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リューイはいつも早起きで、だいたい六時前ぐらいに起きて、ケインと稽古している。そして、今日もケインに付き合ってもらった。
朝食は、母が腕によりをかけて作るわと言って、作っていた。料理長に無理を言って。
母が作ってくれた朝食は、とてもおいしかった。
リュ-イは、ジーパンに手が隠れるぐらいの袖のTシャツとベストを着たラフな格好で、腰に剣が付いたベルトを巻いて、そして、行ってきます、と皆に言って城を出発した。
精霊の森は、自然界をぐるっと囲んでいて、関係者以外は入れないように、結界が張ってある。城を背にして村を二つ越えたところにそれはある。この道は、城から一番近い道で、ケインと一度来たことがある。入れるわけがないのに。ケインが、この道を覚えてたらいつか役に立つよ、と言っていた。それはこのためだったのかと、ケインに感謝しながら、精霊の森を眺めていた。
リュ-イは、考えていた。木と木が入り組んでいて道が無いのだから。試しに右手を森の中に入れてみた。
すると、いきなり、誰かに手首を掴まれて森の中に引き込まれた。
目を開けると、目の前には道があり、さっきの風景が、後ろにあった。
まわりを見渡していると、男の子がいた。リューイよりも年下のようで、無邪気な顔が可愛かった。
「君が、引っ張ってくれたの?」
リューイは、男の子に聞いた。
「そうだよ。ボクの名前は、ジュナキっていうんだ。君は?」
「私は、リューイ。ここって、精霊の森の中?」
リューイは周りを見渡しながら言った。
「そうだよ。ようこそ、精霊の森へ。リューイ、ボクが、門まで案内するよ。でも、道のりは長いよ、覚悟してて」
「分かった」
リューイは、ジュナキに礼を言って、後ろからついていった。その道のりは、本当に長かった。休憩を入れながら、途中、ジュナキに、大丈夫?と聞かれたが、大丈夫、と言ったりもした。ジュナキが、急に止まってリューイの方を見た。
「リューイ、ボクが案内するのはここまで」
ジュナキは、すぐにリューイの視界から消えてしまった。ふと、空を見ると、青い鳥が飛んでいるのが見えた。
リューイが目線を戻すと、門があった。門は何でできているか分からなかったが、いろんな模様が刻まれていた。その中に細かく字が書かれていたが、読むことは出来なかった。そこまで進んでいくと、風が吹いてきて、絹のような布で出来たドレスを着た女のヒトが立っていた。肌が白くて綺麗な人だった。
リューイは、見とれていた。
「わらわは、門番のアクアマリンである。そなたの名は?」
「リューイ・ノーザンといいます」
リューイは、ほほ笑んでみた。
アクアマリンは言った。
「素敵な名前であるな。両親が付けてくれたのか?」
「はい」
「そうか。では、中にお入りなさい。ここからは、ティスノが案内してくれる」
門が開いて、リューイが中を見ると、アクアマリンが言っていたティスノが出てきた。
ティスノは、メイドさんのような服を着ていて、お姉さんみたいな感じだった。
「どうぞ、お入り下さい」
ティスノが言ったので、リューイは、前に進んだ。
入ってみると、トンネルのように長く、辺りは、小さな光がぽつぽつとあるだけだった。トンネルを抜けると、そこは、別世界だった。森の中に森という感じで、精霊の森と同じような森がそこにはあった。
ティスノが言った。
「ここは、私たちが作った空間で作った森です。前に池があるでしょう。この池に潜ってもらいます」
「はい」
ビックリしたのは当然だが、何があるか分からない場所だ。素直に答えた。
「池に何があるのか言うことはできませんが、池と言っても、筒状になっていますので、真下に沈んで頂ければ大丈夫です。リューイさんは何分ほど潜っていられますか?」
「十二分二十三秒が最高ですけど……」
リューイは、何も付けずに潜ることが得意で、薄い服を着て、魚と戯れたり、太陽の反射のきらめきが好きだった。
リューイは、ティスノを見た。
「それなら、大丈夫だと思います。いってらっしゃいませ」
ティスノは、深く頭を下げて、リューイの背中を軽く押して、池の前に立たせた。これが、ケインが、言っていた試験なのかと思いながら、リューイは立って、池の中へ飛び込んだ。
リューイが池に入ったあと、ティスノはこんなことを言っていた。
守護精は、あなたの心、純粋さによって、作り出されるのです。だから、あまり詳しいことは言えないのです、と。
その近くの木に青い鳥が居た。