スキルを持っているからと言えどもまともに使えなければ意味が無い
俺の初めての誕生日から二年と半年の期間、リーラから様々な事を教わった。
俺は周囲を山脈と海に囲まれた島に住んでいる。
外に出たことは無いが、もっとこの世界の事を知っているリーラが言うのだ。間違いない。
リーラが外界と関係を絶つ為に住み始めたらしい。
その頃はこの島に名前は無く、今まで俺以外の人間は来ていない為、今でも名前は無いと予想される。
リーラがまだ人間と交流があった頃の大陸の地形、国の名前、関係、歴史や貨幣価値を教えられた。
役に立ちそうなのは地形と歴史くらいのものだが、魔法があるのだから地形が多少変わるくらいはあっても可笑しくないだろうか。
《【レイ】は、スキル【古代史】、を獲得した》
更に、この島を中心に世界中の動植物の生態系なども教わった。
少なくともこの島においては世界で二番目に詳しい人間だろう。
《【レイ】は、スキル【動物学】を獲得した》
《【レイ】は、スキル【魔物学】を獲得した》
《【レイ】は、スキル【植物学】を獲得した》
《スキル【動物学】【魔物学】【植物学】、を統合して、スキル【生態系学】を獲得した》
当初の予定であった四大属性の習得は一度白紙に戻して、俺は無属性と魔術を学ぶ事になった。
理由は分からないが、人間の中で体系化されたものを学んだ方が良いとか思っているのだろう。
そして漸く、精霊術や死霊術、召喚術等々の色々な魔術を教わり終えたのだ。
前世で現代科学を学んだ俺にとっては、錬金術が一番使い勝手がいいと思える。
何より他の魔術と違って魔術式が単純で、書いて覚えるのが楽だったのが良かった。
《【レイ】は、スキル【錬金術】を獲得した》
《【レイ】は、スキル【精霊術】を獲得した》
《【レイ】は、スキル【死霊術】を獲得した》
《スキル連続獲得表示限界です》
《スキル【錬金術】【精霊術】【死霊術】等を統合して、特殊スキル【魔術王】を獲得した》
「リーラ、【魔術王】ってスキルを獲得したらしいんだが。」
「自称神とやらがレイに与えたのはスキルを獲得するまでの期間の短縮だけじゃなく、敷居を下げる事も含まれていたようだな。」
「なら【魔術王】のスキルは本来もっとスキルのレベルが必要なのか?」
「うむ。本来は『魔術系スキルを最低で五つ獲得している事』、『獲得している魔術系スキルが全てスキルLv5以上である事』の二つだからな。」
現在俺はスキルLv3だ。つまり、二つレベルが足りていないにもかかわらず獲得出来たことになる。
「なあ【魔術王】って何が出来るんだ?」
「獲得した魔術を統合しただけだと思うぞ?強いて言うなら、それまでより魔術の性能が少し上がったり、他には新しく覚える魔術を獲得するまでの期間が短くなったり……これはあまりレイには意味が無さそうだが。」
「ほぼ死にスキルじゃないか……」
それは違うとリーラは若干語気を強めて主張する。
リーラ曰わく、職業に適したスキルを多く持っている場合、就職に有利なのだとか。
人間社会では当たり前と言えば当たり前だが、暫く離れていた俺には、言われて初めて気付くくらいには新鮮なものになっていた。
「……けど、必ずしも人里まで降りるとは限らないんだぞ?」
「死にスキルだな……」