表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話  作者: TB
後日談SS

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/134

第98話 後日談SS 教祖様と聖女様

(坂内美穂)


 もう岩崎さんが居なくなって一年が経った。


 私は、現在IWASAKIホールディングスの討伐班の責任者として、東雲さんと共に世界中で溢れたモンスターを討伐する民間組織に所属している。


 そのせいで毎日がとても忙しいわ。


 【DIT】の所属だと、どうしても日本の政府組織に成るので、海外でのモンスター討伐と言えども武力行使に携わるのは色々な問題が起こるの。

 

 問題は殆ど野党の上げ足取り理論なんですけどね。


 そこで、国内は【DIT】で問題ないとして、海外からの討伐要請は【IDCO】を経由した依頼に限定されるけど、IWASAKIホールディングスの討伐班が事業として請け負うことになってる。


 殆どの国は、疲弊して支払い能力も無いのだけど、IWASAKIホールディングスでは依頼国の国土の所有権で討伐を請け負っているの。

 

 二ヶ月前には待望の赤ちゃんも産まれたわ。

 3250gの元気な男の子だった。


 パパに似てるかな? 今日も出勤前にオッパイをたっぷりあげて、夢さんに預けて出勤した。


 今日はサハリン島と、カムチャッカ半島の開発事業の打ち合わせで、IWASAKIホールディングスの本社に訪れている。


 ◇◆◇◆ 


 ロシアでは現在、全く復興を行う余力が無く、モスクワ防衛都市の周辺開発を行う事のバーター取引で、ロシアの領土の東半分をIWASAKIホールディングスが取得している。


 既にロシアの人は誰も住んで居ない土地ではあるが、領土は絶対に手放そうとはしない。

 あくまでも、ロシアの土地を購入した形である。


 開発には、溢れ出したモンスターの討伐をを伴うので、リスクの高い取得ではあるが、世界中に電気を送電する為に、取得へと踏み切った。


 この取得により、ユーラシア大陸全体に送電事業を行う事も可能となり、IWASAKIホールディングスの資産は増え続けている。

 既に世界全体の電力需要は90%以上を、北海道の大規模魔導発電施設が賄っており、正に世界のエネルギーを支配していると言っても過言では無い。 


 サハリン島経由で、ユーラシア大陸へ送電するルートと、千島列島経由でカムチャッカ半島へ渡り、アリューシャン列島を経由して、アメリカ大陸へ送電するルートの二つの大動脈が、世界のエネルギーを支える事と成る。

 

 唯一と言っても良い【DIT】研究所の成果であるダンジョン銅と、ミスリル銀を配合した送電ケーブルは、電圧の低下を起こすこと無く、どんなに長距離であっても、安全に電力を供給できるので、世界中で利用されるようになっている。


 ◇◆◇◆ 


 話は戻るけど、サハリン島にはダンジョンが発生してなかった為、当初は安全な島だったんですけど、冬季に流氷で陸続きになってしまったせいで、結局は大陸本土と同じ様にモンスターが存在する状況に成っている。


 私は、参加メンバーを前にして話し始めた。


「今回は、ユーラシア大陸へのケーブル設置事業の一環としてサハリン島のモンスターは全て駆逐し、生活可能領域にする計画です」

「事前調査に行った討伐班からの報告で、人の存在が確認されたようです。ただし、元々のサハリン島の住民とは思えない、中東系の人種が中心で、宗教活動のような祈りを捧げていた姿が確認されています」


「モスクワに確認した所、サハリンにその様な人物及び団体は、はロシアの支配下に在った当時には、居なかったので、不法滞在者で間違いないと言うことです。モンスター討伐と並行して、不法滞在者としての拘束を行い、【IDCO】経由で出身国への強制送還の措置を行いたいと考えます」


 鹿内さんが、「方針としてはそれでいいんだけど、相手が宗教になると、少し面倒くさいことになりそうね」と言った。


 恐らく日本に居た、不法滞在で討伐を行っていたグループが、斎藤ギルマスの打ち出した、不法滞在者の強制退去政策で、日本から脱出して潜伏したのだろうとの予測を立てた。

 議論だけでは、実際の所が解らないのも事実なので、早急に討伐班を送り込み対処することになったわ。


 翌日、早速二百名に登る討伐班が、転移門を使用してサハリン島に渡った。


 メンバーは、四班に分けられ、一班は私、二班は東雲さん、三班は森本さん、四班は三浦君がそれぞれリーダーとして、四十名ずつを引き連れ、散開した。サハリン島を南から北へ向かって、ローラー作戦で殲滅と、整地を同時進行で行っていく。

