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winding road

作者: 細川あずみ

何度だって、転んでしまう。それは、見えない道だから。

この先どうなっているのかなんて、誰にも分かりはしない。分からないからこそ進んでみたい。でも、怖い。

何度言われたことか。「お前にはムリだ」と。

何度言い聞かせたことか。「そんなの気にしなきゃいい」と。


どれだけ自分を傷付けてきたか分からない。

他人の言葉を鵜呑みにして、自分の中から湧き出てくる声は無視し続けた。自分を虐待してきた。そうやって生きてゆく方が、なんだかラクのような気さえしていた。

腹の底から温泉のように湧いてくるものは美しく、エネルギーに満ちているハズだ。それらをなぜ、自ら見ないフリをしてしまうのだろうか。

「どうせ叶わない」と決めてしまえば、いくらか気持ちが軽くなる。これは誰しも、多かれ少なかれ経験があるのではないだろうか。


今、歩を進めているこの道でさえ、10歩先にはどうなっているか分からない。一本道に見えても、3歩進めたときに「実は分かれ道がある」と分かることもあるし、「このまま進めばゴールできる」と思っていたら、道が閉ざされていたり、急な坂道で歩くのがツラくなったり、せっかくゴールに着いたのに、目の前に広がる景色は思っていたものとは違っていたり…


「いつまでそうしているつもり?」


心の声がする。


「だって、どうせ…」


これも心の声だ。



どちらが本音だろう。



どちらも、本音だ。

どちらも、僕の声だ。

心の声は、一つじゃないんだ。



「怖いけど…見たい景色があるんだよ…」



僕の心は、最近おしゃべりだ。

こうしたい、いやでもそれは良くない、けどこうしたい、でもムリな気がする…



いい加減、この永遠に終わりのなさそうなおしゃべりをやめさせたい。

って、自分のことなのにまるで他人のような言い方だ。

このおしゃべりが続く限り、僕はこれ以上傷つかないし、おとなしく周りの言うことに従っている方が、誰も何も言ってこない。これほどにラクなことはない。



だが、同時につまらないな、と感じる。

見たい景色を見に行かないのか?この道を、歩んでいかないのか?どれだけ時間がかかろうとも、途中でケガをしようとも、道に迷っても、このぐねぐねした道を歩んでみないのかい?

それは、きっと大変だろう。心に従うのは、いいこと・楽しいことばかりではない。でも、だからこそやってみる。そのやってみた先に何かがあるとしたら、その「何か」を見てみたい。


ぐねぐねした道を歩いていると、方向が分からなくなったり、前に進んでいる気がしない時があったり、むしろ後退している?と思えて仕方ない時もあるだろう。

このまま進むべきか、戻るべきか、悩むこともあるかもしれない。

それぐらい、真剣に生きてみるのも悪くない。


「僕は一体…どこへ向かいたいんだろう…」


目的地を決めない限り、歩を進めることはできない。でも、目的を持たずにこの道を「歩くこと」そのものを楽しむのも、意外と良いのかもしれない。

僕は、僕だけが持っているナビゲーションシステムに従えばいいのだ。止まりたければ止まるし、歩きたければ歩く。地図は、心の中にある。


自分のことを、信じたい。でも、信じられない時もある。それでいい。

僕は、僕が見たい景色を見に行く。

このぐねぐねした道を、一歩ずつ一歩ずつ進んでゆく。

他の誰でもなく、僕は僕のために、この道を。

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