巨峰と有明の月
掲載日:2026/10/29
少しずつ言葉をなくしてゆく夜を集めて
何かが実ればそっと窓辺に置いておくよ
蜜柑、林檎でもなくて
葡萄がいい
シャインマスカットじゃなくて巨峰がいい
苦さを包むような甘さと夜空の藍色
雨に洗われた月の雫
オリオンもおしろいをしたような輝き
星座の合間を走る鉄道の動音
アルプスの氷河の一角さえとけ崩れてゆくなら
このままふたりで凍ったままでいたい
永遠に
少しずつ言葉をなくしてゆく夜を集めて実らせた
巨峰の一房を
目を閉じたままの君の口元まで運ぶよ
目覚めた時にたべてほしい
わたしのくちびる読むように
ひと粒 ひと粒を口にして
あの時の切なさ 悔しさ 愛おしさが
満ちてゆけば
あなたの口元から解け出す有明の月の夢をみさせて




