第116話 理育成計画
私は、私が憧れていた岩崎さんと、この世界で出会うことができ、安心した。
きっとこの世界は何があろうと彼が守ってくれるはずだ。
でも、それはそれ、これはこれ。
私にはこの世界の岩崎さんを、向こうの世界の岩崎さんに匹敵する英雄へと育て上げ、私だけのナイトになって貰うという、大きな目標が出来たんだから。
向井さんの家に二人で戻って一息つくと、あっちの岩崎さんから念話が入った。
「渡しておきたい物があるから、防衛都市の外に出てきてくれないか?」
と言う事だった。
再び向井さんと二人で、防衛都市の門から外に出て、念話で連絡を入れると、【G.O】が姿を表した。
ステルス機能なのかな? かっこいいなぁと思いながら、向井さんと乗り込む。
透明なビニールシートを、丸めたような物を渡され「これは転移門だ。横田の基地に【D特区】を作った。そこに、この世界で討伐したダンジョンを設置してあるから、レベルアップに活用してくれ」
私は当然転移門のことは知っている。
各国の防衛都市とも繋がっていて、とても価値の高いものだ。
それを私達のために用意してくれるだなんて、素敵過ぎる。
「ありがとうございます。大事に利用させて頂きます」
「ちなみに、この転移門はこの世界では、向こうの世界以上に希少価値が高い。存在を知っている者も殆ど居ないから、所持して居る事は、トップシークレットにしてくれよ? さっき一緒に会った四人以外の前では、喋らないほうが良いと思う」
「あの? 岩崎さんの奥さん達でも駄目なんですか?」
「あぁ、この世界では彼女達は俺の嫁じゃないし、そう言う関係になる予定もないからな。俺は必ず自分の世界に帰るから、そう言えば棗ちゃんはどうするんだ? 向こうの世界に帰りたくないのか?」
「私は、この世界の岩崎さんに賭けています。もう私の人生フルベットですよ。だから帰る予定はないです」
「そうなんだ…… それはそれですごい決断だね。この世界は後二年間は俺が協力するし、このまま滅亡するなんて事態には絶対しないから頑張ってね」
そこで、向井さんが話し掛けてきた。
「さっき、あんたが言ってたじゃないの? 私が向こうの世界では凄い若い見た目だったって?」
「あーその通りだよ、知らない人が見たら綺麗な女子大生にしか見えなかったよ。【PU】の隊員さん達からも毎日デートに誘われてたしさ、あ、向こうの世界だと婆ちゃんは、JOBの教育者の能力を活用して、槍術の訓練教官をしてたからな」
「そうなのかい? この私にも同じ事は出来るのかねぇ」
「あーダンジョンでレベルアップを頑張れば、必ず出来るはずだ。それよりもさ、婆ちゃんちょっとJOB見せて貰うよ」
俺は向井さんのJOBを確認すると、やはりあった。
【槍神】
「婆ちゃん。この世界では俺は二年後以降には居なくなる、これは決定事項だ。その上で頼む。婆ちゃんにはこの世界を守っていけるだけの、素養がある。その槍神のJOBを高めて、この世界のために頑張ってほしい」
「私にそこまでの事が出来るのかは解んないが、まぁあんたの口車に乗せられて上げるわよ。この世界のグータラな、あんたのケツを引っ叩く役目は任せな」
「あぁ、この世界の俺はもうJOBは取ったのか? 大賢者とかでてるのかな?」
棗ちゃんが答えた。
「私、この世界の岩崎さんのJOB書き出しています。ちょっと違うような感じがしますけど確認してもらってもいいですか?」
「あぁいいぞ。俺がJOB取得した時には、ダンジョンコアの助言を受けた後だったからな、元になる知識データが全然違うし、ショボかったかな?」と言いながら、メモを眺めた。
剣士
黒魔道士
シーフ
薬師
鍛冶師
ビーストテイマー
付与術師
黒魔道士
忍者
錬金術師
魔導具師
賢者
魔導鍛冶師
と書き出してあった。
99ポイント職は無かったけど、これだけのJOBが揃っていれば、そこそこの役には立ちそうだ。
どちらかと言うと生産職として大成しそうだな。
「そうだな。悪くないが、火力としては中途半端になるかも知れない。テイマーを取得させて、TBを早めにテイムしたらいいな。そうだ。装備品を渡しておこうかな。婆ちゃんには薙刀、棗ちゃんは弓だ、俺には刀を渡してくれ、忍者JOBはあるから、二振り渡して置く。後は収納バッグを一個渡そうSR品だから100トンまでは収納できる。TB用にアクセサリーも一つ渡しておこう」
向井さんが「この薙刀凄いねぇ、握っただけで力が湧き出してくるのが解るよ」と、気に入ってくれたようだ。
棗ちゃんが「あの? この弓って矢が無いんですけど?」って聞いてきた。
「あーその弓はイメージで魔法の矢を飛ばせる弓だ、属性も威力もイメージ次第だ。使いこなせるように慣れば相当強いぞ」
「一生懸命、練習しますね」
「刀は現時点ではSR品を渡しておくが、実力が伴ってきたら、また良いのを渡してやるさ」
渡すものを渡し「それじゃぁ頑張れよ。俺は基本国外で活動しているが、問題があれば転移門で一瞬で戻れるから、念話で連絡してくれればいい」
そう伝えて二人を【G.O】から降ろし、雪と二人でロサンゼルスへと向かった。
◇◆◇◆
私は向井さんと家に戻って二人で話していた。
「あの岩崎さんが、変われば変わるもんだねぇ」
「でしょー、向こうの世界だとお嫁さんが十四人も居たんですよ。それなのに私もその中に入り込もうと、私の友達と、作戦練ったりしてたんですよね」
「何とまぁ、信じられないような話だね。でもさっきの転移門とかTBちゃん用に渡してくれたエリクサーとかどれだけの価値があるのか想像もつかないわ」
「私の居た世界でも、噂話でしか聞いた事の無いようなアイテムですが、エリクサーは【DG】の買取価格でも十億円だったと思います。転移門は国家間の取引でしか売られなかったと思いますが、二十億くらいの価値だったと思います」
「TBって猫は、それ程に大事な猫だって言う事なのかい? 十億の薬を使おうとする猫って物凄い話だね?」
「それは、岩崎さんの価値観の中ではそれに値するんでしょうね。私では助けてあげたい気持ちはあっても、到底用意が出来ないですから」
「さて、早速こっちの岩崎さんを連れて、新しく出来たって言う【D特区】とやらに行ってみるかねぇ」
と、向井さんが言い、私は岩崎さんの家に迎えに行った。
岩崎さんは今レベル六まで上がっている。
四十肩で痛いと騒いでいた肩も、レベルの上昇とともに治ったみたいだし、どことなくお腹廻りもスッキリして来たように見える。
「岩崎さん。今日からはダンジョンに狩りに行きますよ! 頑張って若返って、私を惚れさせて下さいね」
「マジか? 棗ちゃんが惚れてくれる前提条件があるなら、おじさん頑張っちゃうぞ!」
その言葉と共に狩の準備を整えて、向井さんと三人で転移門を拡げ、横田基地へと移動した。
「何なの? 今の透明シート…… 一瞬で違う場所に来ちゃったよ。スゲェ」と子供のようにはしゃいでる岩崎さんを連れて、新たな【D特区】事務局に島長官を尋ねた。




