2話 転移した世界
ここはどこなんだ?俺は死んだのか?
発砲音と鬨の声が響く中、色々な考えが入り混じり思考をまとめられない。
周囲を見渡すと、高台に小さな洞窟があった。
「ひ、ひとまず落ち着くまで隠れよう。」
洞窟に入ることで、落ち着いて周囲を観察ことができた。所々に煙が立ち込め焼け野原となっており、遠くには街のような建造物が見える。
なにがどうなっているんだ……。
ふと自身を見ると「フォートロイヤル」で遊んでいた時に愛用していた軍服を着ていることに気づいた。
俺はまだ走馬灯の中にいるのか……?
「あなた何者!?」
背後から女性の声が響く。振り返ると、そこには綺麗な女性兵士が銃を構えていた。
「あああ怪しいものではありません!ま、迷子になってしまって!」
んー我ながら厳しい言い訳だ。信じてくれるだろうか。
「怪しいわね!見慣れない軍服を着ているし、牢に捉えなさい!」
やっぱり信じてくれない。慌てていると周囲の兵士が詰め寄ってくる。
女性兵士の赤い瞳が灯った瞬間、俺は意識を失った。
目を開けると薄暗い牢屋に閉じ込められていた。手足は自由に動かせるが、頑丈な鉄格子に囲われている。
「ようやくお目覚め?」
牢屋越しに問いかけてくる先程の女性兵士。戦場ではよく見えなかったが俺と同い年ほどか。赤い軍服、肩にかかるほど長さの金髪、気品のある雰囲気をしている。
「基地の入り口で何をしていたのか、正直に答えなさい!」
あの洞窟は基地だったのか……。ゴキブリホイホイじゃないか……。
「さ、さっきも言ったけど迷子になってしまったんだ!どうか保護してください……。」
我ながら怪しすぎる。喋ろうとするほどテンパってアホなことばかり言ってしまう。
「その軍服は大陸の軍服じゃないわね。一体どこから迷子になったというのかしら!これ以上とぼけるつもりなら……。」
「つもりなら……?」
「死になさい!」
その瞬間、背後から扉の開く音がした。
振り返ると、銀色の角を生やした大きな獣が唾液を垂らしながら近づいてくる。明らかに普通の獣じゃない。やばいやばいやばいやばい。俺なんて丸呑みできるような大きさだ。
「真面目に答えるなら命だけは助けてあげる。早くしないと丸呑みよ?」
女性兵士の赤い瞳から慈悲を感じない。
また俺は死ぬのか?ここでも何もできずあの時の悔しさと痛みを味わうのか?頭が真っ白になる。ゲームなら負けないのに。
脳裏に浮かぶのは「フォートロイヤル」のゲーム画面と愛用の拳銃。
その瞬間、手には銃が握られていた。
ゲームでよく使っていた愛用の拳銃、デスパーテ。こいつで多くのプレイヤーを葬ってきた俺の必滅銃だ。
何が起きたのか、これが異世界というやつなのか。
わけがわからないまま銃を獣に構える。
なぜか負ける気がしない。ゲームのレティクルが脳裏に浮かぶ。
引き金を引くと、血しぶきと共に銃弾が獣を貫いた。
「あなた何者……。」
出会った時と同じ言葉を女性兵士は呟いた。