。確かあれは。


「たしか。それシャドウヒューマンとか言うモンスターの素材じゃなかったか」


「そう。倒すのがめんどくさい奴」


 凪が首肯し、感想まで加えてくれた。オレは見た事無いが聞いた感じと勝手な想像で黒い人間型した化け物だと考えている。


「シャドウヒューマンの眼球を一つ。それに完全溶解液を30ml加えて良く攪拌かくはんする」


スピリタスは服の内側から取り出した一切濁りの無い透き通った液体が入った試験管を取り出し先のフラスコに流し込んでいくと。焼ける様な、溶ける様な何とも言えない音がして。黒い液体が出来上がった。


「これで闇に近いものが出来た。しかし今の状態では厳密には闇とは言えん。そこで一座。お前が情報を書き換え、そこに魔六を魔力を加えれば闇の出来上がりだ」


 黒くなったフラスコを指さしスピリタスはオレに言った。


「簡単に言うけどな、お前コレやって大丈夫なのか」


 ナニモノか分からない妙な液体を触りたくない。と言うかシャドーヒューマンと言う名前の物が原材料なら出来上がるのは影では無いか? 疑問を抱きつつふと視線を感じて後ろを振り向くと。影は期待で首を長くしていた。

比喩表現では無く、物理的に。マジでヤバイ悪霊かなんかに見えてきた。もう引くに引けない。


「これ」


影の状態に引いていると凪が一冊の本を差し出していた。題名は「バカでもわかる簡単魔法入門」。その本にはかなり読み込んだ形跡があり、ブックマークだらけになっている。


「この本のオブジェクト判定の項目に物質鑑定の魔法が載ってる」


多分オレを気遣ってくれた故の行動なのだろうが正直、有難迷惑過ぎるし、これで凪が勉強していたのも悲しい。バカでも分かるって。題名からして喧嘩を売っている。バーゲンセールだ。


 オレの悲しい視線に全く気にする様子の無い凪は、その項目を開くと見せてくれた。


 バカでも分かる物質鑑定! まず、魔力を漲らせて手に集めます。または眼に魔力を集中させて下さい。

それから、手をかざしたり見たりしてください。


終わった。入門とはいえ専門書風の本なのだから、このアバウトさと適当さは駄目だろう。これで出来るようになるってどんな感覚派だよ。


「な、なあ。凪。お前これで出来るようになったのか」


「うん。出来た」


「居たよ。超感覚派!! 分かるか!! 女子がやる簡単な占いじゃねえんだぞ!!」


「いらないの?」


小首を傾げて聞いてくる凪は心外と言わんばっかりに目を見開いていた。

「いらねぇよ。つーか使えねえよ。抽象的過ぎる。何書いてるか分からん。誰にでも出来るお呪いやってるんじゃねぇんだぞ」


「一座。眼だ。物事を見極めたいのならこう言え」


見かねたスピリタスが教えてくれた言葉を使い、フラスコを見る。


「我、見極める者なり。言の葉に従い我に明かせ」



 すると。感じる。と言うか見える。情報が直接眼見えて、空間に文字が浮かんでいる。

フラスコの中にの物は、原始たる混沌と言うらしくどろどろとしたモノが渦を巻き対流している。


教師役を奪われた凪は不満らしく頬を膨らましているが今のオレにはそれに構っている余裕は無かった。


情報が直接入って来るというのはかなりの負担らしく脳が沸騰するように熱く痛い。しかしその状態で無ければ変わっている様子が見えないため魔法を保ったままオレは空間に手を走らせステータスを開く。


