第9話
朝、ノアは森の中の広場にいた。
ただ以前と違って1人ではない。
今朝はノアと戦っている同い年の少女と壁際に立つ6歳下の少女がいた。
「はあ!」
ノアは目の前の少女に向かって槍を振り下ろす。
少女は槍にしては短く穂の長いモノを斜め前に跳ぶことで避けた。
「しまった!」
ノアは槍の間合いの内側に入られ、首に刃を当てられて武器を捨てる。
「やったね! ノアの首を取ったぞー!」
「お兄様が負けるなんて……」
「ノアもまだまだね! 私に負けるなんて駄目じゃなーい。ロゼ、これからはこのエマ様があなたの先生よ! 私が色々教えてあ・げ・る」
広場にいたのは7歳になったノアの妹ロゼと幼なじみのエマだった。
ロゼはノアの聡明さ、強さ、礼儀正しさなど色々な部分に憧れていて、日々兄のような素晴らしい人間になるため努力を惜しまない、クロエに似た優しい目をもつ綺麗な少女だ。
エマは相変わらずな性格だが、昔と違い髪は長くなり後ろで一つに結っている。
それに手には銀色のロングソード型魔剣を握っていた。
自分が弱く、ノアに置いてけぼりにされがちな彼女はノアに教えを請い、必死に勉強したり訓練したりして魔剣を扱えるようになっていたのだ。
今も5年前に初めて習得した剣術を使ってノアの首に魔剣の刃を突きつけていた。
「僕の妹に何を教え込もうとしてるんだエマ。それに、負けたと言っても僕は魔力を使わないという剣術使用者相手には大きすぎるハンデ付きだよ? エマは5年間剣術の訓練を積んできているんだから白兵戦で僕が勝てないのは当然だ。調子に乗りすぎだよ、まったく」
そう、ノアは魔力を使わないでエマと戦っていた。
エマには身体強化があるので、適わないのは当然だった。
「しかもお兄様はまだ慣れていない槍型魔剣を使っていらっしゃいましたね。私、お兄様が負けるのを見るのが初めてだったので少しショックを受けてました。エマさん、あなたは勝って当然です! それにエマさんが先生なんて想像もつかないです……」
「ロゼ~! 最後のはどういう意味よー! まったく失礼しちゃうわ。誰に似たのかしら」
エマが黒く透き通った槍のような物を注意深く眺めているロゼの兄をジッと見る。
「それにしてもその槍変わってるわよね。槍で切りかかってくるなんてあまりしないわ」
「これはパルチザン型の魔剣だよ。普通の槍に比べて穂が長く、突きと切り両方出来るようにした短槍なんだ」
「よくそんな魔剣があったわね~。村で売ってるのは所謂普通のタイプの魔剣じゃない? あ、ルーカスさんが持ってたとか?」
「そうなんだよ。父様は魔剣コレクターだからね。エマのロングソード型の魔剣も同じような型の物が山程置いてあるよ……」
「だからってこんな高価な物いただいちゃってよかったのかな……」
「いいんだ。エマが魔力を使えるか試したいから何か魔剣を渡したいって父様に言ったら最初『10本ぐらいあげたらどうだ?』とか言ってたし。それに……いやなんでもない」
「それになんなのよ……気になるじゃない……ノアのばか」
エマは小声でボソッと聞こえないような音量で呟いたつもりだったのだが、ロゼが聞こえていたらしく、うふふっとこっそり笑う。
それでノアが何を言い淀んだのかというと、エマに魔剣を渡したいとノアが言うとルーカスとクロエがニヤリと笑い『エマちゃんのためなのね』とか『プレゼントを渡すときはだな~』とか長々と語られた時のことである。
エマにこんなに本人達がノリノリで魔剣を渡すことを了承していたんだということを伝えたかったのだが、こんな話をしたらこの場の楽しい雰囲気が破綻すると考え直し、言うのを止めておいたのだった。
「じゃあ勝負もついたことだし、そろそろ解散しよう。エマ、村まで送ろうか?」
「い、いいわよ! ここに来るときも魔物なんて余裕で撃退出来たし!」
