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なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話  作者: TB
アフターストーリー『なんとなく家に戻ろうとした俺が世界を間違っちゃって、強くてニューゲームで頑張る話』

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第134話 SS 棗ちゃん

 

 あれ? 知らない天井だ……


 私どうしちゃったのかしら?

 豊橋防衛都市に沢山のモンスターが襲ってきて、防衛団の隊長の清水さんの指揮で立ち向かって、余りのモンスターの数の多さに絶望した。


「あぁ私も今日で人生が終わっちゃうかもな……せめて一度は結婚して、子供も産みたかったな」


 そんな言葉が思わず(こぼ)れた。


 次の瞬間……

 私達を取り囲むように結界が展開された。

 その直後に上空から大量の光の矢が降り注ぐ、その光景を目の当たりにした時に、私の記憶は途切れた。


 思い出せ……あの時見えた後ろ姿は誰?


 でもこのお部屋、とても綺麗だ。

 私の生活していた部屋じゃない。


 でも私が欲しかった家具や服が並んでいる。

 それに……綺麗でかわいい猫ちゃんが二匹私の側に居る。

 なんなんだろう? 私が夢に描いてた生活空間がここにはある。


 その時ベッドの脇にあったスマホが着信を告げた。

 私の記憶にない、新しいスマホだった。

 

 『環ちゃん』と着信表示されてる。


 見覚えの無い名前だけど誰だろう? と思いながら電話に出た。

「えっ……私だよ環です、棗ちゃん仕事の時間になっても来ないし、心配で電話したんですけど?」


 一体この状況はどうなってるんだろう?


「あの……私……おそらく貴女のことを知りません」


 そう答えたけど、環ちゃんと名乗る子も状況が呑み込めてないらしい。


「どうしちゃったんですか? もうとっくに仕事の時間過ぎてますよ?」

 と、普通に話しかけて来た。


「あの? 私は佐千原 棗であってますよね?」


「え? 何言ってるんですか棗ちゃん。当然じゃないですか? もしかして私が誰かも解らないの? 環ですよ、野口 環、昨日の夜一緒に食事して、二十時くらいまで一緒に居たじゃないですか?」


「ごめんなさい、覚えてないの。環ちゃんだっけ、私貴女を知らないわ……この綺麗なお部屋の事も全く覚えがないの……ここは何処なの? モンスターは何処に行ったの?」


「わー大変だ。ちょっとすぐに行きますから、そのまま動かないで下さい」


 そう言って一度電話を切った環ちゃんと名乗る女性は私の部屋を訪ねて来た。

 何らかの指示を受けてたらしくて私を大きな病院に連れて行った。


 あれ? 『北九州総合動物病院』って書かれてる。

 なんで私は動物病院に連れてこられてるの? もしかして私って動物になっちゃったの? と思い自分の手を思わず見た。


 良かった。

 ちゃんと人間の様だ。


 環ちゃんに案内されて、アニマルセラピー棟と書かれている建物に入って行く。


「アニマルセラピスト 明石 純」

 と書かれた部屋に連れてこられた。


 中で綺麗な女性の方が白衣姿で待っていた。


「佐千原 棗さんで間違いないですか? 私の事はお解りになりませんか?」


 そう聞かれた。

 私は面識が無いので丁寧に答えた。


「初めまして、佐千原棗です。私どうしちゃったんでしょう?」


 それから、色々な事を質問された。

 どうやら一年以上前の私の記憶は、この世界? の四年程前の出来事とぴったし重なってる。

 

 でも、ダンジョンが初めてこの世界に現れてから私の記憶では一年だけど、この世界? では四年が経っている。


 そして、ダンジョンが出現して以降の出来事が全く違っちゃってる。



「DIT長官の島と申します。佐千原さんの体験を改めて私に話して頂いて構わないでしょうか?」


 翌日、その人は私の前に現れた。

 国の大臣さんだから当然名前くらいは聞いた事がある。

 でも……こんな若い人の筈は無い。

 だってどう見ても二十代のかっこいい男性が私の前に居る。


「始めまして、でよろしいでしょうか? まずお伺いしたいのは、私の記憶の中にも島さんの存在は【DIT】の長官でした。でもその島長官は40代の男性で、今いらっしゃる20代にしか見えない方じゃ無かったです」


