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ティナはすぐに目を開けると、もう池から出ていた。そして、目の前にはティスノがいた。
「リューイ、いえ、ティナ・ローレンス。あなたは水の魔法使いとなりました」
「私、魔法使いなの!?」
「三つに分かれているのはご存知ですね」
「はい」
「魔法使いの場合、剣の結界に阻まれます。剣使いの場合、剣を抜くことが出来ます。銃使いの場合は、底に着いても何もないんです。そして、ここでは、水の守護精が登場するわけです。守護者、守護精、精霊、そして、妖精、一人一人が生きていて、それぞれ『名前』と『姿』と『魔力』が与えられているんです。例えば、風なら風の魔力が、火なら火の魔力があるわけです。そして、名前を与えるのがあなた方です」
「だから、私は水の魔法使いなのね」
「そうです。では、ティナ、これを」
ティスノは手を出した。ティスノの手のひらには、ペンダントがのっていた。
「これは、イルカを基調にしたペンダントです。首に掛けておいて下さい。そして、大切にして下さいね。では、あなたに合う杖を作りましょう。普段はペンダントの中に入っています。ではティナ、両手を掲げて」
「分かりました」
「この地において、守護精ウォートレス、ウディネス、サンデリーの契約者、その名をティナ・ローレンス・リューイ・ノーザン・グランドール。彼女の力において、姿を現せ!!」
空気が一瞬凍りつく。白い雲のようなものが渦を巻き、空気を動かす。風が吹き、形を成していく。見た目は細い棒だった。手の上に、金色の光に包まれた杖があった。ティナに丁度いい長さで、先は細い丸わくに星の形が形成されていた。
「ティナ、杖を取って」
ティスノに言われて、ティナは杖をつかんだ。一瞬、頭がクラッとしたと思うと、眠気が襲ってきた。
すると、杖がペンダントに吸収された。
眠気のせいで倒れかけたら、ティスノが支えてくれた。
「あなたの魔力はまだ少ないようですね。もう少し待ってから、もう一度試して下さい」
「分かりました」
「あと、杖を出す時の呪文は自分で決めてくださいね。それと、この杖は、三角形が基本ということを覚えておいてください。それでは、ティナ、そこの鏡に顔を映してみて下さい」
ティナは体を起こして、素直に鏡の前に行った。
壁に掛かっていた鏡はここに入った時は気づかなかった。縁につるのようなものが巻きついていた。ティスノは鏡に映らないようにティナから離れた。
「ティスノ、何があるの?」
ティナは後ろを向いてティスノに聞いた。
「立っていれば分かりますよ」
すると、鏡に紫色の煙が現われるとこんな声が聞こえた。
『わが名は、カースモ。そなたの未来の占いを行う。信じるか信じないかはそなた次第じゃ。まずは、聞くがよい』
ティナは黙って聞いていた。
「そなたの前に龍族の者現れて、力を貸すだろう」
「……それだけ?」
「それだけじゃ」
「龍族って何者?」
「分からん」
「それって、占いになるの?」
「なる」
「そう……なんだ」
ティナは飽きれていたが、少し信じてもいいかなっと思った。
「ティナ、そろそろ帰る時間ね。私たちのこととか忘れてしまうけれど、また会えるといいわね」
「そうね。ありがとう。それじゃーね、ティスノ。あと、カースモも」
返事は返ってこなかったが、ティナは手を振りながら、トンネルを抜けていった。
門を出てから、ウォートレスの声が聞こえた。
『私たちはペンダントの中にいつもいるわ。話しかければ声も聞こえるし、姿を現すこともできる。杖を出せば、私たち【水】【木】【雷】の魔力を使える。そして、ティナの魔力が強くなるほど、仲間も増えていくわ』と。
ティナが門を見ると、アクアマリンがいたので聞いてみた。
「ウォートレスに従い、尽くしなさいって言ったのは、私を試すつもりだったりして」
「それもありますし、ウォートレスにもわかって欲しいというのもあったんですよ」
「なるほど」
「ティナ、わらわからあなたに言うことがあります。わらわたちはここからは何もすることが出来ない。ここから離れれば、何があるか分からない。自分の身は自分で守るのです。一番危険に会いやすいのは、魔法使いらしい。ティナもそうよ。気をつけて帰りなさい」
「心配してくれてありがとう」
ティナはアクアマリンに軽く頭を下げると、門を背にして帰っていった。
この先、何があるかも知らずに。