形はどうあれ信じられる事は嬉しい
少ぉし長ぁめです。
目を開くと、両隣の年下組の子供は目を瞑ったまま眠りこけて肩に頭を預けている。
「レイ、終わったか?」
「……そうだな、俺は【レイ】だ。」
「どうした、何か変だぞ。心でも洗われたか?」
「いや、改めて確認しただけだ。」
声を掛けてきたパロミデスに向いて返事をする。
たかが三十分もしないのだが、体験した事が事だけに体感では何日も会ってないような錯覚に陥る。
「ああ、そうだ、一つ頼みを聞いてくれないか?」
「頼み?」
「ああ、今一番重要な頼みだ。」
「おおう、そりゃまた大きく出たな……わかった、ドンと来い。」
よく考えたらパロミデスに頼みごとをするのは初めてだな、などと他愛もない感想を抱きつつ苦笑して言った。
「隣の二人と俺を院まで運んでいってくれ。」
「は?……っておい!」
そう言い切ると大人しく意識を手放す。体は背凭れにもたれ掛かり、パロミデスの叫び声がくぐもって聞こえる。
それもそうだ、カスパールとやりあっていたのは魂が肉体を擬似的に再現した状態。
その状態で怪我をしたのならそれは魂の傷だ。
その状態で疲労したのならそれは魂の疲労だ。
故に、ここで意識が薄れるのは当然の帰結であった。
「で、説明はするんだよな?」
「ああ、信じられるかどうかは兎も角だが話そう。」
改めて目を覚ますと枕元でタオルを交換してくれてたであろう、年少組の女児がウトウトしていた。
偶々通りかかったリィンに彼女を連れていってもらい、パロミデスを連れてきてもらった。
彼曰く、俺は丸一日眠っていたらしい。我ながら怠惰なことこの上無い。
そして、彼は何故【無属性魔法】が使えなくなっているのか、何故丸一日眠るような疲労を抱えていたのか、その二つの説明を求めた。
「……端的に言うのなら、『呪われた』、だな。」
「のろ、は?どういう事だ?」
「リィンの種族、エフォルフのようなモノだ。彼女らは全ての魔法が使えない。だが、俺は【無属性魔法】だけが使えない。……まあ、俺は属性魔法はそもそも使えないから、殆どエフォルフのようなものだ。」
その説明とも言えない説明を聞いてパロミデスは頭を抱えた。情報を整理しても何言っているのかまだ理解していないからだ。
「おうおうおう、お前が魔法を使えなくなったことは分かった、その説明が出来ない事もな。じゃあその『呪い』は誰が掛けた?」
「カスパール……っても分からないか。確か裁定神アストレアと言っていたな。」
「は、アストレアだぁあ?!……神話じゃあ絶対的に中立を保つ神だぞ?聞き間違いじゃねぇのか?」
あいつに再会して多少昂っていたとはいえ、そんな大事な部分を聞き間違える筈がない。
「それはないな。」
「なら、敵対を決定付けられた訳だ。はぁ、そりゃ面倒臭いな。それじゃ『呪い』も解けやしない。」
「……嘘だと、思わないのか?」
「お前、ちょっとは自分が回りにどう思われてるか考えたらどうだ?少なくとも俺は、お前はそんなつまんねぇ冗談は言わないと思ってる。レイは不器用だからな。」
なろうのタイアップ企画用に書いた短編もよろしくね。