エマはもう剣術を使えるようになったので、この森の魔物程度でてこずるなんてことはとっくに卒業していたのだった。
「そうだな。魔力も平気そうだし、それじゃあまたな」
ノアは家に向かって足を進めた。
「エマさん、ちゃんと素直にならないと駄目ですよ? それではまた」
ノアの後ろ姿を少し残念そうに見つめるエマにロゼが余計なお世話と言われるようなことを言って、兄の後を追い家の方向へと消えて行った。
「……わかってるわよ」
誰もいない森に虚しく独り言が響き渡り、少女の足音もその場から消えていった。
◇◇◇◇◇◇
「ただいまもどりました、お父様、お母様」
「あら、おかえり。さあ、朝ご飯にしましょう」
ノアはパルチザン型の魔剣を部屋に立てかけ、テーブルにつき、朝食を食べ始める。
「今日お兄様がエマさんに勝負で負けてしまったんです。もちろんお兄様は魔力を使わないってハンデ付きでしたが、お父様にもお母様にも勝ってしまうお兄様が負けるのをみるのが初めてでびっくりしてしまいました、ふふふ」
「例え魔力を使わなくてもノアはそこらの冒険者には負けないくらいの腕なんだがな。そのノアを打ち負かす程に剣術が使えてるのか……ノア、一体どんな風に教えたんだ?」
「どんな風って……魔導書に書いてあることの要点をわかりやすく教えただけですが?」
「お兄様? 普通あんな難しい本を全て理解することもその内容をわかりやすく言い換えることも出来ないんですよ? だってそんなことが出来るのは昔の大魔導士様達より遥かに優れている者だけですもの」
「ロゼちゃん、優秀すぎて常識という言葉を知らないお兄ちゃんにもっと言ってあげなさい? ふふふ」
「……そうでしたか。僕はもう少し常識を身につけなければならないようですね」
ノアは今まであまり気にしていなかったが、もう2年後には学園に入学するのだ。
学園であまり非常識な発言をしているとさすがに浮いてしまうので、もっと気を付けようと思ったのであった。
「そういえばノア、今度北の国オルケアで13歳から参加出来る大会があるんだが出てみないか? そこでは様々な種類の試合やいくつかランクがあるんだ。お前は一番低い13歳~15歳のランクにしか出られないが……色んな奴らが集まって来て多種多様な試合をするから観に行くだけでもすごく勉強になるし楽しいぞ。父さんも出てみようかと思っているんだ。それに……」
「試合に出た人が大会で好成績を残すと色々といいことがあるのよ……」
「多額の賞金ですか?あとは……コネとか?」
「な、なんでわかった!? 知っていたのか? いや、知る術などないはずだが……」
ルーカスとクロエは息子が知っているはずもない、大人な事情を知っていたので大層驚いていた。
「いや、そんな規模のでかい大会なら様々な人が来るはず。その中には当然大きな権力を持った者や有名な実力者、そしてそういう人たちと仲良くなっておきたい大きな商会の人たちなども……この家は騎士と魔導士の夫婦なのでお金には困っていないから、欲しいものはそういった仲良くなっておくと色々と有利になるような人たちとの繋がりかな……と考えただけです」
2人は言葉を失った。
ロゼは何故か目をキラキラさせて見てくる。
「えっと……皆さんどうかしましたか?」
「い、いや。そんな少しの情報でそこまでわかってしまうお前に驚いていたんだが……俺がおかしいのだろうか」
「いいえ、あなた! ノアちゃんがおかしいのよ! だからそんなに落ち込まないで!」
自分がそんなこともわからない馬鹿なのかと落ち込んでいるルーカスをクロエが息子がおかしいだけと言って慰める。
なんともノアがかわいそうな構図だった。
「お母様! お兄様はおかしくありません! 少し……いえ、とてつもなく賢いだけです! お父様はもっと頑張ってください!」
愛娘の一言で再び落ち込む父と慌てて慰める母。
そんなこの家庭の恒例行事も終え、ノアは話を元に戻した。