 島長官は自分のスマホから過去の写真を検索して、若返り効果が現れるより前の写真を私に見せた。


「この写真に写っているのが、四年前の私の容姿ですが、佐千原さんの記憶にある私は、この姿で間違いないでしょうか? 」


「あ、はい間違いないです。この方が私の記憶にある島長官の姿です」


「それでは、話を伺わせて頂きます。まずこの世界に現れる直前の記憶をお聞かせ頂きますか? 」


「私は、豊橋防衛都市で、防衛都市の防衛団に所属していました。その日は今までにない規模の大きなスタンピードが豊橋防衛都市を襲ってきて隊長の清水さんの話では、三万体以上のモンスターが襲ってきた様です。私達は千人程の人数しかおらず、最高レベルの清水隊長でもレベルは三十程度で完全に私の人生は、ここで終わったと思いました。


門を開けて防衛団のメンバーが防衛都市の外に出た時に、私達を包み込むように光の壁が展開されて、その直後に空から、無数の光の矢が降り注ぎました。そこまでが私に残っている私の世界での記憶です。次の瞬間に気付けば、見たことのない部屋で、私は一人で寝ていました。


どうしたら良いのか困っていたら、この世界の私の出勤時間を過ぎていたようで、スマホが鳴って、電話に出たらここに居る野口さんからの電話で、状況の説明が出来ないでいる私を心配してくれて、部屋まで尋ねてきてくれて、それから先は明石先生にお世話になりながら、今の状況になってます」


「ありがとうございます。大変貴重な体験をされたようですね。恐らく今私達の世界で一番重要な問題と成っている事に関連している事案だと思われます。佐千原さんは今後【DIT】本部に来て頂く事に成りますが構いませんか?」


「私が今置かれている状況が、解りませんのでこのままこの施設に居ても、お仕事のことも何も知識がありません。島長官のご指示に従わせて頂きたいと思います」


 それからの私は、北九州特区の家に居た二匹の猫ちゃんを連れて、豊橋の【D特区】と呼ばれる街で過ごす事になったの。


 大きなお屋敷の横に建つ綺麗な1LDKのマンションに住まわして貰って、お仕事は【DIT】の事務のお仕事のお手伝いをして過ごす事になった。


 でも……私が居た世界ではダンジョンは只の一つも討伐される事なく世界の終焉を迎えようとしていた事は、誰の目にも明らかだったのに、この世界ではすべてのダンジョンは攻略されていて、それどころかこの【D特区】と呼ばれる場所に、ダンジョンの入口が百五十五個全て並べられている。


 そのうちの何か所かは、転移門と呼ばれる移動用の魔道具での移動になるけれど、それでも全部のダンジョンに移動できるのは、間違いが無い事実として人々がこの土地に訪れる。


 そのダンジョンの中では、世界中の食糧問題なども解決出来る空間になっているそうだ。

 あらゆる野菜や穀物、お肉や魚等もこの空間で育てられているんだって。


 ダンジョン独自のリポップと呼ばれる現象で、どれだけ収穫してもすぐに実る畑や家畜等、信じられない様な現象が起こっている。


 生活圏は世界中が防衛都市の内部での生活になるけど、【IDCO】の加盟国であれば全てが、この【D特区】内に設置された『転移門』によるハブステーションで繋がっていて移動も困らない。


 防衛都市から一歩出れば危険なモンスターが生息する空間で、危険は伴うけど世界中に討伐者と言う職業の人達が居て、モンスターを倒し魔核やモンスター素材と呼ばれる物を集めてくる。


