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喪失の神医  作者: Crowley
第九章 新人の卒業
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閑話:在りし日の聖夜

驚いたかい?12時間後だぜぃ?


まさか自分でも、ものの二・三時間で書けたことに驚きを隠せないよ。

「12月25日……クリスマスか。」

「クリスマス?」


初めての誕生日で筋肉痛になる少し前の事、泣く子も目を見るクリスマスがやって来た。


「ああ、【レイ】になる前の世界での宗教行事だ。」

「ほうほう。」

「元々は聖人の誕生日だとかだったらしいが、今は赤い服を着たふくよかな老人が煙突から不法侵入し、孝行な子供に施しをして物欲を満たす行事に成り下がっていた。」


割と偏見が深いのである。が、リーラには初めて耳にするのだ、そんなことは知る由もない。


「ほうほう……業が深いな。」

「その老人はサンタクロースと名乗り世界の子供を巡っていたらしい。……他の家には来ていたが、俺の家には来なかったな。」

「ほー、なら孝行息子では無かったのではないか?」

「幼い頃から勉強して医師になるのは孝行息子ではないのか……?親孝行とは一体何なのか。」


その偏見の原因の一端はそんな幼少期にあったのだ。


医師になった理由の一つが残念過ぎてリーラは少し苦笑を浮かべた。


「いやいや、医者は高給取りだろう、十分親孝行だと思うぞ?」

「ならば何故来なかったのだろうか。」

「物欲とな……もしかしてレイは貧相な生活ではなかったか?そして母子家庭か父子家庭ではないのか?」

「そうだが、それが何の関係がある?」


リーラは気付いてしまった、真実の奥の更なる真実に。大いに大袈裟である。


「なるほどな、大体の事情は察せた。これからはサンタクロースとやらの代わりに妾がレイに施しをしよう。」

「俺はもう子供では無いぞ?」

「心の話なぞしておらんわ!レイはまだ子供、大人しく妾の施しを受けるが良い!」




と、大きく出たリーラが小屋を飛び出してから数時間程経った。


今朝方からしんしんと降り始めた雪は強さを増して、今では猛吹雪と成り果てている。


「ぶはははは!寒さで笑い方もおかしくなってしまうな、ばはははは!」

「何をしてきたんだ?」

「無論、ご馳走の材料を狩りに行っていたのだ!これから作るから待っておれ。」


そう言って奥の部屋へ駆け込むと、とても料理しているとは思えないような音が扉越しに聞こえる。


出来たぞ、と飛び出てきたリーラは山のように盛られた皿達を着々とテーブルに料理を並べ始めた。


そのどれもが日頃食べているものよりも数段美味しそうに見え、輝いているような錯覚さえおぼえた。


「ふっふっふ。こんな所では物欲なんぞ満たしてやる事は出来んでな、代わりに胃袋を満たしてやろうと思ったのじゃが。」

「……ああ、ありがとうリーラ。」

「妾に出来るのはこのくらいじゃ、大した事はない。……どうした、泣いておるのか?可愛い奴め。」


俺は赤くなった顔を隠すように背を向けた。リーラからすればまだまだ子供だろうが、それでもこんな顔を見られたくは無かった。


「……それで、これをどうやって食べきるんだ?」

「…………やってしまった。」

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