「父様、僕も出ます。この家族の役に立つことなら何でもしましょう!」
ノアは今まで自分のために苦労してきたクロエとルーカスに対して恩返しが出来るなら、
大会でちょっと目立つぐらい別にどうでもいいことだと考えていた。
「ノア、お前ほんとにできすぎだぞこのやろ~」
「ノアちゃん!!」
「お兄様……」
ルーカスが相変わらず馬鹿力で頭を撫で、
クロエがノアを抱きしめ、
ロゼがキラキラした目で見てくる。
そんな感じで忙しい朝食を終え、
ルーカスの稽古が始まる。
「父様、エマも誘ってみようかと思うのですが駄目ですかね?」
「ん~じゃあ今日稽古が終わったら皆でクラートのところに行ってみるか。でもなんでエマちゃんも誘うんだ?」
「エマには僕が一から魔力のことについて教えてきましたから……」
「だからなんだっていうんだ?」
「その……自分で言うのもあれなんですが、エマに常識を知って欲しくてですね。同じ年代の人の実力を……」
「なるほどな。ノアみたいなのが幼馴染なんだからそうだよな」
エマには規格外な少年が魔力を教えていたので、
既にちょっとこの世界の常識から外れてきている部分がある。
以前エマも学園に行くらしいということを言っていたので、
同年代の子どもがどの程度の実力を持っているかをわかっておく必要があった。
稽古も終わり、4人はクラートの家に向かった。
森の魔物は3人の実力者によって全滅させられるのではないかというくらいに次々と倒されていき、
村に着くころには実際にあまり魔物に遭遇しなかった。
そしてクラート宅に着く。
「おお、どうしたんだい、ルーカス? 家族そろって買い物に来たのかい?」
「まあそれもあるが、それより今日は3人を誘いに来たんだ。今度オルテアで開かれる大会に一緒に行かないか? それとエマちゃんはノアと一緒に出てみないか? 集団戦があったろ? 国で分かれて組むやつだ。ノアがエマちゃんも一緒にアースのチームとして参加して欲しいみたいだ」
「どうしようかリーザ、エマ。面白そうだし、いいんじゃないかな」
「私出てみたい! 自分の実力がどこまで通用するか試してみたい!」
「これは行っておいた方がよさそうね……エマは同じ年齢の子がいたら本気を出しちゃだめよ?」
「なんで? 負けちゃうよ?」
リーザはエマが出るのは13~15歳のチーム対抗戦であることを説明し、
本気を出したら相手が大怪我してしまうかもしれないということを念入りに言って聞かせた。
試合なのだから大怪我する者は毎年続出するのだが、このランクではあまりない。
「僕は試合に出ることが同じような年齢の人がどれくらい戦えるのかを知る、いい機会になると思ってるんだ。だからエマにも出て欲しくてね。あと2年後には学園に行くでしょう? その時のためにも常識を身につけておいた方がいいと思って……」
「なるほど~。確かに私はあまり周りのことを知らないわね……。ありがとう、ノア!」
エマはノアが自分のことを心配してくれたのが嬉しかった。
そして自分の力がどれほどのものか知るのも楽しみだった。
「決まりだな! 大会1週間ぐらい前になったら出発しよう。何があるかわからないし」
「え!? おい、ルーカス! あと数日で出ないとオルケアに着くころには大会が終わってしまうんじゃないか!?」
南端付近にあるアースから北端にあるオルケアに1週間で着くのは到底無理だ。
これは普通に考えればわかることであった。
ルーカスにそれがわからないとは思えないのだが……
「そうだよな~それが普通の反応だよな。よかった。安心したぞ、クラート」
うんうんと安堵の表情で頷くルーカス。
よくわかっていないクラート、リーザ。
「あ、そうか。パパもママも知らないのね? 私も初めて見たときはそりゃ驚いたわよ、あはは」
納得という顔で頷くクラート、リーザ、ノア以外の4人。
