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喪失の神医  作者: Crowley
第九章 新人の卒業
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唐突な決着

『死ぬ訳にはいかない……っすか。ま、どーでもいいっすわ、殺すんで。』


言い放つカスパールが宙に浮かび上がり始め、闇夜のような黒髪は陶磁器のような白髪へ、紫陽花のような碧眼は彼岸花のような緋眼へと変化する。


先程薄れたはずの殺気も段々と強まっていく。同時にカスパールの意志が瞳の奥から薄れていくのが見てとれる。


『【神格顕現(アストレア)】──これにより【カスパール・アストレア】は一時的に発生事象改変権限第二位を獲得。』


スキルのようなものを唱えたかと思うと訳の解らない事を口走り、瞳の奥が死んでいるカスパール?が俺を睨み付ける。


『動くな。』

「【無槍(ノートランス)】……クソッ、魔法は【レイ】の肉体ありきかっ。」


いつも通りに魔法を発動しようとすると、魔力が魔法という形を為すどころか、魔力すらも感じられない。


それに加えて顔や指先以外が身動き一つとることが出来ない。カスパール?の制止に身体が勝手に従ってしまう。


前世でのカスパールは確かに人間だったが、この世界に生まれ戻った事で生物としての格が一段、いや数段上がったのを実感させられる。


『対象の停止を目視にて確認。これより、対象の権限剥奪を実行する。』


そう呟いた最早カスパールとも呼べない()と目が合う。双眸からは完全に生気が失われてただの硝子玉のよう。


「ッ……!ぐ、オ……ァ……」


目が合っていたのも束の間、彼から目を逸らすと同時に感じた事のない喪失感、倦怠感が全身を襲う。


自分自身を構成していた力が剥がされていくような喪失感、前世の死に際(あの時)にもあった意識と肉体の乖離による倦怠感。


意識が、明滅する。




どれ程の時間が経っただろうか。数瞬のようでもあったし数十年のような気もする。


ただ一つ。間違いなく言える事は、俺には殆どのモノが残っていない。


「名前……明日暮(アスボ)飛雄(トビオ)。今は【レイ】。」

剥奪中(デリート)、現在八十パーセント。』


名前はまだある。


「種族……前も今も、ただの人間だ。」

剥奪中(デリート)、現在八十五パーセント。』


共通点はまだある。


「記憶……前世分は、ある。今世分は、恐らくある。」

剥奪中(デリート)、現在九十パーセント。』


アイデンティティはまだある。


「俺のしたい事……なすべき事はまだ、達成されてないッ!」


消えかけた意識を振り絞り、目を見開いてカスパールでもない()を睨み付ける。


剥奪中(デリート)、中断。同位行使権限の衝突により権限剥奪を中断。発生事象改変権限第二位を返還し【神格顕現(アストレア)】を強制終了します。』


奴は何かを呟くと瞳や髪、殺気がカスパール本来の色味に戻り、浮力が失くなって元に戻ったカスパールは地面に墜落した。

明日暮は、耐えきったようだ。

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