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この異世界で魔導騎士になる!  作者: ABC_D
第1章:少年時代の物語
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第4話

 



 この村の名はオルカ。

 村の周りには高さ3m程の古い木製の柵が隙間なく並んでおり、

 所々で真新しい柵になっている。

 きっと朽ちたり魔物かなんかの影響で壊れたりしたのだろう。

 建物はほとんど木造建築で、

 同じような建物がいくつも並んでいる。

 これがこの村の一般的な民家なのだろう。

 そしてその中でも比較的大きい建物は何かの施設や店になっているらしい。

 村の中央付近に店舗が集中しており、

 様々な商品が陳列している。



「結構大きい村ですね。父様はこの村で随分お顔が広いようですけど、どうしてですか?」



 ルーカスは村に入ってから兵士の格好をしてる人や冒険者風の格好をしている人達から頻繁に話しかけられていた。



「いや~仕事柄あいつらとは知り合いでね。俺は騎士だからな、魔物や魔人は進んで討伐していかなければならない。それでこの村付近に出る魔物狩りの手伝いをしてるんだ。いくら狩っても沸いて出てな~群れで村を襲ってくるから放っておくと危険なんだよ」



「そうなんですか。あんなにたくさんの人に話しかけてもらえるなんて父様は人気者なのですね」



「久しぶりに顔を出した俺に皆が魔物に関する報告をしてくれていただけだぞ。母さんの体のこともあってなるべく家にいたからな。今日もできれば仕事をパスさせてもらうつもりだったんだが……」



「母様にあまり仕事を任せっきりにするのはよくないと言われましたか?」



「おお、よくわかったな! そうなんだよ。村の人が大変だろうからってさ。だから今日はノアを村に連れてくるついでに討伐の仕事もして来いって言われたよ。多分仕事が終わるまで俺と母さんの友達の家にお前を預けることになっちゃうんだがいいか?」



「もちろんいいですよ、父様! 村を魔物から守るなんてさすがは僕の父様です! 僕のことなんて気になさらずお仕事頑張ってきて下さい!」



「悪いな、村も案内してやるって言ってたのにな。でもそのかわりにこれから会う父さんの友達にちゃんとお願いしといてやるから。いい人達だからきっと喜んで案内してくれると思うぞ!」



「ありがとうございます! 父様と母様のご友人に迷惑をかけないよう細心の注意を払って行動しますのでご安心下さい!」



「まあ、ノアのことだしそこは全然気にしてないけどな。……ここだ、着いたぞ」



 ルーカスに連れられて中央広場から少し離れた民家の前に着く。

 そしてドアをノックした。



「ルーカスだ。クラート、リーザさん! いるか?」



 鍵を開ける音とともに中から夫婦が出てきた。



「おお、ルーカスじゃないか! 久しいな! クロエさんの様子はどうだ?」



「ちゃんと元気してるぜ。私は元気だから村で仕事して来いって言われたよ……」



「まあ、クロエさんらしいわね。ふふ。あれ?その子は息子さん?」



 リーザはルーカスの斜め後ろ立っている少年を目敏く見つけた。



「そうだ、俺が仕事に行ってる間こいつのこと頼みたいんだがいいか? こいつは初めて村に来たから案内もしてやって欲しいんだが……」



「ああ、わかった! 大事な友人の息子さんだ。喜んで預からせてもらうよ! いいよな、リーザ?」



「ええ、もちろんよ!」



 2人とも快く了承した。



「すまんな、ありがとう。ノア、お前を預かってくれるクラートとリーザさんだ。さっき話した通り、父さんや母さんの友達だ」



「はじめまして、ノアと申します。父様が仕事の間お世話になります。至らぬばかりにご迷惑をお掛けしてしまうことがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします」



「前から話は聞いてたけどこれほどとはな……」



 夫婦は2人そろって目を丸くしていた。



「……父様? なんのことです?」



「いやいや! 何でもないんだ! ここの家にもノアと同じくらいの娘さんがいてな。同じ年の子を持つ親同士いろいろと相談してたんだ。それでノアは小さい頃からとてもいい子だって話をしてたんだよ! そ、そうだよなクラート!?」