すると空間に画面が浮かび上がり、部屋を黒と赤で染め上げた。読める文章はただ一つ。


「世界に同化」


すると、店内が雰囲気が一気に変わった。その様子に影は動揺を隠せないのか、震えている。


室内を黒い閃光が走り、オレを中心大気が渦巻く。立つのも困難な程の暴風の中、先程とは比べ物にならない程の情報がステータス内を駆け巡り空間に浮かび上がってくる。


「世界に介入。システムに接続、同化。情報の書き換えを行う。対象、原始たる混沌を闇へ変換開始。

変換後に、世界中で使われていない余剰魔力の内3%を変換後の情報へ」


情報の波となって押し寄せて来る画面をオレは空中で捌いていく。腕をせわしなく動かし、情報を選択して決定付けて書き換えて行く。莫大な作業量を、膨大な情報量を。物の数秒で書き換えて。腕を滑らせて画面を閉じる。すると先程までの暴風が嘘の様に止まり、日常が戻ってきた。 


 脳髄が焼け付く程の熱。腕が折れてしまいそうな痛み、フルマラソンを終始全力で走った様な疲労感がオレを襲った。倒れ込んでしまいたい。初めてこの力を使ったが、これ程苦しいならこれで最後にしよう。


 しかし、出来た。


目のまえのカウンタ―の上には 試験管に入った吸い込まれてしまいそうなほどの漆黒がなみなみと入っていて。その隣にもう一つ。錠剤状の黒い粒。二種類用意した。試験管タイプは一回使えばもう試験管が使えなくなるため、一応二種類作ってみた。


「出来たぜ。お客さん」


言って倒れ込みそうになるオレを脇から凪が支えた。それを見たスピリタスはオレが持って行くには困難だと判断したのだろう。スピリタスが影の所まで持って行った。


「ご注文の品だ。今回は急ぎの仕事だったから大分無茶した。次からはこんな作り方しないぞ」


「全くだ。次も疲労困憊でふらふらなられては困るからな。次回からはちゃんとした製作法を確立しておくとしよう」


スピリタスが同意して。私も一杯材料を取って来る。と凪が意気込む。


「スマナイ。カンシャスル」


スピリタスの差し出す試験管を影がその揺らめく黒の腕で受け取り、地面に叩きつける。


 すると。暗い、質量を持った暗黒が広がり影を包み込んでしまう。包み込んだ黒を、影が吸収し溶け合いながら、その儚かった存在をハッキリとさせていく。


「カンシャスル。コノオンハカナラズカエソウ」


黒い霧が無くなる頃には影はその存在を強くさせて、しっかりとしていた。


「よせよ。感謝されるのは嬉しいが、欲しいのは代金だ。あ~ええと、商品名何にするか決めて無かったな。良いか適当で。よし液化暗黒薬。これにしよう。液化暗黒薬の代金。スピリタス幾ら位が妥当だ」


 この世界の事は良く知らないため、異世界暮らしの長くまた薬品の知識が高いスピリタスに相談をかける。

「さあな。基本私は凪に買い物を頼んでいたため金額云々は詳しく無い。凪、お前なら如何ほど値を付ける」


肝心な所で役に立たないポンコツは凪に。


「じゃあ。金貨2枚。特別料金込みで」


凪の提案は、オレには高いのか安いのか良く分からないが、買い物担当の凪ががそう言うのならばそうなのだろう。

「じゃあ、金貨二枚。それにウチの店で警備として働く。これで良いか」


タシカニ。そう言って影は店を後にした。多分金を探しに行ったのだろう。きっと小学生が自販機の下を探る感じで。


 仕事は、終わったと言わんばかりにまた工房に閉じ籠るスピリタスを見送りながら独り言を言っていると。


「それは無い」

凪はそう言い切った。


何でそう言いきれるんだ。まあ。確かに金貨って位だから金なんだろ。そんなもんが簡単に落ちてるとは思えないけど、ほんの2、3枚位だろ? 案外有るんじゃ」


首を振り否定する。

「無理。金貨一枚あれば平民は1ヵ月。切り詰めれば2ケ月は暮らせる。そんな金額が落ちてるなんて考えにくい」


「お前はそんな大金をふっかけたのか!?」


「儲けの為。それに一座も頑張った」


良い子良い子と頭を撫でる手を振り払う元気も無いオレは甘んじて受け入れるしかなかった。



3話、どうでした? 一座ってなんか無敵って言うよりはズルイ気がする様な。


では、次話も何とか早めに上げようと頑張りますので。

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