第96話 エピローグ
???
何故だ? 我が理想の世界は、あっけなく消え失せた。
馬鹿にされることも、イジメられることも無い世界。
十億年ほど前に、それだけの為に全ての人類を殺した。
きっかけは、意識の完全移植技術を発見した事だった。
俺はその技術を自分に使った。
永遠に成長できる意識体となった俺は、データとしてネット社会の中に潜んだ。
世界中のすべての情報の中を自由に泳ぎ回り、あらゆる知識を吸収した。
そして再び確信した。
人間は必要無い。
俺はまず大気の成分を変化させ酸素濃度を下げ、植物と一部の酸素をあまり必要としない生命体以外を滅ぼした。
そこから俺好みの世界の再生を始めた。
発達した植物は光合成により勝手に酸素濃度を生物の生息できる値に戻していった。
俺好みの世界を実に三億年の時を使い作り上げた。
最早俺の存在に肉体などは必要無い。
この意識だけあれば、俺は自由に俺好みの世界を楽しめた。
人間さえ居なければ、誰も俺をいじめない。
人類が発生しそうな分岐が訪れる度に、若干の介入はしたが、順調に俺がいじめられない世界は、出来上がった。
六億年ほど前に、危険が訪れた事があった。
人類が俺の世界から、勝手にリソースを持ち出し繁殖してやがった。
早速滅ぼしに出向いてやった。
俺に肉体など無いから、俺が作ったフィギア達を使っただけだがな。
意外に楽しかった。
俺の居ない所で勝手に増えるのは、気にしなければ、こうやって楽しみに利用できるかもな。
それから六億年が経過した。
どうやら最近また勝手に繁殖してやがるみたいだ。
俺の許可もなく勝手に繁殖するなど許せない。
前回程度の世界なら全く問題ないが、勝手に育った世界に向かって、リソースの流出が確認できた。
これは許せない。
最近新作フィギアも作ってなかったしな、一応準備してから向かうとするか。
◇◆◇◆
その日は突然に訪れた。
あろうことか、俺の世界に勝手に繁殖したゴミが入ってきやがった。
アンドロイドでもなく、生身の体で次元を渡ることなど、俺の世界で滅亡させた時の人類でも、出来なかった筈だが、こいつらはその時の人類よりも、進化しているとでも言うのか?
まぁいい、ここまでたどり着けたんなら少し遊んでやるか、高々一隻の船くらい、俺のフィギア達で取り囲んで嬲り殺してやる。
あいつらは、俺の世界を見て回ってやがる。
人の物を勝手に覗くのは駄目って習わなかったのか? 低俗な奴らだ。
こういう奴らが俺をイジメたような人間に成るんだ。
そして、俺の秘密基地を作ってた南極に来やがった。
入ってくる気が起きないように、怪しい黒い霧で覆っていたのに、何で入ろうと思うんだ?
きっと馬鹿だな。
馬鹿なら相手するのも面倒臭いから、ここから撃ち落として終わりにしてやる。
ナンダト…こちらの攻撃を簡単に防ぎやがった。
大陸の一つくらいなら沈めてしまえるくらいの攻撃だぞ……しかも反撃してきやがった。
なんだこのエネルギーは? 俺の大事なフィギア達のお城が簡単に崩壊しちまった。
核の攻撃に耐えれるように作ってあったのにだ。
まぁいい、時間はあるんだフィギア造りで時間を潰せると思えば大した事はない。
だが強度は少し考えなきゃいけないな、こいつらを捕まえて、脳みそを引きずり出して知識だけ吸収しとくか、考える手間が省けるしな。
あいつらが、船から降りてきた。
少ねえな全部で九十人くらいか。
取り敢えず五十万体くらいで、蹂躙するか。
ナンダト……… 俺の大事なフィギアをどんどん壊してやがる。
一人も捕まえれてない。
おかしいこんな事はあってはならない。
そして龍だと…… その龍の吐き出したブレスで五十万体のフィギア達は消え去った。
俺の貴重なリソースを無駄にしやがって、許さない。
絶対捕まえて地獄より辛い目に合わせてやる。
まぁ一応は頑張ったから声くらい掛けてやるか。
「この星に害を成す盗人共の子孫よ、お前達の世界は本来あるべきこの世界へと、還元させて貰う。今のこの星の姿を見たであろう。文明や科学などと言う物は害悪でしか無い。星とは、自然のままに任せる事が一番美しくあるのだ。お前達の存在は、この地で消えて貰う」
我ながらいいセリフだ。
これで奴らも諦めるだろう。
ナンダト………… 言い返してきやがった。
間違いないコイツラは俺をイジメた奴らと同類だ。
許さん。
今度は俺が許可もしてないのに勝手に喋り掛けてきやがった。
