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ティナはウォートレスたちと話しながら、門を後にした。
記憶力はいいため、ティナは来た道を迷わず戻っていた。
守護精たちはティナと話しやすいように姿を現していた。ティナを中心に右にウォートレス、左にウディネスとサンデリーが浮いていた。会って間もない四人だがすぐに仲良くなった。
「ウォートレスたちって、さっき生まれたんだよね」
『うん。それが?』
「なんか、あまり年が変わらないように見えるから、聞きたくなったの」
『そうね、私たちには年齢という境界線がないから。あなたがこうなってほしいという願いからこの姿なの』
ウディネスが優しく答えた。
「それなら、今は、ウォートレスと私って同じぐらいかな?」
『そうかも。ウディネスは?』
「年上っぽい。お姉さんって感じかな」
『サンデリーは?』
「妹……かな」
『それじゃあ、私たちって姉妹?』
「姉妹みたいな友達?いい響き」
『そうだね。でも、どうして?』
サンデリーが聞いた。
「ん?だって、私、一人っ子だし……ってまだ、わたしの事話してなかったね。自己紹介しよっか」
『お願いします』
「私、ティナ・ローレンスは、ナルティノのお姫様で、城には私より年上の人がほとんどなの。だから、うれしくって、ね」
『そうなの?なんか、すごい人と巡り会えたみたいね』
「私もみんなに会えてよかった。今日もいい日になりそう」
「それは、どうかしら?」
話に夢中で目の前にいる人たちに気づかなかった。
いかにも怪しい、二人組がいた。
露出度の高い服を着た女性。そして、顔のすべてを包帯で巻き、それでいて、目がニつなのに場所が違う人がいた。
守護精たちはすぐさまペンダントの中に入った。
「そんなに警戒することないのにね、ちょっと悲しいわ」
「あなたたち、誰なの?」
「私、セレナーデ・アパレー。この人は、ユングね。あとサリー・リンクっていう女の子とレイユ・ボーディっていう少年がいるわ」
「で?」
「あなたを殺しにきたの」
「殺しに……って」
「そう、あなたを……ね」
セレナーデはティナを直視した。
ティナは動けなかった。セレナーデがティナを見る、その威圧感に――。
その話が本当なのかも分からない。ここから逃げ出したい。でも、背中を見せれば絶対に殺される。自分から目を逸らさせて、逃げる。それしかない。
「どうやってこの中に入ってきたの?」
「どうやってと言われてもねー、ユング」
「この者に言うことはありませんぞ、セレナーデ様。もうすぐ死ぬのですから」
「だってさ、ティナちゃん」
「どうせ、裏道とか言って、無理やりこじ開けてきたんでしょ」
「企業秘密とでも言っておきましょうか。そういえば、ユング。あの二人はまだなの?」
「もうすぐ来るとは思いますが……」
ユングがそう言うと、すぐに後ろから声が聞こえた。
「呼びまして?セレナーデ様。サリー参上しました!!」
「俺もいる」
サリーと名乗った人は赤髪で先がくるっとカールしていてこの人も露出度が高かった。最後の一人は名は名乗らなかったが、セレナーデが言っていたレイユなのだろう。銀髪ですらっとした長身。まだ、四人の中では普通だった。
この人たちはナルティノの者ではないと思った。自然界では一部、妖力を持つ種族がある。それを、妖怪という。特徴は耳が尖っていること。そして、レイユとサリーも耳が尖っていた。だが、妖怪という風には見えなかった。なぜかと聞かれても答えられない。ただ、そんな気がした。他にエルフという種族がある。二人は、エルフだと思う。あとの二人はよく分からない。
「あんたたち、遅いのよ」
セレナーデは機嫌が悪そうだった。
「遅れさせたのはセレナーデ様だろ?」
「それは不可抗力というモノよ」
だんだん、言い争いになるのが見えた。それを見計らってウォートレスはティナに話し掛けた。
『ティナ、この人たち危険だわ。殺しに来たって言うのは本当だと思う』
ティナは四人に気づかれないように小声で言った。
「私もそう思う」
『まだ、今の状態ではあの人たちに勝てるとは思えないわ。でも、負ける必要もない』
「分かってる。剣は持ってるけど、四対一じゃ勝てるか分からないし」
『そうね。――今のうちにあの人たちが言い争ってる間に逃げなきゃ。何か仕掛けられても、逃げて。あなたをガードすることぐらいは、自分たちの魔力でなんとか出来るし……』
「なんか、私って、足手まといみたい」
『何言ってるの、私たち……友達でしょ』
「そうだね。頼りにしてる」
『頼られます。でも、すべての攻撃からあなたを守れるか分からないの』
「大丈夫、逃げるのは得意だから。たぶん」
『曖昧なのね』
「自信ないから」
『弱気言う前に逃げなきゃね。でも、真正面にはあの人たちがいる。後ろは論外。ということは、右か左。』
「木々の中を行くしかないと」
『それに、攻撃も当たりにくいだろうし』
「そうだね」
ティナは右、左と目を向けた。しかし、どう見ても、どちらも変わらないため、初めに見た右に行くことにした。
「右でいい?」
『ティナに任せるわ』
「それじゃあ、右に決定」
ティナはヨニンがこちらを見てないうちに右へ走り出した。
「って、言い争っている場合じゃないわ。ティナちゃんが逃げちゃったじゃない」
「それは、セレナーデ様が……」
サリーが困ったように言った。
「そんなこと言ってる場合じゃないのよ!!」
セレナーデはティナが逃げた方を指して、三人に命令した。
「殺しちゃいなさい!!」
ユングとサリーはティナを追いかけたが、一人だけまだ同じ場所にいた。
「レイユ……あんたも行くの!!」
セレナーデはレイユの頭を叩いた。レイユは頭をさすりながら言った。
「人使い悪いよ、セレナーデ様。行けばいいんでしょ、行けば。でも、すべて、計画通りなんだろ?」
「そうかもしれないし、違うかもしれないわよ」
セレナーデは微笑した。
「そうですか」
レイユはため息をつき、ティナが走っていった所へと向かった。あとから、セレナーデも続いた。