表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喪失の神医  作者: Crowley
第九章 新人の卒業
81/167

対立宣言

いつもより少し長めです~。

筆がノるわノるわ。

言った。遂に言った。こいつは俺をこの世界に呼び込んだ因子の一つであると、そう言った。


『まー、前世で先輩から沢山お世話になりましたし?一応これでも裁定神なんでランダムが一番とは言ったんすけど。』

「別に俺は恨んじゃいない。この世界に呼び込まれたことはな。」

『んー、じゃあ何が不満なんすか?』

「分からないのか?」


俺が前世でこいつを絞め殺した理由。それはアーサーに話した戦果の代償だ。


フレンドリーファイアとはいえ、別に戦死した軍人を悼んでる訳じゃない。自分も誰かの命を奪っているのだからそれ自体は何も感じちゃいない。


問題は代償の中に人質が含まれていた事だ。


「ただの人質じゃあない。革命軍に俺のように仕方なく従っている人間を纏める為の人質だった……!」

『あー、先輩は自分と同じ志願兵じゃないんすね。』

「ああ、唯一の肉親を人質に捕られた軍医だよ。無惨にもお前に殺されたがな!」

『ふーん、そうっすか。』

「……は、ぁ?」


驚くでもなく嘲笑うでもなく、ただ我関せずの姿勢を崩さないカスパールに逆に俺が驚いた。


そんな様子の俺を見てカスパールは呆れ顔で溜め息を吐いた。


『一応は国軍が先輩達の家族を助けた形になるんでしょ?なら自分、革命軍としては対して間違ったことしてなくないすか?』

「お前何を」

『考えてみてくださいよ。自分達で匿ってた人質が奪還されたってことは、奪い返さないかぎり人質としての価値がないんすよ?奪い返せない人質は人質じゃない、ただの人的資源じゃないっすか。敵の資源は減らすのみっす。』


前世でのこいつの言葉と、今のこいつの言葉で完全に理解した。


「……やっぱりお前はイカれてる。」

『ふふん、自分の価値観押し付けんのはよくないっすよ。まあ、それはそれとして。』


優しい笑みのまま思い出したように手を叩く。


『今更なんすがね、先輩にはまたもう一度死んでもらって、レイに元に戻ってもらわなきゃならねぇっす。』

「……肉体を持ち主に返せってことか?まあそれも吝かではないが。」

『大体はそうっすけど、大人しく逝ってくれるならありがたいっす。』

「大体?」

『精神が幼いレイなら都合が良いって(ヒト)も……あ。えーっと……自分らにも色々あるんすよ。』


そう言うカスパールはとてもバツの悪そうな顔をしている。


言っちゃいけないことを口走ったようだ。相変わらず口が軽い。


『あーもう、バレちゃったら仕方ないっす。じっとしてて下さいっす、ヘタすると生まれ変わることすら難しく』

「いや、まだ俺は死ねない。」

『何でっすか?!さっきはカッコつけて吝かではない、って』

「お前が口走った一言で事情が変わった。」


レイの精神が幼い事で都合が良い。つまり今此処でレイの肉体から俺がいなくなることがその神の望み。


それは俺の存在がその神の考えを妨げる可能性を孕むと言っているのと同じだ。俺が障害にならないのならそんな事望む必要もない。


俺の目的は、大切な育ての親のリーラを蘇らせる事、レイの産みの親に顔を見せに行く事、目的達成まで肉体を借りたお詫びに元に戻ったレイが簡単には死なない環境に身を置く事。この三つだ。


この三つの目的をレイに託す事は出来なくはない。だが幼いレイに実行出来るのか?否、難しい上に三つ目は前提が成り立たない。


『確かにレイならあの(ヒト)のやりたいことの邪魔にはなんないっすけど』

「邪魔にならないことと、立ちはだかっても殺されない事は同義ではないだろ。」

『それを言われたらどうしようもないっすね。』


否定はしない。つまりその可能性は大いにあると言うこと。


なればこそ、俺は今此処で死ぬわけにはいかないのだ。

明日暮飛雄は生き延びたいようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