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聖女は祝福を贈る

王城の広間の一つで祝典は始まった。


パーティーというわけではないので、華やかな飾りはないが、王家の人間に有力貴族、国の重鎮に各分野の専門家、外国からも賓客を招いての厳かな祝いの式典だ。


本日の祝典はこの一年で国に最も貢献したとされる三名への褒章の場であった。

名誉ある賞を与え、金と品物も贈られる。その祝の品の一つが聖女からの祝福だ。


受賞者三名が壇上に呼ばれ、その功績を一人ずつ紹介された式の終盤、聖女からささやかな祝福を贈る。


聖女は対象者をほわっと暖かい光で包み、にこりと微笑んでそれっぽくする、というお仕事だ。

サラは最初の一人の前に立ち、両手を胸の前で組んで目を閉じる。


頭の毛がぽわぽわして可愛いけど、冬は寒そうだからもう少し量があるといいのに~


と考えながら光で包みこむ。


「聖なる恵みを」


にこり、とほほ笑んで終了だ。


二人目は分厚いメガネをしており、メガネ重そう~肩こりそう~と思いながら。


3人目は鼻の横にあるできもの痛そう~と思いながら光を当てる。


サラは無意識だが、一人目は毛根が活性化しほんの少し毛量が増え、二人目は視力が回復してメガネいらずになった上に肩こりも解消され、三人目はできものが消え、なおかつお肌がつるピカになっていた。


そんな場面を見ながら、国王は甥であるジュリスに小声で話しかける。


「結婚、どう?」


近しい間柄ではあるが、ちょっとフランク過ぎる問いにジュリスは言葉が詰まる。


どうもこうも、自分は初夜から逃げだし、相手は毎日忙しそうでほとんど顔を合わせていない。


それでも、ジュリスの脳裏には結婚式での彼女の美しい姿、翌日のケガを癒してくれた時の聖女のような(というか聖女の)微笑みが浮かぶ。

あれ以来、毎朝「おはよう」と声をかけようと思っているのに、いつも物陰から覗いているだけになってしまっている。

先ほどの馬車の中でだって、なにか会話をしようと思ったのだが言葉が出る前に王城に着いてしまった。

使用人からは、気軽に声をかけてもらった、当たり前の行動に嬉しそうにお礼を言ってもらった、だの聞いてはいるが、ジュリスは彼女のことを語れるほど知らない。


なので、ついそっけなく


「さぁ?」


と返してしまった。

それを聞いた伯父がとんでもない行動に出るなんて知らずに。





無事に祝典は終わり、サラは聖女の控室でお付きの神官の女性と二人で神殿の馬車の準備が整うのを待っていた。


コンコンコン


扉を叩く音に、女性神官が対応してくれる。

いつもであれば「準備が整ったようなので帰りましょう」とそのまま部屋を出て行く流れなのだが、様子がおかしい。

サラがソファーから立ち上がり二人に近づこうとした途端、


扉口で背の高い男と話をしていた女性神官はふらり、と倒れそうなるところを話をしていた男に抱きとめられた。

男は女性神官の口元にあてていた白い布をサッと隠し、にたり、と気持ちの悪い笑みを浮かべた。

黒い髪に浅黒い肌、本日の賓客の一人であった外国からの使者も同じような容貌をしていた。


「彼女は体調が優れなかったようですね。こちらに寝かせましょう」


断りもなくズカズカと部屋に侵入し、三人掛けソファーへと女性神官を寝かせた。


さっき手に持っていた白い布は睡眠薬かなにかがたっぷり含まれていたでしょうに、白々しい。


サラはキッと男を睨みつける。


「なんの御用かしら?」


「そう警戒しないでください。わが主が聖女様とお話ししたいとおっしゃっていまして、一緒にいらしてくださいますね?」


ついて来ないとその女性神官に乱暴するぞ、みたいな顔して何言ってるのよ。


ソファーに寝かされた神官が規則的に呼吸をしているのを確認し、彼女の生死に問題がなさそうなことに安堵する。

怒りを腹に溜めながらサラは感情のこもらない微笑みを浮かべる。


「ご案内してくださる?」

数ある作品の中から見つけてくださり、読んでくださり、ありがとうございます。

評価、ブックマークもとても嬉しいです。

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