 この世界は凄い。

 モンスターに襲われ滅亡の危機を迎えた事も三年ほど前にはあったらしいけど完全に立ち直っている。


 それどころか防衛都市の内部では以前の世界より快適で安全な生活が保障されている。

 後進国と呼ばれる国ほど与えられた恩恵は大きいそうだ。


 ダンジョン技術により、世界中に安全な水や、安定した電気も供給されていて【DG】カードと呼ばれる身分証によって、防衛都市内で暮らす人々は管理されているので、犯罪に巻き込まれる危険性もかなり低いんだって。


 ◇◆◇◆ 


 この世界にやってきてもう二年が経った。


 相変わらず私は【D特区】内で暮らしている。


 島長官や、私の住んでいるマンションに居る他の方たちと、マンション内に併設されているラウンジやトレーニングジムで時々一緒になるので、話を聞く事も多く、この世界に関しての知識も人並みには身につけた。


 そう言えばとてもびっくりしたことがあった。


 私の居た世界で一緒に防衛隊で活動していたお婆ちゃん。

 向井さんと言う人がこの世界にも存在していたの。


 知り合いの名前を聞いて凄くほっとしたんだけど、会いに行った時に私の前に現れたのは、私よりも若く見えるとてもチャーミングな女性だった。


「向井と申します、佐千原さんでよろしかったでしょうか? こんなお婆ちゃんの知り合いだと言う事で話を伺いましたが、何処でご一緒させて頂いたのかしら?」


 見た目と裏腹にとても落ち着いた話し方で、確かに話し方は私の知っている向井のお婆ちゃんに似てるけど……見た目が……


「あの、向井さんなんですよね? 確か失礼ですけどご年齢は70代半ばを超えていらっしゃったと思うんですが?」


「はい、間違いございませんよ。私は今年で七十九歳になります。れっきとした婆ちゃんですよ」


「えええええぇぇええ、確かにダンジョンで若返れるって話は聞いていましたけど、そこまでの効果があるんですか?」


「そうみたいですね、お陰で若い【PU】の隊員さん達からもよくお食事に誘っていただいて、寂しい生活だけは避けれております」


「でしょうね……その見た目なら絶対私が男の子でも仲良くなりたいと思いますよ」


 それ以降、私も向井さんに連れられてダンジョン内でレベルアップにも出かけて、レベルも三百まで上がった。


 お給料以外にも、ダンジョンで魔石を獲得する事で結構な収入を手にする事も出来るようになった。

 

 それともう一つ……私の住んでるマンションの敷地に可愛い黒猫の赤ちゃんが居たの。

 私はこの子を知っている。


 チビちゃんだ。

 公園で仲良くなってたこの子が、カラスに襲われていて、それを助けた中年のおじさんが居たけど、それきり出会う事は無かったの。


 でもおかしい……あれからこの世界では四年近くたっている筈なのに、子猫のまんまなんておかしいよね?


 この敷地内に住んでいる【DIT】の職員の人達の赤ちゃんが、敷地内の公園で遊んでる時には、必ずそれを見守る様にその黒猫は居るの。


「チビちゃん」私は呼んでみた。

 すると私の側に来て『シュリーン』と身体を私の足に擦り付けて、私を見上げた。


 やっぱり間違いない、四年前のチビちゃんだ。

 何故成長してないのかは解らない。

 カラスに襲われて目も耳も傷ついてた筈だけど綺麗に治ってるから、それは良かったけど。


 すると、カメラマンの様な人がカメラを構えて、公園で遊んでいる子供やそのお母さんを撮影し始めた。


 何の許可も取らずに……


 次の瞬間びっくりする事が起きた。

 チビちゃんの体がいきなり大きく為ったの全長50m程もある。


 私も少し腰が抜けそうになったわ。

 写真を撮っていた人をいきなり踏んで肉球に挟まれたその人は手足をばたばたさせていたわ。


 怖いけどちょっと間抜けなその姿に吹き出しそうになっちゃった。

 公園で子供と遊んでいたお母さん、確か東雲さんだったかな? 

