閑話:在りし日の聖夜
驚いたかい?12時間後だぜぃ?
まさか自分でも、ものの二・三時間で書けたことに驚きを隠せないよ。
「12月25日……クリスマスか。」
「クリスマス?」
初めての誕生日で筋肉痛になる少し前の事、泣く子も目を見るクリスマスがやって来た。
「ああ、【レイ】になる前の世界での宗教行事だ。」
「ほうほう。」
「元々は聖人の誕生日だとかだったらしいが、今は赤い服を着たふくよかな老人が煙突から不法侵入し、孝行な子供に施しをして物欲を満たす行事に成り下がっていた。」
割と偏見が深いのである。が、リーラには初めて耳にするのだ、そんなことは知る由もない。
「ほうほう……業が深いな。」
「その老人はサンタクロースと名乗り世界の子供を巡っていたらしい。……他の家には来ていたが、俺の家には来なかったな。」
「ほー、なら孝行息子では無かったのではないか?」
「幼い頃から勉強して医師になるのは孝行息子ではないのか……?親孝行とは一体何なのか。」
その偏見の原因の一端はそんな幼少期にあったのだ。
医師になった理由の一つが残念過ぎてリーラは少し苦笑を浮かべた。
「いやいや、医者は高給取りだろう、十分親孝行だと思うぞ?」
「ならば何故来なかったのだろうか。」
「物欲とな……もしかしてレイは貧相な生活ではなかったか?そして母子家庭か父子家庭ではないのか?」
「そうだが、それが何の関係がある?」
リーラは気付いてしまった、真実の奥の更なる真実に。大いに大袈裟である。
「なるほどな、大体の事情は察せた。これからはサンタクロースとやらの代わりに妾がレイに施しをしよう。」
「俺はもう子供では無いぞ?」
「心の話なぞしておらんわ!レイはまだ子供、大人しく妾の施しを受けるが良い!」
と、大きく出たリーラが小屋を飛び出してから数時間程経った。
今朝方からしんしんと降り始めた雪は強さを増して、今では猛吹雪と成り果てている。
「ぶはははは!寒さで笑い方もおかしくなってしまうな、ばはははは!」
「何をしてきたんだ?」
「無論、ご馳走の材料を狩りに行っていたのだ!これから作るから待っておれ。」
そう言って奥の部屋へ駆け込むと、とても料理しているとは思えないような音が扉越しに聞こえる。
出来たぞ、と飛び出てきたリーラは山のように盛られた皿達を着々とテーブルに料理を並べ始めた。
そのどれもが日頃食べているものよりも数段美味しそうに見え、輝いているような錯覚さえおぼえた。
「ふっふっふ。こんな所では物欲なんぞ満たしてやる事は出来んでな、代わりに胃袋を満たしてやろうと思ったのじゃが。」
「……ああ、ありがとうリーラ。」
「妾に出来るのはこのくらいじゃ、大した事はない。……どうした、泣いておるのか?可愛い奴め。」
俺は赤くなった顔を隠すように背を向けた。リーラからすればまだまだ子供だろうが、それでもこんな顔を見られたくは無かった。
「……それで、これをどうやって食べきるんだ?」
「…………やってしまった。」