2人は相変わらず困惑しているが、ノアは苦笑していた。
「いや、僕も最初はびっくりでしたけどね。魔法ってなんでも出来るんだな~って思いましたよ」
「そんなことが出来るのはお兄様だけですよきっと……」
「一体どんな魔法を使えば1週間でオルケアに着くんだい?!」
そして痺れを切らしたクラートが問いかける。
「えっと……1週間もかかりません。一瞬です」
この子どもは何を言っているんだろうと訝しむクラートとリーザ。
アースからオルケアが一瞬など到底あり得ることではなかった。
「最近できた魔法なんですけど……光転陣といいます。光の魔法陣を自分の足元とどこか任意の場所に作り出し、光速で転移させる魔法です」
「へ?」「え?」
クラートとリーザは上擦った声を出してしまった。
それは仕方ないことであった。
魔法を作り出すことも信じられないことなんだが、
前からエマにきいていたからそれほどではなかった。
「……転移? そんなものが本当に出来るのかい……?」
「はい。大魔導士のエレナさんに教えてもらいました。なんか古い神殿に古代文字でそのような記述があったらしいです。そこからエレナさんの協力もあってすごく時間かかっちゃったんですけどできました」
ある日ノアは元の世界への帰り方を知るなら、
一番詳しい人たちに聞けばいいじゃないかと気付き、
エスト村のエレナの家を訪れた。
エレナはノアの光魔法の存在を知った日からずっと、
過去に忘れ去られた特殊2属性に関する研究に没頭していたのだそうだ。
ノアはエレナとミリーに自分の境遇をすべて話した。
ミリーは信じていなかったが、エレナはある神殿の研究資料に転生に関するものがあってそれが特殊2属性にも関係しているらしいと書いてあったのを思い出し、そこら中に散らばる紙の山からその資料を見せてくれた。
これはノアの転生と絶対に何か関係があると踏み、
その神殿に関する資料を全国の知り合い大魔導士たちからかき集め徹底的に調べた。
あまり大したことはわからなかったが、太古の昔、闇と光の魔法は1つだったこと。
その魔法は光、闇の単体魔法より遥かに高い効力を持っていたらしいことがわかった。
エレナはきっと転生魔法は太古の産物で、
13年前に光と闇の魔法を使える誰かが発動させたのではないかと予想を立てた。
そしてノアの魔力なら転生魔法を効力は低いが使えるのではないかとも。
それからノアにはエレナの家に通い転生魔法について研究する長い日々が続く。
5年の月日が経ったある日、どんな効果があるかわからないから絶対に使うなとエレナから言われていた転生魔法をノアは試しに使ってみた。
魔法陣で入口と出口を作ることは5年の研究でわかっていたので、
入口を作り、出口を元の世界のあの出来事があった場所を頭で思い浮かべながら使用した。
入口の魔法陣はできたが、何も起こらなかった。
自分の家、近くの公園、学校と色々試したが入口の魔法陣ができるだけで何も起こらない。
そもそも出口の魔法陣がちゃんとできているのかわからない。
そう思ったノアが目の前に出口の魔法陣を作って使用したところ、
体が光の粒子に変わっていき視界が真っ白くなった。
あの時と同じ感覚。
そして目を開くと目の前には使う前と同じような景色。
エレナの家の本棚だ。
失敗かと思ったのだが使用前と比べ少し移動していた。
試しにエレナのいる研究室を想像しながら使ってみると、
視界がまた真っ白くなり、目を開けるとエレナが目を丸くして立っていた。
それからエレナにこっ酷く叱られることになる。
もしまた赤ちゃんの状態でまったく知らないどこかに転生したらどうするつもりだと。
その後ノアが31年生きてきた中で一番怒られたと言ったらエレナが噴き出して笑った。
そんな体で31歳なら下手すれば140歳くらい生きることになるなと……。
でも試したおかげでわかったことがある。
