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なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話  作者: TB
アフターストーリー『なんとなく家に戻ろうとした俺が世界を間違っちゃって、強くてニューゲームで頑張る話』

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第129話 超高齢社会

 この世界ではダンジョン関連のアイテムは、全て【DG】ショップを経由しなければ一般販売を行う事が出来ない。

 素材、ポーション、装備品、魔導具の全てにおいてそのルールは適用される。


 現状では、一般探索者で売り物になるレベルの商品を生産できる人物は極めて少ない。

 一番一般的なのは薬師としてポーションの生産を行う事であるが、かなり頑張ってJOBレベルを上げていても、成功率と素材の値段とのバランスを考えると、商売として成り立つには【ポーション作成Ⅴ】以上が必要となる。


 この特技レベルを達成するためにはJOBレベルで二十五が必要で、生産によってしか上げることの出来ない、生産職のJOBレベルを二十五まで上げるには、十万回程度の生産回数が必要となる。


 その十万回を達成するためには当然、それに応じた素材も必要であり、素材を全て買い取りで試行するのであれば、一億円単位での初期投資が必要となる。


 この効率を上げるためには、よりよい素材を使う事や、複数の素材を指定して生産を行う事で成功率は上がるが、錬金術師のJOBを持つ人物はまだ少ない。


 結果として、素材を集めるために狩りもしなければならず、中々生産職の人間が育たない要因となっている。


 いつまで経ってもSR以上の薬品が市場に出てくる事はなく、極稀にドロップで出る万能薬などは、裏組織の相場で二十億円の値段がつくほどになっていた。


 

  万能薬では、全ての病が根治されるためにステージⅣの癌やエイズさえ治療される。

 命との引き換えの値段としては二十億を安いと感じる層の人物が世界には一定数いると言うことだ。


 エリクサーに至っては、【DIT】の納品価格では十億円だが、闇相場では五十億円が最低ラインと言われている。

 

  ◇◆◇◆ 


 俺は今自宅で棗ちゃんと向井さんと一緒に、新しく立ち上げた会社の事業内容を相談している。

 沢山の人を雇うような大きな事業は予定していないんだけど、向井さんはどうしたいんだろう?


 でも、人が居ないと防衛都市の構築のような事は大事業すぎるかな?


 俺の生産技能でアイテムを作るのが一番確実だけど、俺達って誰も鑑定系の特技を持ってないから、出来上がった物が何なのかとか習得したドロップが何なのかとか、一々【DG】で鑑定してもらわなければならないのが、現状の問題点だよね。


 誰か鑑定系のJOB持った人が仲間に成らないかな? と言う話をしていたら、向井さんが提案してくれた。


「敬老会のメンバーで昔質屋さんしていたお祖父ちゃんが居るから、その人にJOBを習得させたらきっと鑑定系のJOBが出るんじゃないのかねぇ?」と言う意見を出した。


 棗ちゃんが「その人きっと間違いなく鑑定師のJOB出ますよ! 早速スカウトに行きましょう」と言いだしたけど……

「でもねぇそのお祖父ちゃんもう八十五歳で足腰も弱ってて、最近ちょっと痴呆も始まってるんだよねぇ、そんな人でも大丈夫だと思うかい?」


「ダンジョンの可能性を考えれば、パーティに入れた状態で【D2】ダンジョンの一層に連れて行ってレベル五まで上げれば答は出るから、やってみて損は無いと思いますよ?」と俺が意見を出した。


 二人ともとりあえずやってみようという意見には賛成してくれた。


 もし今回の作戦がうまく行き、この人口が大きく減った日本の国で、リタイアした人を復活させて、バリバリ働いてもらえるようになれば、凄い事だよな。


 生産職は戦闘の必要ないから、ひたすら生産すればJOBレベルは上がるんだし、それだったら俺達が素材を提供して、ひたすら生産してもらうお年寄りを雇用するのは、みんなWINWINの関係になるんじゃないかな?


 今の日本だと自分達が生きるのに必死で、老人ホームとか随分減って全く需要を満たせてないらしいし、俺達が作る会社で七十歳以上の人に限定して雇用すれば、日本経済も立ち直るかもしれない。


 十ポイント職の生産職なら、こっちからなって欲しいJOBを伝えておけば、結構な確率で就けると思うし、これは絶対成功する気がする。


「棗ちゃん。【DIT】の厚生労働省出身の女の人いたじゃん、山野さんだっけ? その人に連絡取って法律的な問題とか無いかの確認しておいてね」


「向井さんは、まず質屋のお祖父ちゃんのスカウトで、その後はさ、ちょっと広い場所が必要だと思うから、この地区の小学校が閉鎖されてたよね? そこを借りれるように手続きをしたいから何処に連絡取ったら良いのかとか調べてもらえるかな? お祖父ちゃんの件がOKだったら、その後で横田に狩に行こう!」


「あらあら、岩崎さん随分頼りがいがある感じになってきたわね、凄く素敵だよ。解ったわ、とりあえず私は質屋の権六爺さんに声をかけてくるね」


「私も早速【DIT】に行ってくるわ、オサムさんなんかカッコいいよ!」


 なんか俺もやる気が(みなぎ)ってきた感じがする、俺達はきっと戦闘で最強を目指すことは難しいかもしれないけど、出来ることを着実にやっていけばいいんだ。


 その上で俺のそばにいる人、棗ちゃんや向井さんをみんな幸せにしてみせるぜ。


 勿論、TBとキーちゃんもね!