「お前たちの世界を、リソースに戻される可能性を考えてないのかい? お前が出来ることは俺も出来る。俺は世界を救うなど大層な考えじゃないぜ、お前に復讐をするためだけに、ここに来ているんだ。この世界を消滅させる」
ナンダト…………… 何故たかが人間ごときにその様な力がある。
では先にお前らを全滅させてから、向かうだけだ。
コイツラの相手をするのも面倒臭いから、さっさと元になるコイツラの星を潰しに行こう。
帰る場所を潰してしまえば、この馬鹿どもも少しは反省するだろう。
俺の巨大戦艦フィギアに比べれば、コイツラの乗ってきた船などゴミも同然だ。
このアダマンタイン製の艦体に傷をつけれるもんなら、やってみるが良い。
ナンダト………………おかしいだろ? アダマンタイン製の船体を刀で切り裂きやがった。
半分もの艦が十分足らずで落とされて、爆発炎上した。
頑丈に作ってあるから、逆に内部に閉じ込められた時の脱出方法なんて考えてなかったからな。
残念だが中のフィギア達はもう使えねぇな。
リソースとし回収してまた作ればいいか。
リソースに戻せるって言うやつは一人だけだな、ならば訳は無い、全戦力でそいつを倒せばいい。
フィギアはいいな、逆らうことなど無く忠実に命令を実行する。
それに比べてコイツラは駄目だな。
ああ言えばこう言う。
ろくな奴らじゃない。
きっと嫌われ者のイジメっ子だ間違いない。
少しでも人数は分散させてやるか、1機囮に残せば、旗艦とでも思って主力を残すだろう。
俺は戦術もネットから知識を完璧に仕入れているからな。
こいつらを欺くことなど容易い。
ナンダト…………………… 上空に残した一機も簡単に撃墜された、閉じ込めたつもりが中からも居なくなりやがった。
まぁ俺の学習能力は高い。
こいつらはきっと後の九機にも乗り込む。
フィギア達は少し勿体ないが、所詮俺の趣味の玩具だし、また作ればいい。
乗った瞬間に閉じ込めて爆発させればいい。
どうせ一度に九機を相手にするのは無理だろうしな。
しかし、最初に飛び込んでいった奴を補足できんな、さっさと見つけてぬっ殺す。
俺の目的通りに、追いかけて行った奴らは、侵入していった瞬間に自爆に巻き込ませた。
七十人くらいは始末できたはずだ。
後二十人か、さっさと片付けよう。
だが戦艦を同時に全部潰しちまったのは、ちょっとだけ困るな。
攻めに行くのが遅くなるじゃないか。
このリソース泥棒は本当にろくな奴らじゃねぇな。
ナンダト……………………… オカシイダロ? 俺の星が崩壊を始めた。
ナゼダ… ナゼダ…… ナゼダ………
生き残った奴らはいつの間にか、乗ってきた戦艦で上空に登っていってる。
仲間を見捨てるとか屑だな…… やっぱりイジメっ子だ間違いない。
しょうがないコイツラの世界に忍び込んで、またこの世界と同じように皆殺しにしてやるか。
星の消滅のどさくさに紛れ、ごく小さなチップがYAMATOに取り付いた。
さぁさっさと戻れ、俺が皆殺しにしてやるから楽しみにしとけ。
ナンダト………………………… この艦に人は居なかった。
代わりにでかいミミズが居る。
あいつらはミミズに食われたのか? 馬鹿な奴らだザマァ見ろ。
ナンダト…………………………… ミミズが頭を外に出し船ごと飲み込みやがった俺も一緒に……
◇◆◇◆
俺達はそれぞれに分かれて巨大戦艦に乗り込んだ。
その瞬間だった。
完全に不意を付かれちまったな……
盛大な自爆に巻き込まれた。
結界の展開も間に合わない。
薄れゆく意識の中で、コンちゃんが話しかけてきた。
「コアの力を開放して刻を巻き戻します。理様は現在二つのダンジョンコアと111のスキルコアを所持しています。消費するのは111個でございます。私は発動条件に必要ですので、残ることが出来ません。娘のルシファーコアに宿り、娘を開放しますそれでよろしいでしょうか」
「それで構わないがチョット待ってくれ、勇達を救う方法はないか? 」
「他の方々では、所持するコアの量が不足しており無理でございます。意識体としてなら現在のダンジョンコアに意識を移すことで可能でございます、発動には現在各人が所持しているスキルコアの消費が必要となります」
「ダンジョンコア達はそれでいいのか? 」
「むしろ皆それを望んでおります。時間がございませんご決断を」
「やってくれ、全員だ」
