第104話 もう一人の俺の世界
俺の眼前で、怪獣大行進の様な光景が広がっている。
何故こうなってるんだ??
防衛都市の防壁に向かって、突撃していくモンスター達、防衛都市からの反撃も行われているが、対応しきれてはない。
防衛都市の門が開き防衛部隊みたいな人達が現れた。
【PU】とは違うもっと一般冒険者を集めたような部隊だ。
一斉に攻撃を始める。
しかしモンスターの方が優勢だ。
戦力の数も違う。
千人程の部隊に対して、モンスターは三万匹以上は居るだろう。
取り敢えず、俺は防衛部隊の周りに結界を張り、モンスターの群れに対峙した。
そして大賢者のみが使える広域殲滅魔法を発動する。
上空から光の槍が豪雨のようにモンスターに降り注ぐ。
三万匹に及ぶモンスターの群れは、その一撃で殆ど倒れ伏せた。
生き残りの敵を殲滅しながら俺は従魔の雪に声を掛けた。
「雪。ちょっと大量だけどアイテム集め頼むな」
「ぇぇ、多すぎでしょ、まぁしょうがないか」
巫女服を身にまとった幼女が、辺りをピョンピョン飛び跳ねるようにして、収納バッグであろう物にドロップ品を納めていく。
五分程で残った敵の殲滅を終えた俺は、防衛部隊に張った結界を解き、「怪我人はいないか?」と訪ねた。
「ポーションで治る範囲の怪我でしたので、問題ありません。それよりも貴方は? その力はどうやって身に付けられたのですか?」と隊長らしき人物が話しかけてきた。
隊長は恐らく【PU】の人間のようだ。
「ちょっと確認したいことがあるので、後で訪ねます」とだけ言い残して、俺はその場を離れた。
◇◆◇◆
【DIT】本部では、この豊橋防衛都市で起こったモンスターのスタンピードと、それに対峙し、たった一人で三万匹ものモンスターを、一瞬にして討伐した人物に対しての報告が行われていた。
【DIT】長官、島颯太が問いかけてくる。
「この謎の人物は、後で訪ねてくると言って姿を消したということで間違いないんだな?」
現場の指揮を取っていた【PU】の隊長が答える。
「私にはそう告げて、一瞬で立ち去られました。その場から消えるように」
傍に控える、秘書官の女性が呟く
「それだけの力を持つ方が味方になってくれるのであれば、モンスターを…… ダンジョンを討伐することも可能なのかも知れないわ」
「その人物からのコンタクトを待つしか無いな、防衛都市の防壁や結界の損傷の状況はどうなっている?」と、今日のスタンピードの事後処理に話題は移っていった。
◇◆◇◆
状況把握をするか。
「ナビちゃん。ちょっといいかな」
「いかがなさいましたか? 理様」
「何故こうなってるのか解るかな?」
「理様が【時空転移】を発動した際に、元の世界に戻るための条件を満たしておらず、一年前に分岐した別の理様の居る世界に来てしまわれました」
「ぇ……俺のせいなの?」
「違います。分岐した世界も、また一つの真実の世界でございます。
違う点は理様の世界から分岐した亜世界ですので、ダンジョンの入口は同じ様に出現しても、D 69までのダンジョンでは、ダンジョンコアが存在しておりませんので、ダンジョンマスターを倒せば、入り口が消滅して終わりでございます」
「ん? なんでD69までなの?」
「理様が所持していらっしゃる、最終決戦の時のお仲間が宿られたコアチップが67個と、D21とD22には、現在マスターが存在していらっしゃる為に、今後新しいコアチップが、宿る事が出来るダンジョンが【D70】以降となります」
「そうだとしたらさ、コアチップを持った状態の俺がダンジョンを討伐したら、俺がダンジョンマスターに成るのかな?」
「その通りでございます。ただし理様が討伐なさったダンジョンでは、D特区に設置してある入り口は消滅してしまいます」
「俺の世界に戻る方法は無いのかな?」
「理様、無いわけでは御座いませんが、どちらの世界に理様が必要かと問われた場合は、こちらの世界かと思われます」
「あちらの世界では、奥方様や颯太様達で守って行けますが、こちらの世界は、終焉を迎えようとしております」
「見てしまった以上は、しょうが無いか。俺の信条は、自分の手の届く範囲に護れるものがあれば、全て守るだからな」
「流石でございます理様。この世界をどうかお守り下さい」
時空転移を失敗した俺は、取り敢えずこの世界のダンジョンを討伐することに決めた。
この世界ではどんな困難が待ち受けているんだろう。