 TBは今の話の間中俺の足元で、キーちゃんの身体を舐め回してた。

 猫は羨ましいな。

 俺が棗ちゃんの体を人前で舐めてたら、ただの性犯罪者扱いだぜ。


 ◇◆◇◆ 


 棗ちゃんは山野さんと話した中で、老人ホームを経営するわけじゃなくて、従業員として高齢者を雇用するという話であれば、法的な問題は何も無い事の確認ができ、その上で「もしそれが実現したら、今後の日本の復興に大きな弾みが付きます。出来る限りの応援をさせて貰います」って言ってもらえたそうだ。


 そう言う事ならと、早速さっき向井さんにお願いした件の、小学校の話を切り出して見たら、何件かの電話をかけ三十分後には許可が出た。


 そのまま総務の音羽さんに担当が変わって、一緒に豊橋市役所預かりになってた学校関係の鍵を受け取り、インフラ設備の復帰を行い、小学校の施設を俺達の会社の社屋として使う事になった。


 行政が次にこの場所を使う事があるとすれば、建物は全て取り壊して立て直すので、内部の改装は自由にやっていいという事だったので助かる。


 そして、質屋の権六爺さんは今日は体調が良かったみたいで、凄く綺麗に若返った向井さんからのお誘いに、大喜びで鼻の下を伸ばして付いてきたそうだ。


 向井さんは結構厳しい「エロジジイ、相手にされたかったら色んなとこをシャキッとさせなよ!」となんか危険なお店の女王様のような感じで、権六爺さんを従えてる。


 棗ちゃんには、山野さんから紹介してもらった、老人保養施設の訪問を頼み、現状ではまず試しに自分の足で歩くことが出来るレベルの人を五人ほどスカウトして貰う事にした。


 うまく行けばどんどん拡げていきたい。


 ◇◆◇◆ 


 俺と向井さんはTBとキーちゃんを連れて、権六さんをレベル五まで上げるためにD2の一層に来た。

 向井さんが「権六さんが若返るイメージをするんだよ、毎晩奥さんと頑張ってた頃を思い出しながらレベルアップすればすぐだよ」と言われてた。

 向井さん……普段のイメージと違いすぎる……


 レベル五まで上がるのには二時間もかからなかった。


 お待ちかねのJOB取得だ。

 既に権六さんの見た目はかなりシャキッとした感じだ。


 来た時には歩くのもヨロヨロして杖なしでは厳しかったのに、背筋も伸びて歩みも力強いそして何より、髪が生えた……


 おめでとうございます! だよ。


 現在八十五歳の権六さんの見た目年齢は、今この時点で十人に聞けば八人くらいは六十前後かな? って言ってもらえるはずだ。


 再び向井さんにキツめの言葉を掛けられてる「エロジジイ、股間のこんにゃくは少しは役に立てるようになったのかい? さっきも言ったけど、鑑定師を強くイメージして、JOBリストオープンって念じてみな」

 と、言われてた。


【JOBリストオープン】


 拳士

 商人


 ポーター

 鑑定師


 おっとビンゴだ。

 戦闘をするには厳しいが、小学校で受付してもらうには最高のJOB構成じゃないか。

 問題は、鑑定師が四十ポイント職だから、レベル四十まで促成栽培しなけりゃ成らない。

 とりあえず拳士と商人を修得してもらって、今日は時間がある限りレベルを上げてもらおう。


 そして夕方、ダンジョンを出て、転移門で家に戻ると俺達と一緒に戻ったダンディーなオジサマを見て棗ちゃんが「チョットやだ渋いオジサマ、私、佐千原です、宜しくおねがいします」と挨拶してた。


 棗ちゃんってオジサマ趣味なのか? 俺もそのククリだったの? ちょっと悲しいと思った。


 それにしても、昼前にはいつ旅立っても不思議じゃない感じのお祖父ちゃんだったのに、いかにもやり手の鑑定人の雰囲気を出した渋い親父に見事に変身してしまったな。


 ダンジョン恐るべしだぜ。


 向井さんに「亡くなった奥さんも喜ぶよ、その姿をキヨさんに見せてあげな」と言われてた。


 そして棗ちゃんのスカウトも上手く行ったみたいで、明日は朝から老人ホームに七十五歳以上のお祖父ちゃんお婆ちゃん達を迎えに行って、とりあえずレベル五までを目指す。


 生産職が現われた人は正式採用、現われなかった人は、サポート要員としての採用となる。

 それでも今まで働くことなど出来なかったはずの人達だから、身体が動くだけでも幸せなことだよね。

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