ノアには転生魔法は使えないが、転移魔法なら使えたのだ。
エレナ曰く、光魔法だけでは効力が弱いために、
魔法陣から魔法陣へ転移することだけしかできないし、
元の世界にも干渉出来ないのではないかということらしい。
やはり戻るには光も闇も扱えるものに会うしかないのだということだ。
(まあこの話はエレナとミリーとの秘密だから言えないな……)
「大魔導士様と協力してつくったのなら転移もできるのだろうね……。それよりノア君は簡単に大魔導士様の名前を出したけど、本当はすごく偉い人のはずなんだが……」
「そうなんですか? エレナさんとは友達のようなものですよ?」
ノアはあんな田舎の村に住んでいるエレナだからそんなに偉い人だとは思っていなかった。
初めて会った時もロンドに呼び捨てにされていたじゃないかと。
「それはロンドの爺さんがエレナ様の命を救った恩人だからだろう。幼い頃に魔物に襲われそうになったエレナ様をまだベテラン冒険者だった爺さんが助けたらしい。それからエレナ様は爺さんに色々とお世話になっていたらしいぜ。爺さんが困ったときすぐに駆けつけられるように、大魔導士になった今でも北へ行かず昔からずっとエスト村に住んでるって聞いたこともあるぜ」
「へぇ~そうだったんですか」
ルーカスが疑問に答えてくれた。
「話が逸れちゃったね。とりあえず転移魔法が使えるにしても、いきなり行ったことがないオルケアに行けるものなのかい?」
「行ったことがあるんです。転移魔法でどれくらいの距離移動出来るか気になっちゃって……」
ノアは転移魔法のことを調べるために色々なことを試していた。
行ったことがない、頭の中で詳細に転移先の風景を思い描けない場所は転移出来ないらしい。
あと転移魔法はこのヘリオ大陸内の距離ならどこでも行けるようだ。
それを調べるためにノアは身体強化を限界まで発動して、
アースから一番離れたオルケア目指して毎日少しずつ近づいていった。
一度行った場所を正確に思い出せれば転移出来るので、転移先を徐々にオルケア側に移していったのだ。
オルケアに向かって走り、遅くなる前に転移で家に帰る。
そして翌日に昨日最後にいた場所に転移し、そこからまた身体強化で全力疾走をひたすら繰り返した。
ノアはアースからネイロに行き、そこからオルケアにという進路をとった。
だからノアは今すぐにでもネイロとオルケアには転移出来るのだ。
「ははははははは……」「ふふふふふふ……」
「パパ、ママ!? しっかりして! 現実逃避しないでー!!」
クロエ、ルーカス、ロゼ、エマは毎日徐々に近づいていく過程の報告を聞いていたからまだいいが、
クラートとリーザはいきなり大陸の端っこまで走って行ってきたという少年の言葉を受け入れられなかった。
娘や友人の必死なフォローで現実に戻ってきた2人は精神的に疲れ切ってしまっていたようだった。
想定外のことを受け入れる耐性が低いのだろう。
クロエ達は規格外な少年と毎日会っているので慣れてしまったが、
クラートとリーザはエマが8歳で銀色の魔剣を振り回してるのを見て、気を失ってしまうくらいらしい。
そしてノアたち4人はエマたち3人に別れを告げ、とりあえず今日はお暇することにした。
◇◇◇◇◇◇
「悪いことをしてしまいました……」
村で買い物を済ませ、家に帰る途中の道でノアはそんなことを呟く。
「大丈夫だ! そりゃ最初はびっくりするさ。時間が経てばなんでもなくなる。俺達はそうだった! 気にするな」
「そうですよ、お兄様! クラートさんやリーザさんがお兄様のすごさについていけてないだけです!」
「そうよ、ノアちゃん!」
ルーカスがガシガシと頭を撫で、
クロエがノアを抱きしめ、
ロゼがさっきからずっとキラキラした目で見てくる。
(なんだこれ、デジャヴだ……)
今日も相変わらずこの家族は平常運転であった。