1話 VICTORY(LOSER)
「優勝したのはレイ選手です!おめでとうございます!」
1位を示すアナウンスと歓声が会場に響き渡る。目の前のゲーム画面には「VICTORY」という文字。
この瞬間、俺は世界最強のeスポーツプレイヤーとなった。
なんの取り柄もない18歳高校生だった俺、速永光は3ヶ月前に友達に誘われ、レイというハンドルネームで大人気eスポーツゲーム「フォートロイヤル」を始めた。
「フォートロイヤル」は1年前にリリースされたFPSゲーム、プレイヤー人口は全世界10億人を超える。
どうやら俺にはeスポーツの才能があったらしく、あれよあれよという間に上位プレイヤーとなっていた。
そして今日、開催された世界大会で、正真正銘の最強プレイヤーとなったわけだ。
つい色々な妄想をしてしまう。
「明日から学校でモテるな……。」
そんな独り言を呟きながら溢れんばかりの歓声を浴びていた。
歓声が鳴り止まぬ会場を後に深夜の帰り道、見覚えのある男が立っていた。
「お前さえいなければ俺が優勝できたんだ。」
その刹那、辺りに銃声が響く。
何が起きた?俺は撃たれたのか?いきなりのことで頭が真っ白になる。色々な疑問が頭を駆け巡る。
痛い、痛い、痛い、痛い、ゲームの世界では最強だったのに、現実ではゲームなんてなんの役にもたなかった。そんな悔しさと痛みに悶ながら視界は暗闇に消え、音が遠ざかっていく……。
……ダ…ダダダダ
なにか音がする。ゲームで聞いた銃声のようだ。これが噂に聞く走馬灯だろうか。ゲームの記憶が蘇る。最後の走馬灯がゲームとは俺らしい。
…ダダダ……ダダダダダ
走馬灯にしてはやけに長いな……遠ざかっていた感覚が鮮明になるのを感じる。辺りには火薬の匂いが立ち込めているようだ。
ダダダダダダダダダダダダダダダ
「うるさい!」
思わず叫びながら重い瞼を開けると、
戦場のど真ん中に、俺はいた。