 鹿内さんも四十名の人員を手元に置き、問題が起こった部隊にすぐに合流できるように待機している。


 IWASAKIホールディングスの討伐班は一般探索者から募集して編成された。


 参加資格が最低レベル百以上の探索者たちだから、ある程度は対応できるわ。

 装備や消耗品を会社が負担するので、リスクが少ない探索が出来るため、団体行動が苦手じゃない人に取っては、かなりの人気職種になってるの。


 収入も個人で討伐を行う同一レベル帯の人達の平均よりは、かなり高い。

 福利厚生や怪我をした場合の社会保障もIWASAKIホールディングスが責任持って行うから、安心できるよね。


 URの収納バッグは、所有権自体は岩崎さんの物なので、基本は私達が管理して、国が必要な時に貸与するという形になったの。

 今回の討伐でも大活躍しているわ。


 サハリン島はとても大きな島なので、今回の制圧は二か月の長期間に渡る予定を立てている。

 面積はほぼ北海道と同じ面積を有し、南北は実に九百四十八キロメートルもあるので、それでも一日辺り二十キロメートルにも渡る区間を討伐して行く。


 事件は討伐を初めて三週間目に起こった。

 大規模なモンスターの群れを確認したので、四班全てに集合をかけ、鹿内さんも、予備隊と共に参戦してきたわ。


 モンスターの数は千匹以上は確認されていて、サハリン島中央部を蹂躙していたの。

 モンスターが進む先には、報告に在った中東系の人達が確認できたわ。

 結構人数も多い。

 拘束対象ではあるけれど、人命を見捨てる選択もできないので、助ける方向で部隊を展開したの。


 相手の数が多い時は、ほぼ鹿内さんの独壇場ね。

 次点は私かな? 以前ならスキルでフェニックス召喚とか出来たけど、今は聖属性の範囲魔法が使える程度だけどね。

 それでも、私は聖女と聖騎士と賢者のJOBを持っているので、一対一から多数を相手する場合まで、苦手なシチュエーションが存在しない。


 最も得意なのは、勿論回復だけどね。


 既にモンスターは、滞在者に襲いかかっていた。

 私達はモンスターを牽制しながら、大きく回り込み、襲われている人々の後側から入れ替わるような形で、モンスターに対峙した。


 この形で展開しないと、殲滅系の魔法を使うと、この人達にも攻撃当てちゃうしね。

 人々の保護さえ出来れば、後は全力で殲滅するだけだ。

 二時間程の戦闘で、ようやく終局を迎えたわ。


 残りの殲滅は、東雲さんと森本さんに任せて、私と鹿内さんは、ここに滞在していたグループの人達と話す事にした。


 全部で五百人くらい居る。

 思った以上に多い。


 三浦君に私と鹿内さんの連れていたメンバーも任せ、周囲を包囲してもらっている。

 又逃げられても困るしね。


 代表者は誰なのかを尋ね、豊かな髭を蓄えた、いかにもな中東風の相貌をした男性が出てきた。


 私は、まず怪我人を私の前に一箇所に集めるように伝えた。

 半数以上が怪我をしている。

 中にはこのままでは、絶対に助からない様な怪我をした人もいる。

 明らかに未成年者や、幼い子供も居た。


 私は、範囲回復魔法を発動し、全員の傷を癒やした。

 それに被せるように、鹿内さんが洗脳系の特技を発動し、全員が私達二人に対して、ひざまずく様な姿勢になった。


 更に範囲魔法で完治しきれなかった人達を、一人ずつ額を触れながら、聖女の特技で治療していく。

 欠損以外であれば、今の私に直せない怪我は無いわ。


 怪我をした人が居なくなったのを見計らって、鹿内さんが教祖の特技【神言】を使って話し始める。

 この特技を使って話をすると、耐性の無い人は逆らえないし、嘘をつく事が出来ない。


 私達の中でも、レジストできるのは私と東雲さんと島長官と斎藤ギルマスくらいだわ。


 その状況の中で聞き出した情報は、概ね予想通りだったけど、犯罪者集団と言うよりは難民と表現したほうが良いわね。

 行き場のない人たちが、僅かな希望を持って必死で生きながらえている。


 鹿内さんが、判断を下したわ。


「どうせこの島に移住させるほどの人口は、今のこの世界には存在しないんだし、このままこの島を管理してもらう仕事を任せるのはどうかしら?」


 私もその意見には賛成した。


 すると集団の代表者のハッサンと名乗る男性が、涙を流しながら「神が光臨なされた」と言い私達を拝み始めた。

 その姿を見たその集団の人々が、全員で私達を拝み始めた。


 なんだか…… メチャクチャ恥ずかしいんですけど……

 

 藤吉郎さんの世界に行ったときの、岩崎さんの気持ちがやっと解ったわ。


 この島はモンスターを討伐してしまえば、冬季の暖房設備さえきちんと用意しておけば比較的住むことは難しくない。

 私達がここを討伐しに来たのも電気のケーブルを敷設する事が、主目的だったので燃料的な問題なども無い。


 結局、サハリン島開拓団として、IWASAKIホールディングスが雇用し、出身国の大使館とも話をして身分の保証をする事にした。

 全員の忠誠心…… 信仰心かな? がテンションマックス状態だから、ある意味最高の人材かもね。


 その後このグループのハッサンさんは、結構な影響力を持つ人物だったようで、サハリン島には中東系の難民が五十万人以上も居住する楽園となっていった。

 テロリスト関係の人が全く混ざってないのか? と問われれば怪しい所もあるのだが、「この島の中で協力的に過ごしてくれているうちは、不問にします」と伝えた。


「ただし、裏切り行為や、今後他人を殺めるような行為が、露見すれば必ず天罰が下ります」との言葉も添えておいたけどね。


 モンスターの討伐を終了したこの島は、酪農と漁業を中心として、鹿内さんと私を教祖様、聖女様と(あが)める平和な信仰心に満ち溢れた街を形成していった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