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比較的最近更新した短編のまとめ場所

偽物だと言われ続けてきたけど、どうやらこちらが本物の王女だったようです

作者: リィズ・ブランディシュカ



 偽物だと言われ続けてきた。

 けれど、私の方が本物だった。


 本物の王女と、顔がそっくりだから。

 そう言われてある日、私は王女になった。


 本物の身代わりにと王宮へ連れてこられて、それからずっと本物のふりをしていた。


 王女は体が弱いからと言われ、代わりになれるようにと勉強をかさね、色々な仕事をこなしていった。


 それらの対価は安全で豊かな生活。


 王女の身代わりになる前には得られなかったものだ。

 だから、偽物でも何でも、やってやろうと思った。


 世話役の男は、私が余計な気をおこさないようにと思ってか。


 ことごとく私に向けて「偽物だから」「分をわきまえて行動しろ」と告げてきた。

 私はそんな事わかっているのに。

 一体、何がそんなに心配なのだろう。


 孤児で、一人で貧民街で生きてきた私は、

 今与えられるものだけで幸せなのに。


「本物に成り代わろうだなんて、そんな事はみじんも思っていません」

「いいや、信じられない。お前は偽物として、それを忘れずに生活するのだぞ」


 王女の身代わりとして生きてきた私。


 成人の儀をひっそりと済ませた後、王女と久しぶりに話をした。


「あんたが私の偽物? うまくやっているようだけど、くれぐれも調子にのったり勘違いしないことね」


 けれど王女まで、私が変な事をすると考えているようだった。

 どうしてか、私にはわからない。


 それが分かったのは、数年後。


 生死不明になっていた王と王妃が国に帰って来た時。


 王女の両親は、実は行方不明だった。


 とある国に行くために、船にのりこんだものの、嵐にのまれて転覆したと聞いた。


 しかし、運が良く生き残っていたらしい。


 どこかのーーどこの国とも国交のない未開の土地に流れ着き、記憶喪失のまま暮らしていたようだ。


 しかし、数か月前に記憶が戻って、ここへ戻って来た。


 彼等は、もうすっかり大きくなった自分の娘を見て、抱きしめようと考えた。


 しかし、その娘が偽物だと知って、激怒。


「お前は誰だ! 私達の娘じゃない!」

「どうして本当の娘が身代わりをしているの!?」


 彼等は偽物を牢屋に幽閉し、罪に問い、罰を与えた。


 偽物だった王女は「まさか王と王妃が生きていたなんて」と言い、偽物である私にすがりついてきた。


「お願い助けてよ。今まで誰があんたに豊かな生活をおくらせてあげたと思っているの? 全部わたしのおかげでしょ?」


 私の世話役である男も。


「誰がお前の世話をしてやったと思っている。恩を返す時だろう」


 私が孤児になったのは、もともとは彼等のせいなのに。


 とりつく島がないとみたら、彼等は二人で言い争いをはじめた。


「傀儡にするならもっと頭のいいやつを選べばよかった。こんな見た目だけそっくりなできそこないを本物として利用しなければよかったのに!」

「なによ! 私が悪いって言うの!? そもそも、あんたが後先考えずに本物を貧民街に捨てちゃったのが悪いんでしょ!! 手元においたまま偽物だって言って利用し続ければよかったものを!!」


 それらは聞くに堪えない、悪口の応酬だった。


 謝罪の言葉はなく、どこまでも彼等が口にするのは、命乞いや悪口、不満ばかり。


 私は彼らを許さない事に決めた。


 二人は死刑執行人の手により、広場で罰をうけ、断罪の刃にかかった。





 そして私は、本物の王女として両親に愛されながら、いつも通りの暮らしを続けている。


 そこに問題はなにもない。


 本物である事があきらかになったといっても、やるべき事は偽物扱いされていた時と変わらなかったため、何も困る事はなかったからだ。


 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 悪役二人が死刑になるのは犯した罪からすると妥当ですが、キーワードが「微ざまぁ」だった割には重い罰だなと感じました。
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