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なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話  作者: TB
第三章 俺の守りたいもの

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第72話 SS 向井静江

一月一日 十二時


 今年も無事に年を越せたわねぇ、世界は色々大変な状況にはなっているけど、悪い事ばかりでも無く、ダンジョンの効果で最近すっかり体が若返った為に、一人で歩いて三社参りに出かけたわ。


 長年連れ添った主人は、もう十年も前に亡くなった。


 私も今年で七十七歳の喜寿を迎える。


 でもダンジョンのお陰で、今は私の事を知らない人が私の姿を見ても、せいぜい三十台前半か二十代後半くらいにしか見えない筈だわ。


 今は白髪交じりだった髪の毛も、真っ黒になったし実年齢を言い当てれる人なんて居ないわよね。

 折角取り戻した黒髪の手入れも怠らない様に頑張ってるわ。


 私は背も低く百四十八センチメートルしかないし、髪型もおかっぱ頭にしてるから、後姿だけならもっと幼く間違われる事もある。


 今の私は毎日薙刀を振り回し、ダンジョンに潜って新人隊員たちを鍛える教官の仕事をしているの。

 若い頃に中学校の体育教諭だったお陰か、私のJOBには教育者と言うのが合って、私が指導すると私よりレベルの低い人のレベル上昇が通常の倍の効率で成長するらしいわ。


 私は、女学校時代から薙刀の道場に通い、師範代まで上り詰めた。

 女学校時代には全国大会で優勝した経験もあるわ。

 そのせいか私にはもう一つ特殊なJOBで槍神というのがあるの。


 このJOBは取得に99ポイントも必要で、その代わり覚える特技はどれも桁違いの威力を見せてくれるわ。


 【DIT】の東雲さんが言うにはJOBポイントが99ポイントのJOBは非常に珍しいらしくて現状で確認されているのは東雲さんの剣神と岩崎さんの大賢者しか伝わってないらしいわね。


 その中でも槍の刺突による衝撃波を飛ばす技、『飛燕』は薙刀の刃の形のままの、ツバメの羽のような衝撃波を飛ばし更に途中で一度だけ任意の方向に曲げる事が出来る業だわ。


 使いこなせるようになると、五十層程度の敵までなら問題なく倒せるように成ったわ。


 最近は、私が槍を教えてる【PU】の隊員さん達から、お食事を誘われる事も増えたの、彼らは私の年齢とか知っているのかしら? きっと本当の年齢を伝えるとお誘いなんて無くなるでしょうけどね?


 三社参りを終えて、一人でおせち料理を作るのも虚しいので、「今日は外で美味しい物でも頂きましょう」と北九州特区の商業区に向かった。


「本当に綺麗な町だわ」


 【D特区】から転移門で北九州特区の総合庁舎に隣接する転移ステーションに着いて、辺りを見回すと完全な都市計画によって作られた町は、何処までも機能的で美しい建物が連なって見える。


 この転移ステーションから北九州特区内の各所に、転移門が設置されており、どの場所へ向かうのにもさほどの時間を必要としない。


 私は、目的地の旧門司区にあるショッピング街へと向かった。

 門司港エリアには幻想的とも言えるような、世界中の有名ホテルが立ち並び、更に、国内外の有名ブランドショップが続く、歩いているだけでワクワク出来るような世界だわ。


 今日は人恋しい気持ちが強かったので、もっと人が集まる場所を求めて、世界最大のショッピングセンターの、レストラン街へ向かう事にした。


 一人で歩いていると後ろから声を掛けられた。


「お姉さん一人なの? 俺たちと遊びに行こうよー」


 ちょっと上品ではない感じの十代後半くらいの、男の子の三人組が声を掛けてきた。


 少しからかって見たい気持ちになって、返事をする。


「あら? 何処に連れて行ってもらえるのかな? お姉さんを満足させるのは僕たちには大変だと思うわよ?」

「俺たちこう見えても冒険者やってるから、懐もリッチだしー。レベルだって52もあるんだぜ、お姉さんを満足させるくらい簡単だぜ」


「あらそうなの、僕ちゃんたち強いんですねー。いつもそんな風に女の人に声掛けて誘ってるのかな?」

「お姉さんさぁ、もしかして俺たちの事嘗めてるの? この辺りで俺たちに逆らって無事に過ごせるやつなんていないぜ、いいからさっさと着いてきて俺たちを満足させろよ」


「あらあら、こんなに綺麗な街なのに、居ついてる人間の思考が、こんなんじゃまだまだ理想には程遠いわね。もう一度聞くわ、逆らった人はいつもどうしてるの?」


「拉致って、徹底的におもちゃにしてるに決まってるじゃん。お姉さんももう決定事項だよ。せいぜい楽しませくれよ」


 三人で一斉に囲んで掴み掛かってきた。


 が、ちょっと力をこめて踏ん張ると、三人程度の力でレベル六百二十五の私をどうにかするなんて出来るわけも無く。


 持っていたお正月の破魔矢で、順番に軽く小突いてあげた。

 三人とも絵に書いたように綺麗に白目を剥いて気絶した。


「あらあら、僕ちゃんたちじゃまだ私を満足させるには経験が足らないようですねぇ」


 この岩崎さんが作り上げた綺麗な町を、活かすのも駄目にするのも、結局はそこに住む人次第なのよね。


 でも私も少し楽しみを見つけちゃいましたよ。


 この街のゴミ退治を私がやって上げましょう。

 もう少し声を掛けられ易いようにファッションの研究でもしようかね、見た目も女子大生くらいのほうが良いのかねぇ。


 イメージを膨らませてダンジョンに篭るとしようかね。


 向井静江(七十七歳)の青春は今再スタートを切った。


 ◇◆◇◆ 


 その日を境に、北九州特区で謎の不良グループ狩り事件が週に一度のペースで起こるようになる。

 治安が良くなるのは良い事だが、一体誰が何の目的でやっているのだろう。

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