 が近づいてきてカメラのデータを消した後で「勝手に写真を撮られると困るわ。ここは私有地ですし住居不法侵入で拘束させて頂きます」


 あっという間にその人が拘束されて、東雲さんが電話をするとすぐに【DPD】の人が来て、そのカメラマンは連行されていった。


「コワッ……」と思ったけど、その後で何事も無かった様に東雲さんが

「お騒がせしちゃってごめんなさい」と声を掛けて来た。


 改めて見ても綺麗な人だな、思わず見とれてしまった。

 こんなお母さんが居ると、子供も自慢だろうな、旦那さんもきっと自慢のお嫁さんなんだろうな?

 私がもし男性で、こんな奥さんが居たら、絶対浮気なんかしない自信があるな。


 そう言えば東雲さんって結構な有名人だけど、結婚している事実とか旦那さんの事とか聞いた事が無かったな?


 チビちゃんは、いつの間にか元の子猫サイズになって、さっきまでと同じように子供を見守ってる。


「あの、少しお話させてもらってもいいですか?」

「はい、大丈夫ですよラウンジでお茶でも飲みましょうか」


 東雲さんから、旦那さんの事とか聞いちゃった。

 なんかびっくりしたわ、世界最強の男性で世界一のお金持ちなんだって、でもそのせいで誘拐の危険とかもあるから、どうしてもさっきみたいな時には大げさな対応になっちゃうんだって。


 東雲さんは私の事情も知っていて、元々の私は東雲さんの旦那さん「岩崎」さんっていう人とも仲が良かったから、ライバルだと思ってたって言ってたわ。


 ちょっとびっくりしたな。

 私が世界最強で世界一のお金持ちの男性と知り合いとか、それで岩崎さんを落とし切って無い所が残念過ぎるよ、この世界の私……


 でも、更に詳しく話を聞くと、お嫁さんポジションの人は十四人もいるんだって、この公園でよく遊んでる子供達もみんなその人の子供なんだって、突っ込みどころが多すぎて頭パニックになりそうだわ。


 チビちゃんもその人のペットって言うか従魔で、カラスに襲われてたのを助けたのがきっかけだって聞いた。


 !!!話がつながった。


 あの時の中年のおじさんだ。

 きっとあの人と、この世界の私は、それをきっかけで知り合いになったんだと思う。


 ◇◆◇◆ 


 二千二十五年八月十五日


 岩崎さんがこの世界に戻って来た。

 雪ちゃんと言う巫女服で狐耳をはやした可愛い女の子を連れてかっこいい船に乗って戻って来た。


 なんで船が空飛んでるの? と思ってたけど、まぁファンタジーな世界だから何でもありかな? って無理やり納得する事にした。


 チビちゃんはTBっていう名前なんだって、TBも大喜びで走り回ってる。


 岩崎さんは、出迎えに来てくれたお嫁さん達、島長官と斎藤ギルドマスターに囲まれて嬉しそうにしてる。


 でも、私が知ってるおじさんじゃ無かった。

 どう見ても二十代前半くらいのかっこいい男の人だった。


 ダンジョン効果なんだろうけど、やっぱり私凄いチャンス逃しちゃったのかな?


 そう思って少し離れた処から見てると、岩崎さんが何故かこっちにやって来た。


「棗ちゃんありがとう」


 いきなりお礼を言われた……


「えっ、何の事でしょう? 私、初めましてですよね?」


「あ、そうなのか、向こうの世界での俺との接点は全然無かったの?」

「あの、きっとTBちゃんを助けてもらった時の後ろ姿を見ただけだと思います」


「そうなんだね、でもありがとう。お陰で向こうの世界も何とか持ち直したよ」

「えっ向こうの世界って私の居た世界ですか? 岩崎さんがあの世界あの状況から何とかしていただいたんですか?」


「まぁ俺が手伝ったのは間違いないけど。恐らく君と入れ替わっちゃったこっちの世界の棗ちゃんの活躍の方が大きいかもしれないね。今日はパーティやるみたいだから棗ちゃんもおいでよ」


「お邪魔じゃないですか?」

「大歓迎だよ、向こうの世界ネタ解る人が居たほうが俺も助かるしね!」


 その日は遅くまで話が盛り上がった。


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