「あ、ああ! ノア君の話を聞いていたんだが予想以上に礼儀正しい子でびっくりしたんだよ!」



(俺はそんなに奇妙な子どもだったってことかな……やっぱりクロエやルーカスに心配かけてたんだな。申し訳ないことをしたな……)



 ノアが落ち込んでしまったのを見て大人達が慌てだした。



「ノア!? 俺はお前のことを誰よりも大事に思ってるし、母さんも父さんもノアのこと愛してるぞ! 本当だ! ただノアが小さい頃から何にも苦労がかからないくらいにしっかりした子だったから親としてこれでいいのか不安になってしまっただけなんだ!」



「そうだよ、ノア君! 君の父さんや母さんはいつも君のことを考えていたんだ! それはノア君のことを本当に大切に思ってるからこそだったんだよ? それは僕達も保証する!」



(あ、やばい。顔に出ちゃってたか。しかもさらに申し訳ない方向に勘違いされちゃってる……早くこの事態を収めなければ! 演技とかしたことないけどいけるかな……)



「そうだったんですか……父様や母様はそこまで僕のことを思って下さっていたのですね。僕はてっきり愛想を尽かされてしまっていたのかと……ずっと前から不安だったから…………ううっ……ぐすっうっ父さまぁぁ」



 ノアがルーカスにとびつく。



「ごめんな、不安なのはノアも同じだったんだよな……よしよし。母さんも父さんもちゃんとお前のこと大好きだぞ」



 ルーカスはノアを抱きしめた。

 クラートとリーザが涙ぐんでいる。



「親子の愛って本当に素敵ね」



「そうだな、俺達もエマをこれまで以上に大事にしてやろう」



 こうして、一件落着したのだった。



(いや~演技の途中から本当に嬉しくて泣いてしまった。俺は本当に幸せ者だな)



 ノアは改めて自分の中でクロエとルーカスの存在が大きくなっているのを実感したのだった。




「それじゃあ、ノア。行ってくる。終わったら迎えに来るからな。クラート、リーザさんノアをよろしく頼むぜ」



 そう言ってルーカスは頭を下げ、

 その場から立ち去った。



「それじゃあノア君! 家の中へ入ろうか。エマにも会わせたいし」



「そうね! お茶とお菓子を用意しなきゃ」



「お邪魔します!」



 中へ入ってから案内されたのはごくごく普通のリビング。

 リーザは無駄のない動きで着々とテーブルの上にお茶とお菓子を用意している。



「ノア君、ここに座って。エマー! ちょっと下りてきなさい!」



 クラートが呼ぶとショートヘアの女の子が下りてきてテーブルにつく。

 リーザも準備を終えて椅子に座った。



「紹介するね。パパやママの友達の息子、ノア君だ。エマと同い年だよ。今日は初めて村に来たから案内してやって欲しいんだ」



「うん、わかったわ! 私はエマ! よろしくねノア君!」



「僕はノアです。こちらこそよろしくお願いしますエマさん。」



「エマでいいよー! それより私もノアって呼んでいい? いいよね? そうするね! あと大人みたいな話し方しないで普通に話して?」



「は、はい! わかり……わかった! エマ、よろしく!」



 随分元気な子だ。

 しかも勢いがすごい。



「ごめんね~ノア君。エマは昔からこういう子なのよ。でもしっかりしてるから村の案内はきちんとしてくれるはずだわ」



「任せておいて! ばっちりよ! それじゃお菓子も食べ終わったし行ってくるね! ほら行こうノア!」



「う、うん! クラートさんリーザさん、お茶とお菓子ごちそうさまでした! それでは行ってきます!」



 丁寧に頭を下げ、慌ててエマを追いかけ外へ出た。

 その様子を見届けたクラートはリーザに問いかける。



「……ノア君は本当に6歳なのかな?」



「あなた、何をわかりきったことを……でもまあ気持ちはわかるわ。クロエがよく子育ての相談に来てたけど納得ね。ノア君は……そう、その立ち振る舞いや頭の良さのせいで子どもにみえないのよ」



