成長
物語を書いている。
気の向くままに、物語を書いている。
物語を書く手は、止まらない。
文字をつなげば、物語になる。
文字を繋いでいるうちに、物語になってゆく。
物語は、続いてゆくもの。
文字が続かずとも、物語は続いている。
文字にならない物語も、続いている。
いつか文字になるまで、ただ続いている。
物語になった文字を、確認する。
私の中の物語は、こういう物語だったのかと確認する。
私の中の物語は、こういう物語になったのかと確認する。
私の中から生まれた物語が、新しい物語を生み出す。
つないだ文字が、一つの物語に。
ひとつの物語が、別の物語に。
いくつも枝分かれして、物語は続いてゆく。
物語が、あふれている。
物語が、ただあふれてゆく。
私がつないだ文字が物語になり、誰かの言葉を纏う。
私の物語が、誰かの言葉を纏って大きくなってゆく。
私の物語が、誰かの言葉を纏って大きく膨らむ。
自分の知らなかった物語を、誰かの言葉で知る。
自分の気付かなかった物語を、誰かの言葉で知る。
自分が伝えることのできなかった物語を、誰かの言葉で知る。
自分が文字にすることができなかった物語を、誰かの言葉で知る。
誰かの言葉が、物語を装飾してゆく。
何度も何度も文字を繋いで、何度も何度も物語を世界に解き放つ。
物語が、どんどん変わってゆく。
物語が、ずいぶん、ずいぶん大きくなった。
物語が、ずいぶん、ずいぶん、大きくなってしまった。
小さな私では、もう……抱えきれないかもしれない。
小さな私では、抱えきれないというのであれば……私が、一回りも、二回りも、大きくなればいい。
大きな私になるために、旅に出る。
大きな私になるために、世界に手を伸ばす。
誰かの紡いだ物語に触れ、誰かの声を聞き、誰かの夢を見、誰かの心を知った瞬間。
自分の中を顧みて、自分の願いを知り、自分の喜びに気付き、自分の悲しみに触れた瞬間。
広がる、広がる、広がる、広がる……。
私は大きくなっているだろうか?
私は大きくなれているのだろうか?
自分の物語を抱きしめながら、自分の成長を確認している。
自分の物語を抱きしめながら、自分の大きさを確認している。
成長できると信じて、私は文字を繋げる。
成長していると信じて、私は物語を世界に送り出す。
物語を、書いている。
気の向くままに、物語を書いている。
物語を書く手は、止まらない。
物語を書く手を、止めたくない。
今日も、私は。
物語を……書いて、いる。