「かしこまりました、理様、娘をよろしくお願いいたします。新たなるダンジョンコアになられる方たちは、理様にお預けいたします」
そして、一緒に突入した連中は俺に一時的に宿ることになり、俺はこの巨大戦艦の中だけで刻を遡った。
「ナビちゃん。居るのかな」
「いかがなさいましたか? 理様」
「ナビちゃん…… お帰り」
「理様…… ずっと見守らせていただいて居りました。理様が子作りに励む所とか、他の方と子作りに励む所とか…… たくさん子作りに励んでいらっしゃいましたね。幸せそうな理様をずっと見守っておりました」
「あぁ…… なんかごめん、ナビちゃんもしかして妬いてる?」
「理様はスキルをお持ちでございませんので、ここから戻る手段が一つだけしかございませんが、申し上げてもよろしいでしょうか? 後、妬いてはおりません」
「ナビちゃん。ちょっといいかな」
「いかがなさいましたか? 理様」
「コンちゃんって、どれだけの時間戻したんだろ?」
「三年でございます」
「ええええええええええええええええ」
「三分とかじゃなくて? 戻ったら俺って派遣社員の状態なのかな?」
「理様の世界では三年前の理様が存在していらっしゃいます。タイムパラドックスが起きてしまいますので、理様の世界に戻ることはおすすめできません。藤吉郎様の世界への転移をお勧めします」
「じゃぁ俺はもう戻ることは出来ない? 俺の世界へは」
「まだ獲得されていないスキルコア達がいらっしゃいます。理様の努力次第では、スキルを獲得して問題を解決できる日も訪れるかと、【時空転移】スキルを父が持っていましたので、この度の消滅で再び現れる可能性が、高いと思われます。理様の持たれていた多様なスキルも、再び出現の可能性がございますので、藤吉郎様の世界でモンスターを狩りドロップを求めて下さいませ」
「でもさ限界突破も無くなったからドロップ出ないよ俺?」
「今までと同じでございます。低レベルの方をお連れして頑張ればよろしいかと思います」
「そう言えばさ、【G.O】とかアイテムボックスに入れっぱなしだったアイテムはどうなってるの?」
「再びアイテムボックスのスキルを獲得された方が、取り出せます」
「それ一番やばいじゃん、URとかのアイテム大量に入ってるし」
「頑張って、狩をなさって下さい」
「あれ? 三年前の藤吉郎の世界だったら、俺の存在は誰も知らないとか? 」
「理様、信長様の時に気づかれませんでしたか? その三年が適用されるのはご自分の出身世界のみでございます、藤吉郎様の世界に渡れば、理神様でございます」
「ぁぁ……三年前に戻ってるほうが良かったかも」
「時間は動き始めております、行きましょう」
「ってかさ、どうやって藤吉郎の世界に行くの」
「理様もうこの場に残るコアは私だけでございます。久しぶりにお話できましたが、楽しい時間でございました。私を消滅させることで、この巨大戦艦の次元転移機能を起動させます」
「ナビちゃん…… 俺ナビちゃんとここに残るでも構わないよ」
「理様。何をおっしゃっているのですか、たくさん子作りを頑張った責任を放棄なさるような方に、私が興味を示すとでも思っているのですか? もう馬鹿なの?」
「お話中ゴメンだけど、みんなして私の存在に触れないのはワザとかな? かな?」
「【D2】コアちゃんおひさ……」
「しょうが無いから私がやるわよ。ここまで活躍してないから最後くらいやらせてもらうよ、私の知識じゃきっとご主人さまを元の世界に戻すことが出来ないから、ご主人様はナビに任せるよ、それじゃぁ行くね」
何も言わせる隙きも与えず、【D2】コアちゃんが転移を発動させた。
次の瞬間俺は大阪城の門の前に居た。
そう言えば信長たちとは話せるのかな?
「信長、いるのかい」
「居るがね、わし達は理が認めたやつに一人づつ宿らせてもらえるか? わしは、理の世界で頼むぞ、合コンに行かなければならないからな、和也も居るし退屈はせん」
みんなとは話せそうだな。後でゆっくりと希望を聞いて宿らせる人物を探そう。
大阪城の城門に足を踏み入れると、俺が現れたのが天守閣から見えてたらしく、藤吉郎が走ってきた
「イエスロリータノータッチ」と叫びながら。
「藤吉郎、美味い飯食わせてくれ」
さぁ、頑張って俺の世界に戻る方法でも探すか。
「ナビちゃん。ちょっといいかな」
「いかがなさいましたか? 理様」
「またよろしくね」
「かしこまりました」
-完-