「そうだな。話していて如何にノア君が聡明なのかが伝わってきたよ。将来どんな風に成長していくのやら。きっと大物になるだろうね」



「そうね。それより本当にエマに任せて大丈夫だったかしら? あの子しっかりしてるんだけどせっかちな所があるし」



「……きっと大丈夫さ! 心配しすぎだよ」



「そうだといいのだけれど…………」



 リーザの嫌な予感は的中していた。




「エマ! ちょっと待って下さい! もっとゆっくり歩きませんか!?」



「十分ゆっくりじゃない。それと敬語はいやー!」



「ごめん! でももっとゆっくり案内してくれないとどこがどこだか……。それにもう村一周して広場に戻ってきちゃうじゃないか」



「えーなんでわかんないの!? あんなに一生懸命案内してあげたのにー! ノアのばかー!」



「ええ!? なんで僕が悪いみたいになってるの!? ご、ごめんよエマ! 僕が悪かった……のかな?」



「まったくしょうがないなー! 今度村に来たときはゆーっくり案内してあげるわよ。もう遅いしルーカスさんもお仕事から帰ってくるだろうしね。説明してなかったところが結構あるから次はちゃんと教えてあげる」



(えー! じゃあ今までの案内は何だったんだー! ただ村を一周しただけ!? しかもまたこの子に案内されるのか……不安だ。すごく不安だ)



「……ありがとうエマ。今日は楽しかったよ! また来た時はよろしくね……」



「そうでしょ~楽しかったでしょ~えへへ。それじゃ戻ろっか、ノア」



 エマはとても上機嫌なようだ。

 ノアは素敵なお友達に村中振り回されて疲れてきっていた。


 そして2人が帰ってくるとリーザが心配そうに尋ねた。



「おかえりなさいエマ、ノア君。エマはちゃんと案内できた? ノア君を困らせたりしてない?」



「大丈夫よママ! 私に村を案内してもらうのが楽しくてまた最初から案内して欲しいって言ってたもん」



「そ、そう。最初から……ごめんなさいねノア君」



「い、いえ、とても楽しかったです。今日は色々とありがとうございました」



「ねえママ、なんで謝ってるのー? 喜んでくれたんだよ? 変なママーふふふ」



 エマがしばらく暴走しているとルーカスが帰ってきた。



「あ、父様! おかえりなさい。お仕事終わりましたか?」



「ああ、終わったぞ。ちゃんと村の案内をしてもらってお礼言ったか?」



「はい! もちろんです! エマに案内してもらって……とても楽しかったですよ!」



 クラートとリーザが苦笑い、

 対してエマは相変わらずご機嫌なようだ。



「そうかそうか! クラート、リーザさん今日は本当にありがとうな。エマちゃんもありがとう」



「いえいえー! ノア、それじゃまたねー!」



 ノアとルーカスは別れの挨拶をして家に帰っていった。



「エマ……次はもっとしっかりノア君を案内してあげないと駄目よ?」



「もちろんよパパ! 楽しみだな~、ふふふ」



「ノア君……ごめんね……」



 クラートはひっそりと呟いたのだった。







◇◇◇◇◇◇








 ルーカスとノアは無事に帰宅していた。



「おかえりなさいあなた、ノアちゃん! 初めての村はどうだった? 楽しかった?」



「……はい、母様! と、とても楽しかったです!」



「母さん、ノアのやつエマちゃんにすっごく気に入られてたみたいだったぞ! うちの息子はどうやら色男なようだ、ハッハッハ」



「あらあらそうなの? よかったわねぇ。ノアちゃんは優しいし頭もいいしかっこいいからモテモテなのね」





 親馬鹿な2人の発言にさらにどっと疲れてしまったノアであった。



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